上 下
11 / 29

第11話 襲撃

しおりを挟む
 カルアやリチェラッテの村から十キロほど。
 そこに、そこそこ大きな町があった。
 周りを壁で囲まれた、城塞都市だ。
 とはいっても中心部にある城は十数年前の魔族の攻撃によって破壊され、ぼろぼろになって放置されている。

「竜だ! 竜だぞ⁉」
「魔族の方々が来たのか? 何の用で……」

 ざわめく町の人々。
 竜が引く客車に乗って俺たちはまっすぐに教会へと向かった。
 城と違って、教会は立派な建物だった。
 つい数年前に建て直されたばかりだそうだ。
 ふーん、そんな余裕があるんだな。
 カルアとリチェラッテ、そしてファモーを連れて、俺は司祭への面会を申し入れた。

     ★

 司祭は、きらびやかな衣装に身を包んだ、厳かな雰囲気をまとった四十歳くらいの男だった。

「なるほど。たしかにこれは魔族少将アルティーナ様のサイン。そして、そこにおわすワーウルフのファモー殿とも以前私はお会いしたことがあります。間違いないようですな」
「そうだ。城にいる人間の女性を奪還してきたんだ、そちらで収容してもとの出身地へと返してくれ」

 俺がそう言うと、司祭は目をすがめてこう言った。

「それはできませんな」
「なぜだ?」
「なるほど、確かにあなた様……シノノメ殿といったか、あなたは魔族少将アルティーナ様を降伏させたのでしょう。しかし、それは魔王軍全体を敵に回す行為。いくらあなたが強いと言っても、十万人と称する魔王軍相手には塵も同然。あなたと一緒に沈没しなければならないいわれはありませんぞ」

「つまり?」
「魔王様に使いをだし、あなたとアルティーナ様を討伐していただきます。そうなる前に、シノノメ殿、あなたも魔王様に恭順の意を示し、奪還してきたという女たちを魔族に返すのをおすすめいたしますぞ」

 ふーん。なるほど。
 俺は難しいことはよくわからん。
 だが、つまり、この司祭は魔王軍の手下ってことでいいわけだな。
 ここでこいつをやっつけてもいいんだが、一応俺も人間のはしくれだ、魔族ならともかく人間相手にあんまり大暴れもしたくはない。
 できれば平和にことをすすめたい。

「わかった、今日のところは引き下がるよ。ところで、司祭さん、不穏な話を聞いたんだが……」
「なんですかな?」

「あの女たちの話によると、あんた、女を献上……というか、魔族に『売っていた』らしいじゃないか? その分の金品はどうなってるんだ?」
「何の話ですかな? 我々は魔王軍に女性を献上しているのです。これは税のようなものですので、その見返りの金品など、いただいてはおりません。あまり失礼な言いがかりをつけると、あなたを異端審問にかけねばならなくなりますぞ」

 ははは、笑わせる、これはやってんなあ。

「ほーん。もうひとつ。これはリチェラッテ――この女の子から聞いたんだが、近隣の若い女性を集めて誰が献上されるかを決めるとき、くじ引きしたそうだが、そのくじに細工がしてあったそうじゃないか? 箱からくじを引く方式だったそうだが、リチェラッテとカルアが引くときに、うまいこと箱自体をすりかえてたと聞いたが?」
「まさにそれこそいいがかり。そんな貧乏人の娘の言うことを真に受けてはなりませぬぞ」

「ほーん。まあいいや、今日のところは村に引き下がるわ」

 まったく話にならんな。
 ちょっと善後策を考えるか。
 俺たちは竜車に乗って、来た道をカルアたちの村へと引き返すことにした。
 その前にアルティーナから巻き上げた金貨を使って食料を買いこんだりしたが。
 そして、村への帰り道。
 俺たちは人間の騎士団の襲撃を受けたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

借金背負ったので死ぬ気でダンジョン行ったら人生変わった件 やけくそで潜った最凶の迷宮で瀕死の国民的美少女を救ってみた

羽黒 楓
ファンタジー
旧題:借金背負ったので兄妹で死のうと生還不可能の最難関ダンジョンに二人で潜ったら瀕死の人気美少女配信者を助けちゃったので連れて帰るしかない件 借金一億二千万円! もう駄目だ! 二人で心中しようと配信しながらSSS級ダンジョンに潜った俺たち兄妹。そしたらその下層階で国民的人気配信者の女の子が遭難していた! 助けてあげたらどんどんとスパチャが入ってくるじゃん! ってかもはや社会現象じゃん! 俺のスキルは【マネーインジェクション】! 預金残高を消費してパワーにし、それを自分や他人に注射してパワーアップさせる能力。ほらお前ら、この子を助けたければどんどんスパチャしまくれ! その金でパワーを女の子たちに注入注入! これだけ金あれば借金返せそう、もうこうなりゃ絶対に生還するぞ! 最難関ダンジョンだけど、絶対に生きて脱出するぞ! どんな手を使ってでも!

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

処理中です...