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第一章 流星は帝都を覆う

13 女帝陛下と女騎士の秘密の遊び

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「ふふん、しかたがないわね」


 ヴェルは意地の悪い笑みを浮かべると、赤いドレスのスカートをひらひらさせ、床に四つん這いになっている少女に近づく。

 そして、その背中に勢いをつけてドスンと座った。


「うぐぅ……んっふ……」


 ロリ女帝のうめき声。


「あらあ? どうしたのかしら、椅子が声を出したわ」


 楽しそうにヴェルがそういう。


「んっ……くぅっ……!」


 シルバーのドレスに身を包んだミーシアは、年齢に似合わぬ悩ましげな声を出す。


「あはは、この椅子、柔らかくてあったかくて座り心地がいいわあ」


 ……。

 …………。

 ………………。

 なんかしらんが目の前でSMプレイが始まったぞ!

 なにこれ!

 ミーシアは俺の方に顔を向けて四つん這いになっていて、その表情がよく見える。

 向こうからは俺が見えてないみたいだけど。

 ロリ女帝ミーシア十二歳の未成熟な身体は、ヴェルの体重を支えるのも精一杯らしく、腕がプルプル震えている。

 形の良い眉をよせて、苦しげな表情の女帝様。


「あらあらあ? この椅子、ちょっとぐらつくかしらねえ」


 ヴェルがミーシアの背中に、体重をかけてお尻をドスドスと打ち付ける。

 そのたびにミーシアの顔が苦悶で歪む。


「ねーミーシアちゃん」

「……はい……くぅ……」

「そういえばあんたの肩書って、なんだっけ」

「……ターセル帝国、第十八代皇帝……」

「ふうん。で、今は?」

「騎士様の……椅子です……ふはあ」


 へ、変態だあああ!!

 うわあ!

 なにこれ、俺逃げ出したいぃ!

 でも逃げ場がない!

 そしてなぜかこいつらから視線をはずせない!

 見ちゃ駄目だと思うのに見てしまう男の性!

 女帝陛下が奴隷役で、家臣の騎士が女王様役!

 逆だよ逆!

 お前らその年で変な遊び覚えやがって!


「そうよねえ、あんたいつも威張っちゃってるけど、ほんとはあたしの椅子なのよねえ」

「はい、そうでしゅ……」


 薄暗い貴族の部屋、絨毯に四つん這いになる少女皇帝、その背中を椅子にして座る女騎士。

 ミーシアの額には汗が浮き、そこに黒髪がぺたぺたと貼り付いている。

 女帝の耳からぶらさがっている国家の秘宝、マゼグロンクリスタルが揺れ、その影が絨毯に映り込む。

 部屋の隅で、なにかがもぞもぞと動いた。

 やばい、あれはキッサだ!

 酔っ払って爆睡していたキッサが寝返りをうったのだ。

 キッサの身体がごろんと転がり、かぶさっていた毛布がとれる。

 その唇からはよだれが垂れている。

 馬鹿お前、寝相がわりーなー!

 幸い、ヴェルとミーシアからは家具やテーブルの陰になって見えてないみたいだけど。

 俺の角度からはよく見える。

 バスローブの襟からたわわに実った胸の果実を今にもポロリと出しちゃいそうな姉巨乳奴隷。

 そしてその傍らには、うつ伏せになって寝ている妹幼女奴隷。

 着ている俺のYシャツがめくれて背中丸出しになっている。

 随分と幸せそうな顔をして寝ているけどな、お前ら……今目を覚ましたら、多分言い逃れ不可能で死刑だぞ……。

 あと多分俺も。

 頼むから起きるなよ……。

 手を合わせて祈る俺。

 そうとはつゆ知らず、ふたりきりの『秘密の遊び』を続ける皇帝と騎士。


「あー今日は寒いわねえ。指が冷えちゃってるわあ。温めてくれないかしらねえ」


 ヴェルがロリ女帝の口元に手を伸ばし、指で顎を撫でる。


「はふう……はむっ」


 その指を口の中に含むロリ女帝。

 なんなんだよ、もうばかぁ!

 なにを始めちゃってるんだよほんとにぃ!

 俺、裸でこんなところでしゃがんで変態プレイの覗きをやってるんですけど。

 えーと、どうしたらいいの?


「あむあむ……じゅるじゅるっ」

「あはは、悪く無いわよお。ねえ皇帝陛下ぁ、あんた家臣の指舐めて楽しいの?」

「じゅる……はい……おいひい……ですぅ……」

「じゃあもっと舌を使いなさい」

「はい……んれろれろお……」

「あっはっは、皇帝陛下の口の中、あったかくていい気持ちよ。あーあ、こーんな変態女の家臣だなんて、あたしは自分がいやになるわよ」

「す……すひません……じゅばっ」

「こーんなところ、他の家臣に見られたらどう思われるかしらねえ?」


 見られてるっ!

 見られてるよっ!

 お前ら、俺に見られてるからっ!!

 頼むから早くその遊び終わらせてこの部屋から出て行ってくれえ!

 っていうか、どこまでいったらこれ、終わるんだろう?

 まさか……。

 まさかっ!?

 いやいやいやいや、まさかねっ!

 っていうかなんか俺も変な気分になっちゃうよ!


「まったく情けないお子様ねえ」


 ヴェルがそう言って、ミーシアのほっぺたをバチンッ! と叩いた。


「や、やめてぇ……」


 やーめーてー!

 俺のセリフだよっ。

 まじでやめろよまじで。

 頼むからこれ以上はもうやめて。

 俺なんか女の子とキスしたこともないのに、こんなの見せつけられたらおかしくなるぞ。


「なーにが山のてっぺんでひとりきりよ。あんたはあたしの妹分なんだから。デキの悪い妹分のことなんか、ちゃーんとあたしがそばについて見ていてあげてるんだから、生意気なコト言っちゃだめよ」

「ご、ごめんなさい……」

「よし、お仕置きしちゃおうかしら」


 ヴェルは一度立ち上がると、自分のドレスのスカートをひざ上までまくりあげ、ロリ女帝の背中に跨るように座り直した。

 ミーシアは俺に顔を向けて四つん這い。

 その上のヴェルは俺に背中を向けてミーシアに跨っている体勢だ。

 ヴェルの赤いドレスは背中が開いていて、ランプの灯りが作り出す肩甲骨の影がいやに艶かしい。

 やがて部屋の中にバシッバシッという音が響きはじめた。

 ……どうやら、ヴェルがミーシアのお尻を叩いているっぽい。


「んぐっ、んふっ」


 目尻に涙をためて痛みに耐える十二歳の少女。

 俺もなんか泣きたくなってきた。

 なんだろうこのモヤモヤとした気持ち。

 

「お仕置きよこれは。山のてっぺんにいるってなら、その隣に私もいるっての。あんたが転ばないようにあたしがあんたの足を支えてあげてるんだから。そんなことにも気づかないなんて、ほんとお馬鹿な皇帝様ね。お仕置きよ、ほらっほらっ」


 バシン、バシン。


「痛っ痛っ」


 悲鳴を上げながらも、どうやらロリ女帝は腰をくねらせているっぽい。

 ……こういうの、エロ動画では見たことあるけど、リアルで見るとすんげえ迫力があるな……。

 誰にも見られてないと思って、さらにエスカレートする変態主従二人。


「スカート越しだとあんまり痛くなさそうねえ。ほーら」

「だめ、まくらないでぇ」

「それだけじゃないわよ、ほらっ!」

「やっ、やめっ、下着は……おろしちゃ……だめ……」

「駄目じゃないわよ、ほらあ! ……いつも思うけど、あんたのお尻って小さくてきゅっと締まってて肌もすべすべでかわいいわねえ……」

「騎士様ぁ……」

「じゃあひっぱたいてあげようかしら。白いお尻を赤くしてあげるわ。明日玉座に座るとき、痛いでしょうねえ。明日あたしが帰っちゃったあと、お尻の痛みでちゃんとあたしの顔を思い浮かべるのよ」

「はいぃ、騎士様ぁ、おねがいしますぅ」

「ぶぇっくっしょん!」


 最後のは俺のくしゃみだ。

 だって、寒いんだもん。

 二人の動きがピタリと止まった。

 ミーシアは顔をあげ、ヴェルは振り向いて、バスルームの入り口でしゃがみこんでいる俺の顔を同時に見た。

 二人の顔は透き通るように白い肌。

 すんげえ無表情。

 俺を見つめる黒い瞳と碧い瞳。

 部屋の中が静寂に包まれる。


「ふにゃあ……シュシュゥ……お姉ちゃんが守ってあげるよお」


 キッサの寝言がやけに大きく響いた。

 うーん。

 ま、俺が皇帝陛下の立場だったら有無を言わさず処刑するよな。

 俺はどう言えばなるべく苦しまない方法で処刑してくれるか考えながら、


「あ、ども」


 と二人にぺこっと頭を下げた。  



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