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第84話 一枚45円
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一面の湖だった地下十二階を攻略し、俺たちはついに地下十三階に到達した。
ラスボスのダイヤモンドドラゴンがいるといわれているのが地下十五階。
このSSS級ダンジョンの最深部まで、あと少しだ。
俺たち四人+石化した一人+スライム。
このへんてこなパーティは最難関ダンジョンを慎重に進んでいく。
「っていうか、私知らないんだけど、ここまで潜って帰ってこられたパーティっていままでいないんでしょ? どうしてラスボスがダイヤモンドドラゴンで地下十五階にいるってわかっているの?」
今更ながらみっしーが尋ねてくる。
「はいはーい! お答えしまっす!」
紗哩が得意げに答える。
「あのね、過去にみっしーと同じでテレポーターの罠にひっかかちゃったパーティがいるの! それも、配信中に! その人たちは地下十五階に飛ばされて、そこでダイヤモンドドラゴンとあったってわけ」
「え、じゃあそのパーティの人たちは?」
「ダイヤモンドドラゴンと闘って、負けちゃった……。過去のほかのSSS級ダンジョンの例からいっても、地下十五階が最深部でSSS級モンスターのダイヤモンドドラゴンがラスボスっていうのはほぼ確定的だって話だよ」
みっしーが顔を青ざめさせる。
「じゃあ、私、地下八階にテレポートさせられたのは、まだ運がよかった方なんだ……。もし地下十五階に飛ばされてたら、今頃……」
そうだったなら、確実にみっしーは命を落としていただろう。
稲妻の杖でモンスターに応戦できたのも、俺たちがそこにたどりつけたのも、まだ地下八階だったからだ。
「運がよかったな、地下十五階だったら、俺たちも助けられなかったろうしな」
「ほんとに、運がよかったよ……。地下八階でもほんとは死んでたんだもん、基樹さんと紗哩ちゃんがいなかったら、いまごろこの世にいなかったかも……」
みっしーがそう言うと、ローラが口を挟んだ。
「もしくは、アンデッドのゾンビとなって今もさまよっていたかも……」
「もう! ローラちゃんも怖いこと言わないで!」
みっしーがほっぺたをふくらます。
うーん、こんな風呂にも入れないすっぴんなのに、ほっぺたのお肌もつやつやだなあ。
びっくりするほどの美人だよな。
なんかこう、常人にはない、魅力的なオーラをまとっている。
「私もさー、自分では美人だと思ってたけど、みっしーには負けるねー」
ローラも素直にそう言った。
「ところでさー、考えたんだけど、モトキ、あなた今カードを持っていないから口座番号わからないっていってたよね? ってことは自宅に置いてあるんでしょ? みっしーの事務所の社長さんに頼んで、鍵屋さんに鍵を開けてもらって自宅のカードか通帳確保すればいいじゃん。そしたらけっこう解決だよ?」
それを聞いて、俺と紗哩は顔を見合わせる。
「……もう、ないんだ」
「は? なにが?」
「自宅ってやつが。俺と紗哩、安いアパートに住んでいたんだけど、ほら、もう二人で心中して死ぬことにしたからさ。綺麗にしておこうと思って全部解約して、家具とかも全部ごみ処理してさ」
「え、じゃあ通帳とかカードは?」
「どうせこのダンジョン内で死ぬんだからもういらないだろ? だから、捨てた。燃えるゴミの日に、黄色い新潟市指定ゴミ袋に入れて捨てたよ」
紗哩もうなずいて、
「新潟市のごみ袋は一枚45円するから、もったいないからぎゅうぎゅう詰めにして捨てたよ! ね、お兄ちゃん!」
ローラはがくっと肩を落として、
「……馬鹿……カードの一枚も残してたら、今頃、億円単位でマネーインジェクションできたかもしれないのに……結局yootubeのスパチャ頼みなのね……。身分証明書とか、全部捨てたの?」
「いや、ダンジョン潜るのに必要だから探索者証明カードだけ持ってる。あとはなにも持ってない」
「探索者証明カードは一応公的証明書になるから、このダンジョンから生還できたらもろもろ再発行できるね……」
そんな会話をしながら俺たちは地下十三階を行く。
途中、何度かモンスターに遭遇したけど、今の俺の余力は一億円近くある。
マネーインジェクションの力でなんなく撃退していった。
「えへへ、地下十三階、ぬるいね」
紗哩が余裕の表情で言う。
うーん、それはなにかのフラグのセリフだぞ……。
「まあ、でも、このままいけば、この階層もクリアできそうだよね」
みっしーもそういう。
「油断は禁物だよー。気を抜くとね、まじで一瞬で死ぬから。っていうか、今回の私たちがそうだった」
ローラが厳しく注意する。
そうだった、アニエスさんやローラのパーティは、俺たちを救出しにきたところでSSS級モンスターのヴァンパイアロード、アンジェラ・ナルディに襲われてほぼ全滅しかけたのだった。
気を緩めるとほんとに命がもっていかれるぞ。
気をつけんとな。
「えー大丈夫だよー、お兄ちゃん、最強だもん」
「でも基樹さんって良識はないよね」
突然みっしーがそんなことを言った。
ラスボスのダイヤモンドドラゴンがいるといわれているのが地下十五階。
このSSS級ダンジョンの最深部まで、あと少しだ。
俺たち四人+石化した一人+スライム。
このへんてこなパーティは最難関ダンジョンを慎重に進んでいく。
「っていうか、私知らないんだけど、ここまで潜って帰ってこられたパーティっていままでいないんでしょ? どうしてラスボスがダイヤモンドドラゴンで地下十五階にいるってわかっているの?」
今更ながらみっしーが尋ねてくる。
「はいはーい! お答えしまっす!」
紗哩が得意げに答える。
「あのね、過去にみっしーと同じでテレポーターの罠にひっかかちゃったパーティがいるの! それも、配信中に! その人たちは地下十五階に飛ばされて、そこでダイヤモンドドラゴンとあったってわけ」
「え、じゃあそのパーティの人たちは?」
「ダイヤモンドドラゴンと闘って、負けちゃった……。過去のほかのSSS級ダンジョンの例からいっても、地下十五階が最深部でSSS級モンスターのダイヤモンドドラゴンがラスボスっていうのはほぼ確定的だって話だよ」
みっしーが顔を青ざめさせる。
「じゃあ、私、地下八階にテレポートさせられたのは、まだ運がよかった方なんだ……。もし地下十五階に飛ばされてたら、今頃……」
そうだったなら、確実にみっしーは命を落としていただろう。
稲妻の杖でモンスターに応戦できたのも、俺たちがそこにたどりつけたのも、まだ地下八階だったからだ。
「運がよかったな、地下十五階だったら、俺たちも助けられなかったろうしな」
「ほんとに、運がよかったよ……。地下八階でもほんとは死んでたんだもん、基樹さんと紗哩ちゃんがいなかったら、いまごろこの世にいなかったかも……」
みっしーがそう言うと、ローラが口を挟んだ。
「もしくは、アンデッドのゾンビとなって今もさまよっていたかも……」
「もう! ローラちゃんも怖いこと言わないで!」
みっしーがほっぺたをふくらます。
うーん、こんな風呂にも入れないすっぴんなのに、ほっぺたのお肌もつやつやだなあ。
びっくりするほどの美人だよな。
なんかこう、常人にはない、魅力的なオーラをまとっている。
「私もさー、自分では美人だと思ってたけど、みっしーには負けるねー」
ローラも素直にそう言った。
「ところでさー、考えたんだけど、モトキ、あなた今カードを持っていないから口座番号わからないっていってたよね? ってことは自宅に置いてあるんでしょ? みっしーの事務所の社長さんに頼んで、鍵屋さんに鍵を開けてもらって自宅のカードか通帳確保すればいいじゃん。そしたらけっこう解決だよ?」
それを聞いて、俺と紗哩は顔を見合わせる。
「……もう、ないんだ」
「は? なにが?」
「自宅ってやつが。俺と紗哩、安いアパートに住んでいたんだけど、ほら、もう二人で心中して死ぬことにしたからさ。綺麗にしておこうと思って全部解約して、家具とかも全部ごみ処理してさ」
「え、じゃあ通帳とかカードは?」
「どうせこのダンジョン内で死ぬんだからもういらないだろ? だから、捨てた。燃えるゴミの日に、黄色い新潟市指定ゴミ袋に入れて捨てたよ」
紗哩もうなずいて、
「新潟市のごみ袋は一枚45円するから、もったいないからぎゅうぎゅう詰めにして捨てたよ! ね、お兄ちゃん!」
ローラはがくっと肩を落として、
「……馬鹿……カードの一枚も残してたら、今頃、億円単位でマネーインジェクションできたかもしれないのに……結局yootubeのスパチャ頼みなのね……。身分証明書とか、全部捨てたの?」
「いや、ダンジョン潜るのに必要だから探索者証明カードだけ持ってる。あとはなにも持ってない」
「探索者証明カードは一応公的証明書になるから、このダンジョンから生還できたらもろもろ再発行できるね……」
そんな会話をしながら俺たちは地下十三階を行く。
途中、何度かモンスターに遭遇したけど、今の俺の余力は一億円近くある。
マネーインジェクションの力でなんなく撃退していった。
「えへへ、地下十三階、ぬるいね」
紗哩が余裕の表情で言う。
うーん、それはなにかのフラグのセリフだぞ……。
「まあ、でも、このままいけば、この階層もクリアできそうだよね」
みっしーもそういう。
「油断は禁物だよー。気を抜くとね、まじで一瞬で死ぬから。っていうか、今回の私たちがそうだった」
ローラが厳しく注意する。
そうだった、アニエスさんやローラのパーティは、俺たちを救出しにきたところでSSS級モンスターのヴァンパイアロード、アンジェラ・ナルディに襲われてほぼ全滅しかけたのだった。
気を緩めるとほんとに命がもっていかれるぞ。
気をつけんとな。
「えー大丈夫だよー、お兄ちゃん、最強だもん」
「でも基樹さんって良識はないよね」
突然みっしーがそんなことを言った。
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