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第75話 やめられない
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オレンジ色のスライムが、ダンジョン内を進む俺たちについてくる。
基本的にモンスターってのは人間と敵対するもんなんだが……。
「たぶんさー、ちょうどギューキに食べられそうになったところを私たちに助けられた形になったじゃん? だから、私たちを味方だと認識したのかもねー。スライムにしては知能が高すぎる気はするけれど」
石化したアニエスさんをおんぶしているローラがそういった。
今までは、アニエスさんは石化すると風呂敷に包んでローラがかついでいた。
でも、それだと石化した体勢によってはかなり運びづらい。
ということで、可能なときはアニエスさんが石化に戻る直前にローラさんにおんぶしてもらってそのままの恰好で石化してもらうことにしたのだ。
これならローラの負担も少なくて済む。
なにしろ、怪力のスキル持ちとはいえ、人間ひとり持ち運ぶのって大変だからな。
おんぶが一番運びやすいらしい。
ローラが背負ってたリュックはみっしーに担がせている。
ただし、重量のあるものは俺と紗哩のリュックに分けていて、かなり軽くはしてある。
みっしーはただの十六歳の配信業の女の子、特に身体を鍛えているわけでも慣れているわけでもないので、あんまり重いリュックを担がせるとふらつくので危ない。
「みっしー、足ほっそいもんなー」
俺がそういうと、
「えへへへへー、そうお?」
ちょっと嬉しそうなみっしー。
戦闘能力が必要な探索者としては別に誉め言葉じゃないんだけど、みっしーは本業が配信業だからな。
「ふーん、どーせあたしは太いですよー」
紗哩がふてくされていう。
「まあまあ、探索者としては筋力があったほうがいいから。紗哩ちゃんもスタイルかっこいいよー」
そういうローラだってスタイルすごくいいからな。
石化したアニエスさんをおんぶして進むローラを見る。
褐色の美人が石像を背中におぶっているのだ。
この非現実感といったら!
人間ってすごいよな、異常な状況に対しても、だんだん適応していけるもんなんだな。
ちなみに俺がアニエスさんを担ごうかと思って試してみたけど、小柄とはいっても40キロくらいはあるから、怪力のスキルとか持っていない俺にはきつかった。
マネーインジェクションのために俺はなるべくフリーハンドでいた方がいいし、やっぱりローラがかつぐのが一番よさそうだ。
俺たちはマッピングしながら慎重に進む。
オレンジ色のスライムはもう俺たちパーティの一員のつもりなのか、迷宮の曲がり角があると自ら先行していく。ぴょこんぴょこんと跳ねて角の向こうまで行き、安全を確認すると俺たちがくるのをそこで待つなんてことまでし始めた。
「……ちょっとかわいくなってきた」
みっしーが言う。
「ね、わかる。モンスターがこんな馴れるってあるの?」
紗哩がローラに聞くと、ローラは、
「たまーに聞いたことあるけど……。でもそれって獣型のモンスターがほとんどだしなあ。そもそもさー、スライムにこれだけの知性があるのが驚きだよ。スライムで人間にこんなに馴れたの、初めて見たかもしれない」
やっぱ珍しいことなのか。
コメントを見てみると、少し気になる書き込みがある。
〈これ、ダンジョン特別法とかモンスター対策法とかに違反しない?〉
〈モンスターへの餌付けは違法じゃなかったっけ?〉
〈そういやそうだな、どうだっけか?〉
ん?
これ、違法だったのか?
「まじで? だったらやめるけど……。誰か詳しい人いない?」
〈調べてみたけど、ギリセーフっぽい。ダンジョン内でモンスターを飼いならすこと自体は合法。そういうスキルの持ち主もいるからね。ただし、それをダンジョン外に持ち出して飼ったり餌付けしたりすると違法。懲役五年以下もしくは百万円以下の罰金またはその両方〉
〈つまりダンジョン内で飼いならすだけならOKってことか〉
なるほど。
ま、合法なら面白いしこのままこのスライムと一緒に探索してもいいな。
なんか癒される気もするし。
俺の足にまとわりついてきたので、軽くなでてやる。
ポワポワとしたやわらかい感触で、ほのかに温かい。
おお、なんかこれいつまでも触っていたいな。
プニプニでポワポワでふにゅふにゅで、もう触るのをやめられない。
スライムも俺に撫でられて喜んでいるのか、俺が撫でるごとにぷるぷると身体を震わせる。
〈そういやスライムっておっぱいと同じ柔らかさって聞いたことがある〉
〈あ、そういうことか〉
俺はそのコメントを目にしてぱっとスライムから手を離した。
紗哩とみっしーがジトーッとした目で俺を見ている。
「ち、違うっ! そういうことじゃない、そんな軽蔑した目で俺を見るな……っ!」
くそっ、なんてことコメントしやがる、もうスライムにさわれなくなっちゃったじゃないかよ!
……え、うそ、おっぱいってこんなにいい感触なの?
あとでこっそりもう一回ちゃんと触ってみよう。
基本的にモンスターってのは人間と敵対するもんなんだが……。
「たぶんさー、ちょうどギューキに食べられそうになったところを私たちに助けられた形になったじゃん? だから、私たちを味方だと認識したのかもねー。スライムにしては知能が高すぎる気はするけれど」
石化したアニエスさんをおんぶしているローラがそういった。
今までは、アニエスさんは石化すると風呂敷に包んでローラがかついでいた。
でも、それだと石化した体勢によってはかなり運びづらい。
ということで、可能なときはアニエスさんが石化に戻る直前にローラさんにおんぶしてもらってそのままの恰好で石化してもらうことにしたのだ。
これならローラの負担も少なくて済む。
なにしろ、怪力のスキル持ちとはいえ、人間ひとり持ち運ぶのって大変だからな。
おんぶが一番運びやすいらしい。
ローラが背負ってたリュックはみっしーに担がせている。
ただし、重量のあるものは俺と紗哩のリュックに分けていて、かなり軽くはしてある。
みっしーはただの十六歳の配信業の女の子、特に身体を鍛えているわけでも慣れているわけでもないので、あんまり重いリュックを担がせるとふらつくので危ない。
「みっしー、足ほっそいもんなー」
俺がそういうと、
「えへへへへー、そうお?」
ちょっと嬉しそうなみっしー。
戦闘能力が必要な探索者としては別に誉め言葉じゃないんだけど、みっしーは本業が配信業だからな。
「ふーん、どーせあたしは太いですよー」
紗哩がふてくされていう。
「まあまあ、探索者としては筋力があったほうがいいから。紗哩ちゃんもスタイルかっこいいよー」
そういうローラだってスタイルすごくいいからな。
石化したアニエスさんをおんぶして進むローラを見る。
褐色の美人が石像を背中におぶっているのだ。
この非現実感といったら!
人間ってすごいよな、異常な状況に対しても、だんだん適応していけるもんなんだな。
ちなみに俺がアニエスさんを担ごうかと思って試してみたけど、小柄とはいっても40キロくらいはあるから、怪力のスキルとか持っていない俺にはきつかった。
マネーインジェクションのために俺はなるべくフリーハンドでいた方がいいし、やっぱりローラがかつぐのが一番よさそうだ。
俺たちはマッピングしながら慎重に進む。
オレンジ色のスライムはもう俺たちパーティの一員のつもりなのか、迷宮の曲がり角があると自ら先行していく。ぴょこんぴょこんと跳ねて角の向こうまで行き、安全を確認すると俺たちがくるのをそこで待つなんてことまでし始めた。
「……ちょっとかわいくなってきた」
みっしーが言う。
「ね、わかる。モンスターがこんな馴れるってあるの?」
紗哩がローラに聞くと、ローラは、
「たまーに聞いたことあるけど……。でもそれって獣型のモンスターがほとんどだしなあ。そもそもさー、スライムにこれだけの知性があるのが驚きだよ。スライムで人間にこんなに馴れたの、初めて見たかもしれない」
やっぱ珍しいことなのか。
コメントを見てみると、少し気になる書き込みがある。
〈これ、ダンジョン特別法とかモンスター対策法とかに違反しない?〉
〈モンスターへの餌付けは違法じゃなかったっけ?〉
〈そういやそうだな、どうだっけか?〉
ん?
これ、違法だったのか?
「まじで? だったらやめるけど……。誰か詳しい人いない?」
〈調べてみたけど、ギリセーフっぽい。ダンジョン内でモンスターを飼いならすこと自体は合法。そういうスキルの持ち主もいるからね。ただし、それをダンジョン外に持ち出して飼ったり餌付けしたりすると違法。懲役五年以下もしくは百万円以下の罰金またはその両方〉
〈つまりダンジョン内で飼いならすだけならOKってことか〉
なるほど。
ま、合法なら面白いしこのままこのスライムと一緒に探索してもいいな。
なんか癒される気もするし。
俺の足にまとわりついてきたので、軽くなでてやる。
ポワポワとしたやわらかい感触で、ほのかに温かい。
おお、なんかこれいつまでも触っていたいな。
プニプニでポワポワでふにゅふにゅで、もう触るのをやめられない。
スライムも俺に撫でられて喜んでいるのか、俺が撫でるごとにぷるぷると身体を震わせる。
〈そういやスライムっておっぱいと同じ柔らかさって聞いたことがある〉
〈あ、そういうことか〉
俺はそのコメントを目にしてぱっとスライムから手を離した。
紗哩とみっしーがジトーッとした目で俺を見ている。
「ち、違うっ! そういうことじゃない、そんな軽蔑した目で俺を見るな……っ!」
くそっ、なんてことコメントしやがる、もうスライムにさわれなくなっちゃったじゃないかよ!
……え、うそ、おっぱいってこんなにいい感触なの?
あとでこっそりもう一回ちゃんと触ってみよう。
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