34 / 73
連載
第71話 NGワード
しおりを挟む
さて、サキュバスはやっつけた。
夢の中で、俺が魔法をぶっぱして殺したんだけど、これって俺自身にはダメージがこないみたいでよかったわ。
夢世界全部を爆破したみたいなもんだから、それに応じて俺の精神がどうかなるとかありえなくもなかったよなー。
で、確認してみたら、きちんとGaagle Adsenseの残高が減っていた。
意識の中だけでもマネーインジェクションできるのがわかったのは、大きな発見ではあった。
それはそれとして。
ちょっとこれは言っておこうかな。
「えー、お知らせがあります。これ以降、このチャンネルにおいて、次の言葉をNGワードに入れます。発言してもコメント欄に表示されなくなります」
〈ん、なんだ突然〉
〈まあNGワードなんてふつうどこのチャンネルでも設定してあるし……〉
〈まさか「耳」だったりしないよね? それはやめて!〉
〈草〉
〈耳は許してやれw〉
〈耳をNGワードにするなんて! なんてひどいことを!〉
「えー、耳ではありません。いいですか、一度しかいいませんからよくお聞きください。
『淫魔』『夢魔』『インキュバス』『サキュバス』『催淫』『淫夢』……これらの言葉になります。いいですか、みなさん。さっきのは、なかったことにしてください。俺とローラだけならいいけど、ほかの子たちのあんな乱れた姿は忘れてやってください」
「私はいいんかーい!」
あの化粧水のビンで人の妹の純潔を奪おうとしたくせに。
「みっしーも紗哩もまだ若いし、子供だ。アニエスさんも……まあほら、見た目こどもだし……」
「私、年齢、24。結婚できる」
あ、アニエスさん、起きてたのか。
まあ24歳には見えん幼児体型だし……。
「と、とにかくだな、アーカイブからも消した。みんなも、わすれてやってくれ。あれは、モンスターの精神攻撃が悪いんだから……」
〈まあそこまでいうなら忘れてあげる〉
〈みっしーなんてまだ十六歳だもんな〉
〈ちゃんとこういうふうにできるのはお兄ちゃん信用できる人だな〉
〈耳はセーフだった!〉
と、そこにみっしーが暗い顔をしておれのところへやってきた。
「基樹さん……」
やはり、日本トップクラスの配信者として、自分のあんな醜態をさらしてしまったのがこたえているのだろうか。
しかもまだ十六歳なのだ、恥ずかしくて死にそうとか思っているかも。
元気づけてやりたいけど、俺、女の子にうまいことなんて言えないしな。
俺はつとめて笑顔を作って、
「みっしー、大丈夫だ、あれはあの淫魔が全部悪いんだから。俺がやっつけたからもう大丈夫だ。なんか食ったか? これから探索続けるんだ、腹ごしらえは大事だからな。そうだ、コカトリスの肉がまだいっぱいあるぞ」
「そうじゃないの! 基樹さん、もう、あんなこと……やめてよ!?」
あんなことってどんなことだ?
なんかサキュバス戦はいろいろあったから思い当たることはけっこうあるけど……。
「夢の中でマネーインジェクションなんて! しかも本当にお金減ってるとか! もう絶対にやっちゃダメ! SSSSS級モンスター、国税庁に隙を見せちゃ駄目だよ!」
あ、そっち?
……まあ確かになあ。
カメラに写っていないところでマネーインジェクションすると、領収書があるわけでもなし、経費になる証拠もないからそのまま税金で持っていかれるな……。
900万円かあ……半分近く持って行かれるかも? でかいなあ……。
それだけあれば、紗哩と二人、三年くらいはつつましく暮らせるよなー。
まあ、納税は国民の義務だから払うもんは払うけどさー。
「法令で認められた範囲の節税は国民の権利だから! ちゃんと国税庁の通達とかも勉強しないと……」
みっしー、納税関係でどんな修羅場を見てきたって言うんだ……。
「わかった、もうあんなことはしない……」
「もー! ほんとにだよ! でも、ありがとね、基樹さんのおかげでまた助けられたよ。こんなおっかないダンジョンの中だけど、いつもすごく怖くなるんだけど、基樹さんがいるもんなあ、と思うとね。うん、基樹さんがいるから安心だ、がんばるぞっ! って気持ちになれるの。いつも、ありがとね。帰ったら一億二千万円返さなきゃなんでしょ? ……もし、もし、大変だったら私も手伝ったげるから! ね!」
そういってみっしーは紗哩のところへ走り寄っていった。
そして二人で笑顔でおしゃべりしながら石化したアニエスさんの身体を拭いたり服装を整えたりしている。
……あ、これあっち向いておこうっと。アニエスさんにあとでおこられるかもしれんし。
「たのむから顎のキャラと目が合わないように風呂敷巻いてくれよ」
そう声をかけて、俺はコカトリスの肉をかじった。
うまい。
冷めてるのに、かじると肉汁がじゅわっと出てきてジューシーでやわらかい。
これ、いくらでも食えるなー。
ニワトリ部分の方が好みだな。
蛇部分のところはちょっと歯ごたえが強い。
おっとクラーケンの肉もまだあったな、これもくっておこう。
とにかく食わないと体力の消耗が激しすぎて体が動かなくなっちまうぞ。
夢の中で、俺が魔法をぶっぱして殺したんだけど、これって俺自身にはダメージがこないみたいでよかったわ。
夢世界全部を爆破したみたいなもんだから、それに応じて俺の精神がどうかなるとかありえなくもなかったよなー。
で、確認してみたら、きちんとGaagle Adsenseの残高が減っていた。
意識の中だけでもマネーインジェクションできるのがわかったのは、大きな発見ではあった。
それはそれとして。
ちょっとこれは言っておこうかな。
「えー、お知らせがあります。これ以降、このチャンネルにおいて、次の言葉をNGワードに入れます。発言してもコメント欄に表示されなくなります」
〈ん、なんだ突然〉
〈まあNGワードなんてふつうどこのチャンネルでも設定してあるし……〉
〈まさか「耳」だったりしないよね? それはやめて!〉
〈草〉
〈耳は許してやれw〉
〈耳をNGワードにするなんて! なんてひどいことを!〉
「えー、耳ではありません。いいですか、一度しかいいませんからよくお聞きください。
『淫魔』『夢魔』『インキュバス』『サキュバス』『催淫』『淫夢』……これらの言葉になります。いいですか、みなさん。さっきのは、なかったことにしてください。俺とローラだけならいいけど、ほかの子たちのあんな乱れた姿は忘れてやってください」
「私はいいんかーい!」
あの化粧水のビンで人の妹の純潔を奪おうとしたくせに。
「みっしーも紗哩もまだ若いし、子供だ。アニエスさんも……まあほら、見た目こどもだし……」
「私、年齢、24。結婚できる」
あ、アニエスさん、起きてたのか。
まあ24歳には見えん幼児体型だし……。
「と、とにかくだな、アーカイブからも消した。みんなも、わすれてやってくれ。あれは、モンスターの精神攻撃が悪いんだから……」
〈まあそこまでいうなら忘れてあげる〉
〈みっしーなんてまだ十六歳だもんな〉
〈ちゃんとこういうふうにできるのはお兄ちゃん信用できる人だな〉
〈耳はセーフだった!〉
と、そこにみっしーが暗い顔をしておれのところへやってきた。
「基樹さん……」
やはり、日本トップクラスの配信者として、自分のあんな醜態をさらしてしまったのがこたえているのだろうか。
しかもまだ十六歳なのだ、恥ずかしくて死にそうとか思っているかも。
元気づけてやりたいけど、俺、女の子にうまいことなんて言えないしな。
俺はつとめて笑顔を作って、
「みっしー、大丈夫だ、あれはあの淫魔が全部悪いんだから。俺がやっつけたからもう大丈夫だ。なんか食ったか? これから探索続けるんだ、腹ごしらえは大事だからな。そうだ、コカトリスの肉がまだいっぱいあるぞ」
「そうじゃないの! 基樹さん、もう、あんなこと……やめてよ!?」
あんなことってどんなことだ?
なんかサキュバス戦はいろいろあったから思い当たることはけっこうあるけど……。
「夢の中でマネーインジェクションなんて! しかも本当にお金減ってるとか! もう絶対にやっちゃダメ! SSSSS級モンスター、国税庁に隙を見せちゃ駄目だよ!」
あ、そっち?
……まあ確かになあ。
カメラに写っていないところでマネーインジェクションすると、領収書があるわけでもなし、経費になる証拠もないからそのまま税金で持っていかれるな……。
900万円かあ……半分近く持って行かれるかも? でかいなあ……。
それだけあれば、紗哩と二人、三年くらいはつつましく暮らせるよなー。
まあ、納税は国民の義務だから払うもんは払うけどさー。
「法令で認められた範囲の節税は国民の権利だから! ちゃんと国税庁の通達とかも勉強しないと……」
みっしー、納税関係でどんな修羅場を見てきたって言うんだ……。
「わかった、もうあんなことはしない……」
「もー! ほんとにだよ! でも、ありがとね、基樹さんのおかげでまた助けられたよ。こんなおっかないダンジョンの中だけど、いつもすごく怖くなるんだけど、基樹さんがいるもんなあ、と思うとね。うん、基樹さんがいるから安心だ、がんばるぞっ! って気持ちになれるの。いつも、ありがとね。帰ったら一億二千万円返さなきゃなんでしょ? ……もし、もし、大変だったら私も手伝ったげるから! ね!」
そういってみっしーは紗哩のところへ走り寄っていった。
そして二人で笑顔でおしゃべりしながら石化したアニエスさんの身体を拭いたり服装を整えたりしている。
……あ、これあっち向いておこうっと。アニエスさんにあとでおこられるかもしれんし。
「たのむから顎のキャラと目が合わないように風呂敷巻いてくれよ」
そう声をかけて、俺はコカトリスの肉をかじった。
うまい。
冷めてるのに、かじると肉汁がじゅわっと出てきてジューシーでやわらかい。
これ、いくらでも食えるなー。
ニワトリ部分の方が好みだな。
蛇部分のところはちょっと歯ごたえが強い。
おっとクラーケンの肉もまだあったな、これもくっておこう。
とにかく食わないと体力の消耗が激しすぎて体が動かなくなっちまうぞ。
70
お気に入りに追加
974
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

回復力が低いからと追放された回復術師、規格外の回復能力を持っていた。
名無し
ファンタジー
回復術師ピッケルは、20歳の誕生日、パーティーリーダーの部屋に呼び出されると追放を言い渡された。みぐるみを剥がされ、泣く泣く部屋をあとにするピッケル。しかし、この時点では仲間はもちろん本人さえも知らなかった。ピッケルの回復術師としての能力は、想像を遥かに超えるものだと。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。