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第59話 グチャバキ!
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暗闇の魔法。
それは物理的に光を遮断してまわりを暗くする、という魔法じゃない。
生物の網膜に働きかけて光を感知する能力を失わせる、というものらしい。
まあ俺は魔法学をきちんと学んだわけじゃないし、よく知らないけどさ。
俺のマネーインジェクションによって大幅にパワーアップした紗哩の魔法によって、周囲にいる紗哩が敵と認識したモンスター、つまり親バジリスクとベビーバジリスクたちは完全に視力を失ったようだった。
俺は目を開ける。
目が合うだけで相手を石化してしまう能力を持つ、蛇の王、バジリスク。
視力さえ失わせてしまえば、もはや永遠に視線が合うことがない。
見ると、紗哩の身体、腕とお尻に二匹のベビーバジリスクがかみついていた。
全長十五センチほどのチビとはいえ、SSS級モンスターには違いない。
俺は慎重にそいつらの顎のあたりをつかむと、ぐいっと力を入れてひねりつぶした。
「痛かったー!! お兄ちゃんの注射より痛かった……噛みつき方に優しさが足りない……」
目の端に涙を浮かべてそういう紗哩。
モンスターが優しさで噛みついてくれるわけないっつーの。
「……SSS級モンスターの攻撃と俺の注射を同じレベルで比較するんじゃない」
いつも俺は優しい気持ちで注射してるんだぞ?
まあ、気持ちだけなんだけど。
さて、一番恐ろしい石化の能力もなく、視力すら失ったモンスターなんて、俺の敵じゃあない。
俺はベビーバジリスクたちを刀で斬りつぶしていく。
「……めちゃすごくない?」
コカトリスを蹴り殺したローラさんが俺たちの方へとやってきた。
「うわ……アニエスちゃん、まじで石になってる……ヤバいんですけど。ってか、も
うこの蛇、つぶしちゃってもいい?」
俺が答える前にローラさんはベビーバジリスクたちを踏みつぶしていく。
「さて、じゃああの親玉もやっつけちゃいますか」
そしてローラさんは地面を蹴ってバジリスクに襲い掛かった。
目の見えないモンスターなんて、SS級の武闘家ならあっというまに倒せるだろう。
ローラさんは残像が見えるほどの素早い動きでバジリスクに蹴りかかっていく。
すげえ、これがアニエスさんのパーティのアタッカーの動きか。
人間が残像が見えるほどの高速で動くってありえるもんなんだなあ。
ま、バジリスクはローラさんが倒してくれるだろう、あとは石化したアニエスさんを治療する方法があるかだけど……。
見ると、アニエスさん、石化したのは身体だけで、身に着けているものはそのままの状態だ。
つまり、鋭い顎のイケメンキャラ風呂敷とか、身に着けたふんどしとかマントとかは別に石化していない。
俺も今まで石化攻撃をしかけてくるモンスターとは戦った経験がないし、正直知識もないなあ。
ローラさんに聞いてみようか、ってか俺も加勢するかと思って顔を上げると、俺の目に飛び込んできたのは、視力を失ったはずのバジリスクがその尻尾で正確にローラさんを打ち付けて吹っ飛ばす光景だった。
「はあ?」
思わず声が出る。
女性にしてはしっかりとした体つきのローラさんの身体は、嘘のようにくるくる回転して壁に激突する。
ゴギャッ!
骨が砕ける音がした。
俺はすぐさま刀を振るって駆け出した。
ふらつきながらも、なんとか体勢を立て直すローラさん、だけど、バジリスクはまるで目が見えているかのような動きでローラさんの腕に噛みついた。
そしてそのまま、首をぶんぶんと振ってローラさんの身体を地面に打ち付ける。
そのたびに、グチャバキ! とローラさんの骨と肉と内臓が破壊される音がした。
「てめえ!」
俺はバジリスクの首に斬りかかる、だがバジリスクはローラさんの身体を口から離し、くいっと首をひねってそれをよけた。
なんでよけられるんだよ!?
俺はさらに下段から上に向けて二の太刀で斬りかかるが、バジリスクは数メートルも軽く飛びさがってそれをよける。
いったいなんなんだ、目が見えないはずだろ!?
実際、その眼はうつろで視線は宙にむけている。
だけど今はそれよりも。
「ローラさん!」
俺は褐色の肌の武闘家にかけよった。
褐色?
いやもう全身血まみれで真っ赤だ。
それに、やべえ、全身の骨が砕けてねえか、これ?
折れた骨が皮膚を突き破っている部分まである。
呼吸するたびにブシュッ! ブシュッ! と血を吐いている。
――これは、やばいやつだ。
死のイメージに襲われて背すじが寒くなった。
いますぐ治療が必要だ!
「インジェクターオン! セット、100万円!」
そんな俺たちに向けて、バジリスクが口を大きく開けた。
「グハァァァァ……」
ポイズン・ブレスが、くる。
それは物理的に光を遮断してまわりを暗くする、という魔法じゃない。
生物の網膜に働きかけて光を感知する能力を失わせる、というものらしい。
まあ俺は魔法学をきちんと学んだわけじゃないし、よく知らないけどさ。
俺のマネーインジェクションによって大幅にパワーアップした紗哩の魔法によって、周囲にいる紗哩が敵と認識したモンスター、つまり親バジリスクとベビーバジリスクたちは完全に視力を失ったようだった。
俺は目を開ける。
目が合うだけで相手を石化してしまう能力を持つ、蛇の王、バジリスク。
視力さえ失わせてしまえば、もはや永遠に視線が合うことがない。
見ると、紗哩の身体、腕とお尻に二匹のベビーバジリスクがかみついていた。
全長十五センチほどのチビとはいえ、SSS級モンスターには違いない。
俺は慎重にそいつらの顎のあたりをつかむと、ぐいっと力を入れてひねりつぶした。
「痛かったー!! お兄ちゃんの注射より痛かった……噛みつき方に優しさが足りない……」
目の端に涙を浮かべてそういう紗哩。
モンスターが優しさで噛みついてくれるわけないっつーの。
「……SSS級モンスターの攻撃と俺の注射を同じレベルで比較するんじゃない」
いつも俺は優しい気持ちで注射してるんだぞ?
まあ、気持ちだけなんだけど。
さて、一番恐ろしい石化の能力もなく、視力すら失ったモンスターなんて、俺の敵じゃあない。
俺はベビーバジリスクたちを刀で斬りつぶしていく。
「……めちゃすごくない?」
コカトリスを蹴り殺したローラさんが俺たちの方へとやってきた。
「うわ……アニエスちゃん、まじで石になってる……ヤバいんですけど。ってか、も
うこの蛇、つぶしちゃってもいい?」
俺が答える前にローラさんはベビーバジリスクたちを踏みつぶしていく。
「さて、じゃああの親玉もやっつけちゃいますか」
そしてローラさんは地面を蹴ってバジリスクに襲い掛かった。
目の見えないモンスターなんて、SS級の武闘家ならあっというまに倒せるだろう。
ローラさんは残像が見えるほどの素早い動きでバジリスクに蹴りかかっていく。
すげえ、これがアニエスさんのパーティのアタッカーの動きか。
人間が残像が見えるほどの高速で動くってありえるもんなんだなあ。
ま、バジリスクはローラさんが倒してくれるだろう、あとは石化したアニエスさんを治療する方法があるかだけど……。
見ると、アニエスさん、石化したのは身体だけで、身に着けているものはそのままの状態だ。
つまり、鋭い顎のイケメンキャラ風呂敷とか、身に着けたふんどしとかマントとかは別に石化していない。
俺も今まで石化攻撃をしかけてくるモンスターとは戦った経験がないし、正直知識もないなあ。
ローラさんに聞いてみようか、ってか俺も加勢するかと思って顔を上げると、俺の目に飛び込んできたのは、視力を失ったはずのバジリスクがその尻尾で正確にローラさんを打ち付けて吹っ飛ばす光景だった。
「はあ?」
思わず声が出る。
女性にしてはしっかりとした体つきのローラさんの身体は、嘘のようにくるくる回転して壁に激突する。
ゴギャッ!
骨が砕ける音がした。
俺はすぐさま刀を振るって駆け出した。
ふらつきながらも、なんとか体勢を立て直すローラさん、だけど、バジリスクはまるで目が見えているかのような動きでローラさんの腕に噛みついた。
そしてそのまま、首をぶんぶんと振ってローラさんの身体を地面に打ち付ける。
そのたびに、グチャバキ! とローラさんの骨と肉と内臓が破壊される音がした。
「てめえ!」
俺はバジリスクの首に斬りかかる、だがバジリスクはローラさんの身体を口から離し、くいっと首をひねってそれをよけた。
なんでよけられるんだよ!?
俺はさらに下段から上に向けて二の太刀で斬りかかるが、バジリスクは数メートルも軽く飛びさがってそれをよける。
いったいなんなんだ、目が見えないはずだろ!?
実際、その眼はうつろで視線は宙にむけている。
だけど今はそれよりも。
「ローラさん!」
俺は褐色の肌の武闘家にかけよった。
褐色?
いやもう全身血まみれで真っ赤だ。
それに、やべえ、全身の骨が砕けてねえか、これ?
折れた骨が皮膚を突き破っている部分まである。
呼吸するたびにブシュッ! ブシュッ! と血を吐いている。
――これは、やばいやつだ。
死のイメージに襲われて背すじが寒くなった。
いますぐ治療が必要だ!
「インジェクターオン! セット、100万円!」
そんな俺たちに向けて、バジリスクが口を大きく開けた。
「グハァァァァ……」
ポイズン・ブレスが、くる。
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