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第58話 星も月も太陽も!
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ベビーバジリスクたちは石化したアニエスさんにはもう興味をなくしたらしく、俺の方を一斉に見つめてくる。
俺はすぐに目を閉じた。
「インジェクターオン! セット、300万円!」
注射器の針を、なるべく痛くなるように乱暴に自分の腕に刺した。
ぶっとい注射針が肉をえぐって痛みが走る。
くそ!
くそが!
俺を助けるために!
アニエスさんが石化してしまった!
今俺の目の前には十数匹の生まれたばかりのバジリスクが散らばっている。
もう目を開けることはできない。
少し先には巨大な親のバジリスク。
あのポイズン・ブレスの直撃を受けたらどうなるかわからない。
アニエスさんは自分ごと魔法で焼け、といった。
たしかに、300万円分も追加でインジェクションした今の俺なら、魔法攻撃でベビーバジリスクたちを一掃できるかもしれない。
けど。
石化したアニエスさんの身体がどの程度の魔法に耐えられるだろうか?
普通の石像程度?
それなら魔法で焼けこげて崩れてしまうかもしれん。
間違ってもアニエスさんの身体を損傷させることはできない、もしかしたら石化した身体はめちゃくちゃ丈夫で俺の魔法程度ではびくともしないかも……?
俺の後方には今、三人の女の子がいる。
みっしー、紗哩、そしてローラさん。
いまここで攻撃魔法を打てば、もしかしたらアニエスさんの身体は崩れてしまうかもしれない。
だけど、三人の女の子は助けられる可能性が高くなる。
ここでなにもしなければ、無数のベビーバジリスク、そしてバジリスクの攻撃で俺すらもやられてしまうかも。
そしたら全滅だ。
……賭けに、出るべきか?
何かを賭けなければ、全員を救うことはできない。
だけどさ、そのベットするコインが俺自身だというならいくらでも賭けてやるが、今はそのコインはアニエスさんの命なのだ。
クソ、判断がつかない。
「雷鳴よとどろけ! いかづちの力を解放せよ! サンダー!」
みっしーの声が聞こえる、こっちに向けて撃ったのではなさそうだ、なにと闘っている?
「クキャー!」
聞き覚えのある鳴き声、これはコカトリスか。
そうか、アニエスさんは俺を救うためにコカトリスとの戦闘を放棄してこっちにきていたってことか。
なんか感覚麻痺してるけど、コカトリスだってS級のモンスターなんだぞ。
それをみっしーと紗哩だけで倒せるものか?
まずは向こうに加勢すべきだろうか?
迷いと逡巡の中で、俺は身体が硬直する。
脳みそをぶん回せ、考えろ!
いや考えるな、もうのんびりしている時間はない、すぐに行動をしろ!
コカトリス。
S級モンスター。
アニエスさんなしで?
いや大丈夫なはず、さっき俺は彼女にマネーインジェクションした。
だから。
俺は叫んだ。
「紗哩ぃぃぃ!!! 風呂敷かぶってこっちにダッシュしてこい!」
「うん!」
俺のいうことを疑いもせずに聞いて、そのまま実行する紗哩。
俺のそばにくるまで、多数のベビーバジリスクが紗哩にかみついてきているみたいだけど、俺の血を分けた妹は肉を食いちぎられながらも俺のそばまでやってきて、目を閉じている俺の腕をつかんだ。
偉いぞ、わが妹よ。
「来たよ、お兄ちゃん!」
「よし、セット、200万円!」
そのまま紗哩に風呂敷の上から注射器をぶち込む。
向こうの方で、
「せいやぁ!!」
という聞きなれない女性の声が聞こえた。
コカトリスの、
「ぐぎゃあっっ!」
という断末魔の声が聞こえる。
そう、ローラさんだ。
彼女だってSS級の武闘家といっていた、アニエスさんほどではないにしろ、戦闘力は素で強いはずだった。
その上、治療のためとはいえ、俺のマネーインジェクションも受けている。
きっとコカトリスくらいは倒してくれるだろうと予想したのだ、思った通りだ。
「お兄ちゃん、私どうしたらいい?」
紗哩が焦った声で聞いてくる。
これは前にも言ったが。
攻撃魔法を使うみっしーは敵の視力を奪うのに閃光の魔法を使うが、治癒魔法を使う紗哩は逆に光を遮断する魔法で敵の視力にデバフをかけるのだ。
そういう魔法体系になっている。
つまり。
200万円分のマネーインジェクションを受けた、紗哩のデバフ魔法。
はっきりいってSSS級モンスターに普通はそんなのは効かない。
だが、今は俺のスキルによって紗哩のデバフ魔法はSSS級モンスターの魔法耐性をも貫通する。
それはアンジェラ戦で証明済みだった。
「紗哩、暗闇の魔法を使ってくれ! 最大出力で、できる限り広範囲に!」
「うん、わかった! 星も月も太陽も! すべての光はあたしの閉じる暗幕で静かに眠る! 光よ、閉じなさい! 暗黒の黒がお前たちの視界を支配する! 暗闇!!!!」
そう、視線を合わせなければいいのであれば、相手の視力を奪えばいいのだ。
俺はすぐに目を閉じた。
「インジェクターオン! セット、300万円!」
注射器の針を、なるべく痛くなるように乱暴に自分の腕に刺した。
ぶっとい注射針が肉をえぐって痛みが走る。
くそ!
くそが!
俺を助けるために!
アニエスさんが石化してしまった!
今俺の目の前には十数匹の生まれたばかりのバジリスクが散らばっている。
もう目を開けることはできない。
少し先には巨大な親のバジリスク。
あのポイズン・ブレスの直撃を受けたらどうなるかわからない。
アニエスさんは自分ごと魔法で焼け、といった。
たしかに、300万円分も追加でインジェクションした今の俺なら、魔法攻撃でベビーバジリスクたちを一掃できるかもしれない。
けど。
石化したアニエスさんの身体がどの程度の魔法に耐えられるだろうか?
普通の石像程度?
それなら魔法で焼けこげて崩れてしまうかもしれん。
間違ってもアニエスさんの身体を損傷させることはできない、もしかしたら石化した身体はめちゃくちゃ丈夫で俺の魔法程度ではびくともしないかも……?
俺の後方には今、三人の女の子がいる。
みっしー、紗哩、そしてローラさん。
いまここで攻撃魔法を打てば、もしかしたらアニエスさんの身体は崩れてしまうかもしれない。
だけど、三人の女の子は助けられる可能性が高くなる。
ここでなにもしなければ、無数のベビーバジリスク、そしてバジリスクの攻撃で俺すらもやられてしまうかも。
そしたら全滅だ。
……賭けに、出るべきか?
何かを賭けなければ、全員を救うことはできない。
だけどさ、そのベットするコインが俺自身だというならいくらでも賭けてやるが、今はそのコインはアニエスさんの命なのだ。
クソ、判断がつかない。
「雷鳴よとどろけ! いかづちの力を解放せよ! サンダー!」
みっしーの声が聞こえる、こっちに向けて撃ったのではなさそうだ、なにと闘っている?
「クキャー!」
聞き覚えのある鳴き声、これはコカトリスか。
そうか、アニエスさんは俺を救うためにコカトリスとの戦闘を放棄してこっちにきていたってことか。
なんか感覚麻痺してるけど、コカトリスだってS級のモンスターなんだぞ。
それをみっしーと紗哩だけで倒せるものか?
まずは向こうに加勢すべきだろうか?
迷いと逡巡の中で、俺は身体が硬直する。
脳みそをぶん回せ、考えろ!
いや考えるな、もうのんびりしている時間はない、すぐに行動をしろ!
コカトリス。
S級モンスター。
アニエスさんなしで?
いや大丈夫なはず、さっき俺は彼女にマネーインジェクションした。
だから。
俺は叫んだ。
「紗哩ぃぃぃ!!! 風呂敷かぶってこっちにダッシュしてこい!」
「うん!」
俺のいうことを疑いもせずに聞いて、そのまま実行する紗哩。
俺のそばにくるまで、多数のベビーバジリスクが紗哩にかみついてきているみたいだけど、俺の血を分けた妹は肉を食いちぎられながらも俺のそばまでやってきて、目を閉じている俺の腕をつかんだ。
偉いぞ、わが妹よ。
「来たよ、お兄ちゃん!」
「よし、セット、200万円!」
そのまま紗哩に風呂敷の上から注射器をぶち込む。
向こうの方で、
「せいやぁ!!」
という聞きなれない女性の声が聞こえた。
コカトリスの、
「ぐぎゃあっっ!」
という断末魔の声が聞こえる。
そう、ローラさんだ。
彼女だってSS級の武闘家といっていた、アニエスさんほどではないにしろ、戦闘力は素で強いはずだった。
その上、治療のためとはいえ、俺のマネーインジェクションも受けている。
きっとコカトリスくらいは倒してくれるだろうと予想したのだ、思った通りだ。
「お兄ちゃん、私どうしたらいい?」
紗哩が焦った声で聞いてくる。
これは前にも言ったが。
攻撃魔法を使うみっしーは敵の視力を奪うのに閃光の魔法を使うが、治癒魔法を使う紗哩は逆に光を遮断する魔法で敵の視力にデバフをかけるのだ。
そういう魔法体系になっている。
つまり。
200万円分のマネーインジェクションを受けた、紗哩のデバフ魔法。
はっきりいってSSS級モンスターに普通はそんなのは効かない。
だが、今は俺のスキルによって紗哩のデバフ魔法はSSS級モンスターの魔法耐性をも貫通する。
それはアンジェラ戦で証明済みだった。
「紗哩、暗闇の魔法を使ってくれ! 最大出力で、できる限り広範囲に!」
「うん、わかった! 星も月も太陽も! すべての光はあたしの閉じる暗幕で静かに眠る! 光よ、閉じなさい! 暗黒の黒がお前たちの視界を支配する! 暗闇!!!!」
そう、視線を合わせなければいいのであれば、相手の視力を奪えばいいのだ。
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