上 下
50 / 109

第50話 ペロペロペロ

しおりを挟む
 俺はまずみっしーの元に駆け寄る。
 肩のあたりにぶすりと注射針を刺す。

「んん……!」

 みっしーもそろそろ慣れてきたのか、黙ってそれを受け入れる。
 いつも注射の仕方にやさしさが足りないと叱られているけど、やさしく注射するようなシチュエーションにならないからなあ。
 次に紗哩シャーリーにもインジェクションする。

「輝け! あたしの心の光! 七つの色、虹の力、壁となりてあたしたちを護れ! 防護障壁バリアー!!!!」

 紗哩シャーリーが防壁の魔法を唱えた。
 あの爆炎の魔法にも耐えきった100万円分の防壁だ、これでコールドブレスも防げるだろう。
 俺はそのまま四体のフロストジャイアントに向かっていく。
 一体はすでにアニエスさんが首を切って殺している、さすがだ。

「アニエスさん! 俺のスキルでパワーアップする! こっちきて!」

 俺が叫んだ次の瞬間にはアニエスさんが俺のすぐ隣にいた。
 すげーな、さすがは世界最高のニンジャだ。

「インジェクターオン! セット、300万円!」

 俺の手の中に注射器が出現する。

「……それ、どうする?」
「いや、注射するから腕出して!」
「やだ」
「なぜ?」
「ちゅうしゃ、こわい」

 あほかぁ!
 え、この人、まじでこれをいっているの?

「いや、そんなこと言ってる場合じゃないです、打ちます!」

 俺はアニエスさんの腕に注射器を刺そうとして――。
 するりとそれをよけるアニエスさん。

「え、まじでいってるの?」
「こわい」

 いや、そんなことを言ってる場合じゃないんですけど?
 ほら、フロストジャイアントがすぐそこまで……。
 俺は今度はアニエスさんの肩に注射器を刺そうとするけど、それも超高速でよけるアニエスさん。

「やっぱり、こわい。それ、なかはえきたい? エネルギー? それだけほら、ここにチューってだせ」

 アニエスさんが口を開けてその中を指さす。
 ちっちゃ舌をペロペロペロと動かしている。
 ええええ……。

〈エロい〉
〈やばい、ロリの舌やばい〉
〈エッッッッッ〉
〈おいしそう〉
〈ペロペロペロペロ〉

 ほんと、コメント欄はアホしかいないな……。
 それはともかくだ。
 口の中に注射器の中身だけ出せってこと? それを飲み込もうっての? それでいいの?
 今まで注射以外で試したことないしなあ……。
 やったことないからわからん、はっきりいって300万円をそんな成功するか失敗するかわからないことに使いたくない。

「はい、わかりました」

 と俺はいって、アニエスさんの口の中に注射器の中身を出すフリをして――。

「てい!」

 フェイントかけた上で注射器をアニエスさんの太ももにぶっ差した。

「アウチ! こ、このわたしに攻撃を成功させる、おまえ、すごいな」

 いやー、俺も今300万円分のパワーアップしてるからな。

「アニエスさん、じゃあ二人で行きますよ!」
「覚えていろよ」

 俺とアニエスさんは並んでフロストジャイアントに向かっていく。
 先ほどと同じように攻撃をかわしながら足に切りつけ、地面に倒す。
 こいつら生命力すごいからな、確実にとどめを刺さなければならない、俺はフロストジャイアントの頭を刀でかちわってやった。
 うわぁ、脳みそがどろっと溶け出して……やばっ!
 さて、あと三体かな、と思って顔を上げると、そこにはすでに三つの巨大な生首が並んでいた。
 アニエスさんがあっというまに三体なぎ倒したのだ。
 すげえ。

「モトキ……モトキ。お前、スキル、すごい。身体、かるい。おまえのスキル、わたし、相性、最高……」

 アニエスさんは自分の手の平を眺めながらそういい、キッと俺を見上げてこういった。

「わたし、ずっと、パートナー、探していた。強い男、パートナー。人生、ともに戦う、パートナー。モトキ、おまえ、わたしとともに、生きないか?」

 真剣なまなざし、青い瞳がじっと俺をとらえて離さない。
 ひゃー、という悲鳴が後ろの方で聞こえた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最強のコミュ障探索者、Sランクモンスターから美少女配信者を助けてバズりたおす~でも人前で喋るとか無理なのでコラボ配信は断固お断りします!~

尾藤みそぎ
ファンタジー
陰キャのコミュ障女子高生、灰戸亜紀は人見知りが過ぎるあまりソロでのダンジョン探索をライフワークにしている変わり者。そんな彼女は、ダンジョンの出現に呼応して「プライムアビリティ」に覚醒した希少な特級探索者の1人でもあった。 ある日、亜紀はダンジョンの中層に突如現れたSランクモンスターのサラマンドラに襲われている探索者と遭遇する。 亜紀は人助けと思って、サラマンドラを一撃で撃破し探索者を救出。 ところが、襲われていたのは探索者兼インフルエンサーとして知られる水無瀬しずくで。しかも、救出の様子はすべて生配信されてしまっていた!? そして配信された動画がバズりまくる中、偶然にも同じ学校の生徒だった水無瀬しずくがお礼に現れたことで、亜紀は瞬く間に身バレしてしまう。 さらには、ダンジョン管理局に目をつけられて依頼が舞い込んだり、水無瀬しずくからコラボ配信を持ちかけられたり。 コミュ障を極めてひっそりと生活していた亜紀の日常はガラリと様相を変えて行く! はたして表舞台に立たされてしまった亜紀は安らぎのぼっちライフを守り抜くことができるのか!?

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

超激レア種族『サキュバス』を引いた俺、その瞬間を配信してしまった結果大バズして泣いた〜世界で唯一のTS種族〜

ネリムZ
ファンタジー
 小さい頃から憧れだった探索者、そしてその探索を動画にする配信者。  憧れは目標であり夢である。  高校の入学式、矢嶋霧矢は探索者として配信者として華々しいスタートを切った。  ダンジョンへと入ると種族ガチャが始まる。  自分の戦闘スタイルにあった種族、それを期待しながら足を踏み入れた。  その姿は生配信で全世界に配信されている。  憧れの領域へと一歩踏み出したのだ。  全ては計画通り、目標通りだと思っていた。  しかし、誰もが想定してなかった形で配信者として成功するのである。

ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。

あけちともあき
ファンタジー
冴えない高校生女子、きら星はづき(配信ネーム)。 彼女は陰キャな自分を変えるため、今巷で話題のダンジョン配信をしようと思い立つ。 初配信の同接はわずか3人。 しかしその配信でゴボウを使ってゴブリンを撃退した切り抜き動画が作られ、はづきはSNSのトレンドに。 はづきのチャンネルの登録者数は増え、有名冒険配信会社の所属配信者と偶然コラボしたことで、さらにはづきの名前は知れ渡る。 ついには超有名配信者に言及されるほどにまで名前が広がるが、そこから逆恨みした超有名配信者のガチ恋勢により、あわやダンジョン内でアカウントBANに。 だが、そこから華麗に復活した姿が、今までで最高のバズりを引き起こす。 増え続ける登録者数と、留まる事を知らない同接の増加。 ついには、親しくなった有名会社の配信者の本格デビュー配信に呼ばれ、正式にコラボ。 トップ配信者への道をひた走ることになってしまったはづき。 そこへ、おバカな迷惑系アワチューバーが引き起こしたモンスタースタンピード、『ダンジョンハザード』がおそいかかり……。 これまで培ったコネと、大量の同接の力ではづきはこれを鎮圧することになる。

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。 底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。 ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。 だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。 翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。

スキルハンター~ぼっち&ひきこもり生活を配信し続けたら、【開眼】してスキルの覚え方を習得しちゃった件~

名無し
ファンタジー
 主人公の時田カケルは、いつも同じダンジョンに一人でこもっていたため、《ひきこうもりハンター》と呼ばれていた。そんなカケルが動画の配信をしても当たり前のように登録者はほとんど集まらなかったが、彼は現状が楽だからと引きこもり続けていた。そんなある日、唯一見に来てくれていた視聴者がいなくなり、とうとう無の境地に達したカケル。そこで【開眼】という、スキルの覚え方がわかるというスキルを習得し、人生を大きく変えていくことになるのだった……。

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。 幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。 そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。 故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。 自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。 だが、エアルは知らない。 ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。 遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。 これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

処理中です...