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第38話 エナジードレイン
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俺は今度は左側のたれ目の方へと斬りかかる。
たれ目はうすい笑いを顔に張り付けながら、俺の斬撃をその長い爪であっさりと受け止めた。
その直後、俺は右足でたれ目の左足にむけてローキック。
アリシアにやられたコンボだ、やりかえしてやる。
しかしさすがに見極められて、俺のローキックをうまくガードすると、たれ目は赤いメッシュの入ったポニーテールを揺らしながら俺の懐に入ってくる。
一瞬、目と目が合う。
凄みと深みのある、赤い瞳。
身体が硬直した。
やばい、今のはなにかの術か?
そのまま腹部に掌底をまともに受ける。
俺の身体は吹っ飛んで壁に打ち付けられた。
全身に痛みとショックがひろがる。
「いってぇ!」
頭もうちつけて、鼻の奥でツーンと変なにおいがした。
こいつは効くわ。
マネーインジェクションのおかげで致命傷にはならずとも、その衝撃で心臓と肺が圧迫されて一瞬呼吸が止まっちゃったぞ。
さらに追撃でたれ目の少女と吊り目の少女が同時に俺の方へと駆け寄ってくる。
「雷鳴よとどろけ! いかづちの力を解放せよ! サンダー!」
みっしーの稲妻の杖の魔法が吊り目の少女に直撃した。
大ダメージを与えるほどではないけれど、一歩か二歩分の足止めはできたみたいだ。
俺はたれ目の方に真正面に向き直ると、刀を振り上げる。
身構えるたれ目の少女。
俺は刀を振り下ろす――“フリ”をしながら叫んだ。
「燃え上がれ、焼き焦がせよ! ファイヤー!」
そして右の手の平を相手に向ける。
そこから200万円分のインジェクションでパワーアップされた炎の魔法がたれ目の少女を包み込んだ。
燃えさかる小柄な少女の身体。
しかし、このくらいでは倒せまい。
俺は炎に焼かれているその少女に斬りかかろうとして――だが、少女はその場でグランフェッテを決めるバレリーナのようにくるくると回転を始める、いやバレリーナどころじゃない、とんでもない高速回転。コマかよ。
炎はその回転であっさり雲散霧消させられる。
そこに刀を振り下ろすが、あまりの回転力に刀が弾き飛ばされた。
とんでもねえな。
くそ、背後から吊り目の少女もやってくる、どっちが先だ?
「空気よ踊れ、風となって踊れ、敵の血液とともに踊れ! 空刃《ウインドエッジ》!!」
紗哩の攻撃魔法。
「雷鳴よとどろけ! いかづちの力を解放せよ! サンダー!」
さらにみっしーの稲妻攻撃。
紗哩の空気の刃に、雷の電気がまとわりついて、電気と空気の二重の魔法となってたれ目の少女の方へと向かっていく。
回転をとめたたれ目は、そのまま飛びのいて魔法攻撃をよける。
そして天井にさかさまになってぴたりと着地する。
向こうで紗哩が硬化のエンチャントをかけた風呂敷を手に持ち、天井のたれ目の方へと投げようとしているのを目の端でとらえた。
よし、じゃあ俺はこっちだ。
その場で後ろを振り向くようにして大きく足を踏み込み、
「くらええええ!」
中段の後ろ回し蹴り。
今まさに俺に襲い掛かろうしていた吊り目の少女の脇腹にクリーンヒット、、吊り目はその場で膝をつく。
その勢いのまま、刀を振り下ろす。
絶対によけられないタイミングのはずだったのに、超スピードの反応で吊り目は身体ごと逸らしてそれをよけ、ノーモーションから長い爪の右手で俺の腕をひっかいた。
ガクン、と視界が揺れる。
なんだこれ?
さらに吊り目の少女はとんでもないスピードで俺の真横に飛び、そこから一直線、俺めがけて体ごとミサイルみたいにすっとんできた。
やばい、身体の反応がにぶい。
なんとか腕でガードはしたが、まともに攻撃を受けてしまった。
……爪が。
吊り目の少女の爪が、俺の腕に深々と突き刺さっている。
〈エナジードレイン!〉
〈パワーを吸われるぞ!〉
〈コメント打つ暇もないな……〉
〈エネルギーを吸い取られるぞ!〉
爪が光り、俺の身体からなにかが吸われていくのを感じた。
「くっそがぁっ!!!」
俺は腕に爪がささったまま、それを利用して吊り目の少女を壁に叩きつけた。
その拍子に爪がはずれ、俺の腕からは血が噴き出す。
最高に痛いけれど、その傷自体はたいしたことない。
問題は。
エナジードレイン。
ヴァンパイアが持つ能力の中でも最も恐ろしいものの一つだ。
身体的・精神的エネルギーを吸い取って自分のものにしてしまう能力。
そして、俺のスキルとは本当に相性が悪い。
せっかくのマネーインジェクションしてパワーアップした力を、今ので一部吸われてしまった。
くそ。
もう、どうこう言っている余裕はない。
速攻で片づけてやる。
「インジェクターオン! セット、gaagle Adsense! 残高オープン!」
[ゲンザイノシュウエキ:6,184,200エン]
さっきから百万円くらい増えてるな、外国マネー流入のおかげか?
頭の中で計算する。あれをあれしてああするとして、今いくらまで使える?
よくわからんけど、200万円じゃ倒せない、もっとだ!
「セット、400万円!」
俺は注射針を腕に刺した。
普通のサラリーマンが涙ちょちょぎれさせて一年間働いてやっと稼げる金額。
これで倒せなきゃ終わりだ、いろいろと。
たれ目はうすい笑いを顔に張り付けながら、俺の斬撃をその長い爪であっさりと受け止めた。
その直後、俺は右足でたれ目の左足にむけてローキック。
アリシアにやられたコンボだ、やりかえしてやる。
しかしさすがに見極められて、俺のローキックをうまくガードすると、たれ目は赤いメッシュの入ったポニーテールを揺らしながら俺の懐に入ってくる。
一瞬、目と目が合う。
凄みと深みのある、赤い瞳。
身体が硬直した。
やばい、今のはなにかの術か?
そのまま腹部に掌底をまともに受ける。
俺の身体は吹っ飛んで壁に打ち付けられた。
全身に痛みとショックがひろがる。
「いってぇ!」
頭もうちつけて、鼻の奥でツーンと変なにおいがした。
こいつは効くわ。
マネーインジェクションのおかげで致命傷にはならずとも、その衝撃で心臓と肺が圧迫されて一瞬呼吸が止まっちゃったぞ。
さらに追撃でたれ目の少女と吊り目の少女が同時に俺の方へと駆け寄ってくる。
「雷鳴よとどろけ! いかづちの力を解放せよ! サンダー!」
みっしーの稲妻の杖の魔法が吊り目の少女に直撃した。
大ダメージを与えるほどではないけれど、一歩か二歩分の足止めはできたみたいだ。
俺はたれ目の方に真正面に向き直ると、刀を振り上げる。
身構えるたれ目の少女。
俺は刀を振り下ろす――“フリ”をしながら叫んだ。
「燃え上がれ、焼き焦がせよ! ファイヤー!」
そして右の手の平を相手に向ける。
そこから200万円分のインジェクションでパワーアップされた炎の魔法がたれ目の少女を包み込んだ。
燃えさかる小柄な少女の身体。
しかし、このくらいでは倒せまい。
俺は炎に焼かれているその少女に斬りかかろうとして――だが、少女はその場でグランフェッテを決めるバレリーナのようにくるくると回転を始める、いやバレリーナどころじゃない、とんでもない高速回転。コマかよ。
炎はその回転であっさり雲散霧消させられる。
そこに刀を振り下ろすが、あまりの回転力に刀が弾き飛ばされた。
とんでもねえな。
くそ、背後から吊り目の少女もやってくる、どっちが先だ?
「空気よ踊れ、風となって踊れ、敵の血液とともに踊れ! 空刃《ウインドエッジ》!!」
紗哩の攻撃魔法。
「雷鳴よとどろけ! いかづちの力を解放せよ! サンダー!」
さらにみっしーの稲妻攻撃。
紗哩の空気の刃に、雷の電気がまとわりついて、電気と空気の二重の魔法となってたれ目の少女の方へと向かっていく。
回転をとめたたれ目は、そのまま飛びのいて魔法攻撃をよける。
そして天井にさかさまになってぴたりと着地する。
向こうで紗哩が硬化のエンチャントをかけた風呂敷を手に持ち、天井のたれ目の方へと投げようとしているのを目の端でとらえた。
よし、じゃあ俺はこっちだ。
その場で後ろを振り向くようにして大きく足を踏み込み、
「くらええええ!」
中段の後ろ回し蹴り。
今まさに俺に襲い掛かろうしていた吊り目の少女の脇腹にクリーンヒット、、吊り目はその場で膝をつく。
その勢いのまま、刀を振り下ろす。
絶対によけられないタイミングのはずだったのに、超スピードの反応で吊り目は身体ごと逸らしてそれをよけ、ノーモーションから長い爪の右手で俺の腕をひっかいた。
ガクン、と視界が揺れる。
なんだこれ?
さらに吊り目の少女はとんでもないスピードで俺の真横に飛び、そこから一直線、俺めがけて体ごとミサイルみたいにすっとんできた。
やばい、身体の反応がにぶい。
なんとか腕でガードはしたが、まともに攻撃を受けてしまった。
……爪が。
吊り目の少女の爪が、俺の腕に深々と突き刺さっている。
〈エナジードレイン!〉
〈パワーを吸われるぞ!〉
〈コメント打つ暇もないな……〉
〈エネルギーを吸い取られるぞ!〉
爪が光り、俺の身体からなにかが吸われていくのを感じた。
「くっそがぁっ!!!」
俺は腕に爪がささったまま、それを利用して吊り目の少女を壁に叩きつけた。
その拍子に爪がはずれ、俺の腕からは血が噴き出す。
最高に痛いけれど、その傷自体はたいしたことない。
問題は。
エナジードレイン。
ヴァンパイアが持つ能力の中でも最も恐ろしいものの一つだ。
身体的・精神的エネルギーを吸い取って自分のものにしてしまう能力。
そして、俺のスキルとは本当に相性が悪い。
せっかくのマネーインジェクションしてパワーアップした力を、今ので一部吸われてしまった。
くそ。
もう、どうこう言っている余裕はない。
速攻で片づけてやる。
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さっきから百万円くらい増えてるな、外国マネー流入のおかげか?
頭の中で計算する。あれをあれしてああするとして、今いくらまで使える?
よくわからんけど、200万円じゃ倒せない、もっとだ!
「セット、400万円!」
俺は注射針を腕に刺した。
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