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第36話 爆炎

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 二人の少女が、同時に恐るべき魔法の詠唱をはじめた。

「暗黒の向こう、次元の彼方で。源と源を戦わせよ、その剣戟の火花はすべてを破滅させるだろう。火花を取り出せ。さあ火花よ、ここで弾けよ。目の前をすべて。すべて。すべて焼き尽くせ。壊しつくせ。爆発の向こう側。形あるものが形なきものへと。踊れ! 踊れ! 襲え! 襲え! 砕け! 砕け! 焦がせ! 焦がせ!」

〈爆炎だ〉
〈最上級の爆発魔法〉
〈核分裂反応を別次元で発生させてその力の一部をこちらの次元にもってくるやつ〉
〈人間が耐えられるものじゃない〉
〈みっしー!〉
〈逃げて!〉
〈シャリちゃん!〉
〈やばい、これ爆炎を重ね掛けしてくるってことか?〉
〈どうにかして、お兄ちゃん!〉
〈逃げろ!〉
〈逃げて!〉
〈やばいやばいやばい〉

 コメント欄が悲鳴だらけになっているが、もちろん俺たちはそれをリアルタイムで見ている暇はなかった。
 いや待ってくれ、これまじで最上級の爆発魔法だぞ、詠唱が長いが、その威力は術者の前方数十平方メートルを爆発の衝撃とそして炎で破壊しつくし焼き尽くす、最高にやばいやつだ。
 まさかこれ、二人同時に二つ爆炎魔法を打ってくるということか!?
 二人同時ってのがやっかいだ、俺が今斬りかかっても、一人しかなぎ倒せない、その間にもう一人から爆炎魔法の直撃をくらったら俺でもやばい。
 その前に、どっちの身体がアンジェラなのかすら、まだわかってない。

紗哩シャーリーの防壁が頼りだ、でもさっきの50万円のインジェクションじゃ足りない。

「インジェクターオン! セット、100万円!」

 急げ急げ急げ!
 最上級魔法だけあって、詠唱が長いのが救いだ。
 俺は慌てて注射針を紗哩シャーリーの肩にぶっ刺す。

「突然!? あいでででで!」

 いやまじで悪い、紗哩シャーリー
 あとで甘いものでもおごってやるから。
  その”あとで”があったらの話だけどな! 
 俺たちはこの戦いに生き残らなきゃいけない!

紗哩シャーリー、頼む、防壁を!」
「うん! 輝け! あたしの心の光! 七つの色、虹の力、壁となりてあたしたちを護れ! 防護障壁バリアー!!!!」

 その直後に、二人の少女が詠唱を終え、叫んだ。

「爆炎!!!!」

 少女二人の手の平から、別次元から呼び出された爆発の衝撃が放出された。

「伏せろ!」

 俺は叫び、俺たち三人は地面に腹ばいに伏せた。
 まずは衝撃波が俺たちを襲う。
 ゴォォォン!!
 鼓膜を破るかと思うほどのすごい音。
 それだけでダンジョンの壁が崩れた。
 防壁越しでも、その威力は十分伝わってきた。
 そしてそのあとにやってくる、炎の塊。
 まさに巨大な猛獣のように俺たちを襲ってくる。
 紗哩シャーリーの作り出した150万円インジェクションの防護障壁越しでも、そのすさまじさはわかった。
 髪の毛がちりちりと焦げて、いやなにおいがした。
 その炎の中。

「セット、100万円!」

 俺はさらに自分にインジェクションする。
 そして炎の猛獣が頭上を過ぎ去った瞬間、俺は立ち上がって敵に向かって駆け出した。

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