21 / 56
第21話 条件が三つある
しおりを挟む
「さて、見ての通り私はこの有り様だ。自分の存在を維持するのに精一杯でテレポートのような高位魔法を使うどころではないが」
床から数センチ浮いているツバキ。
その姿は薄くて、まるで向こう側が透けて見えそうな程だった。
光希はツバキに言う。
「別にいいさ。一緒に戦ってくれと言ってるわけじゃない。地上への道案内をしてくれればそれでいい」
「ただでか?」
「条件があるなら聞こう。そもそも、ツバキ、お前だって実は由羽愛に少し情が湧いているんだろ? 助けたいと思わないか?」
「私が興味があるのはその才と能力だけだ。お前も、由羽愛も素晴らしい能力を持っている。お前たちの力を利用してやりたいとは思うがね」
ちらりと由羽愛に視線をやるツバキ。その目にはなんとも言えぬ優しさが溢れていた。
「由羽愛のことはお気に入りなんだろう?」
「ま、むかーし死んだ妹にちょっと似ているのでね。ただそれだけさ。さて、私はこのダンジョンをよく知っている。道案内をしてやらんこともない。それには条件が三つある」
「よし、聞こう。なんだ?」
ツバキはふっと笑った。
その笑みは由羽愛を見るときのような温かいものではなく、むしろ冷酷で残虐さすら感じさせるほどの笑みであった。
実際、光希の背筋はゾッとした。
――さすが、元魔女だな。
一筋縄の条件ではないだろう。
そこに、どんな罠が仕掛けられているかもわからない。
光希は一言一句聞き漏らすまいと精神を集中させた。
ツバキはすっ、と腕を伸ばすと、少し離れたところを指さした。
「まずは、アレをやめさせてもらおう。うざい」
アレ? アレとはなんだ。
光希はまずはじっとツバキの顔をにらみ、そしてパッとそちらの方に顔を向けた。
そこには――。
「も、もっとか? こうか? あ、これ以上は無理だぞ、乳首が出たらBANだからな。ここ! ここギリギリのライン! ほらどうだ?」
ミシェルがドローン型カメラの前で胸当てを外し、薄い衣服の襟ぐりをぐいっと開けて胸を寄せている姿があった。
:おならのらなお〈さすが! もっと攻めていこうぜ〉
:パックス〈あの、ミシェルさん、お願いがあるんですけど、そのウサギ耳でレイピアの柄のところをこう、こすって見るのって可能ですか?〉
:特殊寝台付属品〈えっ〉
:Q10〈えっろ〉
:小南江〈尻尾! 尻尾を見たいっす! おしりをこっちに向けて尻尾を揺らしてみてくださいっす〉
「………………」
「…………………………」
光希はそちらを見るのをやめた。
「で、あとの二つの条件は?」
と、光希は静かに言った。
「いやまずやめさせろよ、小学生の教育に悪いだろうが」
と、ツバキも静かに言った。
「ほへー。大人の女の人って綺麗……」
と、由羽愛も静かに言った。
「おいミシェル、もうやめないと二度と膝枕させてやらないぞ」
「はっ! マスターの命令とあれば仕方がない……今日はここまでだ」
すました顔で胸元を正すミシェル。
あいつは強いが実に馬鹿だなあ、と光希は思った。
パーティ内では凛音とミシェルが馬鹿担当だったからな。
向き直り、改めて光希はツバキに問う。
「で、あとの二つの条件は?」
「うん。まず一つ目。私を殺したモンスターがまだこのダンジョン内にいる。ありていにいえば復讐したい。そいつを、殺してほしい」
「なるほどな。しかし、魔女だったお前を殺すほどのモンスター、俺達に倒せるか?」
「私の助言があればね。そして二つ目。お前たちがこのダンジョンから抜け出すまでのあいだ、あの子どもに魔法を教えてやりたいんだ。あいつはまだまだ伸びる。だが現状では一人前とはいえない、子どもだしね。だから、由羽愛に魔法の教育を施して成長させてやりたい」
「なんのために?」
「言っただろう? 死んだ妹に似ている。妹が死んだとき……詳しくは話してやらんが、あのとき、私がもっとうまくやれたら死ななくてよかったんじゃないかという後悔がある。今度はうまくやりたい」
二つ目は……まあいいだろう、由羽愛を強化してくれるというのならば歓迎だ。パーティメンバーの戦力増強は望むところだからだ。
一つ目は……。
「お前を殺したモンスターはどんなやつで、今どこにいるんだ? そいつを倒したら、間違いなく俺達を地上に案内するか?」
床から数センチ浮いているツバキ。
その姿は薄くて、まるで向こう側が透けて見えそうな程だった。
光希はツバキに言う。
「別にいいさ。一緒に戦ってくれと言ってるわけじゃない。地上への道案内をしてくれればそれでいい」
「ただでか?」
「条件があるなら聞こう。そもそも、ツバキ、お前だって実は由羽愛に少し情が湧いているんだろ? 助けたいと思わないか?」
「私が興味があるのはその才と能力だけだ。お前も、由羽愛も素晴らしい能力を持っている。お前たちの力を利用してやりたいとは思うがね」
ちらりと由羽愛に視線をやるツバキ。その目にはなんとも言えぬ優しさが溢れていた。
「由羽愛のことはお気に入りなんだろう?」
「ま、むかーし死んだ妹にちょっと似ているのでね。ただそれだけさ。さて、私はこのダンジョンをよく知っている。道案内をしてやらんこともない。それには条件が三つある」
「よし、聞こう。なんだ?」
ツバキはふっと笑った。
その笑みは由羽愛を見るときのような温かいものではなく、むしろ冷酷で残虐さすら感じさせるほどの笑みであった。
実際、光希の背筋はゾッとした。
――さすが、元魔女だな。
一筋縄の条件ではないだろう。
そこに、どんな罠が仕掛けられているかもわからない。
光希は一言一句聞き漏らすまいと精神を集中させた。
ツバキはすっ、と腕を伸ばすと、少し離れたところを指さした。
「まずは、アレをやめさせてもらおう。うざい」
アレ? アレとはなんだ。
光希はまずはじっとツバキの顔をにらみ、そしてパッとそちらの方に顔を向けた。
そこには――。
「も、もっとか? こうか? あ、これ以上は無理だぞ、乳首が出たらBANだからな。ここ! ここギリギリのライン! ほらどうだ?」
ミシェルがドローン型カメラの前で胸当てを外し、薄い衣服の襟ぐりをぐいっと開けて胸を寄せている姿があった。
:おならのらなお〈さすが! もっと攻めていこうぜ〉
:パックス〈あの、ミシェルさん、お願いがあるんですけど、そのウサギ耳でレイピアの柄のところをこう、こすって見るのって可能ですか?〉
:特殊寝台付属品〈えっ〉
:Q10〈えっろ〉
:小南江〈尻尾! 尻尾を見たいっす! おしりをこっちに向けて尻尾を揺らしてみてくださいっす〉
「………………」
「…………………………」
光希はそちらを見るのをやめた。
「で、あとの二つの条件は?」
と、光希は静かに言った。
「いやまずやめさせろよ、小学生の教育に悪いだろうが」
と、ツバキも静かに言った。
「ほへー。大人の女の人って綺麗……」
と、由羽愛も静かに言った。
「おいミシェル、もうやめないと二度と膝枕させてやらないぞ」
「はっ! マスターの命令とあれば仕方がない……今日はここまでだ」
すました顔で胸元を正すミシェル。
あいつは強いが実に馬鹿だなあ、と光希は思った。
パーティ内では凛音とミシェルが馬鹿担当だったからな。
向き直り、改めて光希はツバキに問う。
「で、あとの二つの条件は?」
「うん。まず一つ目。私を殺したモンスターがまだこのダンジョン内にいる。ありていにいえば復讐したい。そいつを、殺してほしい」
「なるほどな。しかし、魔女だったお前を殺すほどのモンスター、俺達に倒せるか?」
「私の助言があればね。そして二つ目。お前たちがこのダンジョンから抜け出すまでのあいだ、あの子どもに魔法を教えてやりたいんだ。あいつはまだまだ伸びる。だが現状では一人前とはいえない、子どもだしね。だから、由羽愛に魔法の教育を施して成長させてやりたい」
「なんのために?」
「言っただろう? 死んだ妹に似ている。妹が死んだとき……詳しくは話してやらんが、あのとき、私がもっとうまくやれたら死ななくてよかったんじゃないかという後悔がある。今度はうまくやりたい」
二つ目は……まあいいだろう、由羽愛を強化してくれるというのならば歓迎だ。パーティメンバーの戦力増強は望むところだからだ。
一つ目は……。
「お前を殺したモンスターはどんなやつで、今どこにいるんだ? そいつを倒したら、間違いなく俺達を地上に案内するか?」
10
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する
平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。
しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。
だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。
そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
借金背負ったので死ぬ気でダンジョン行ったら人生変わった件 やけくそで潜った最凶の迷宮で瀕死の国民的美少女を救ってみた
羽黒 楓
ファンタジー
旧題:借金背負ったので兄妹で死のうと生還不可能の最難関ダンジョンに二人で潜ったら瀕死の人気美少女配信者を助けちゃったので連れて帰るしかない件
借金一億二千万円! もう駄目だ! 二人で心中しようと配信しながらSSS級ダンジョンに潜った俺たち兄妹。そしたらその下層階で国民的人気配信者の女の子が遭難していた! 助けてあげたらどんどんとスパチャが入ってくるじゃん! ってかもはや社会現象じゃん! 俺のスキルは【マネーインジェクション】! 預金残高を消費してパワーにし、それを自分や他人に注射してパワーアップさせる能力。ほらお前ら、この子を助けたければどんどんスパチャしまくれ! その金でパワーを女の子たちに注入注入! これだけ金あれば借金返せそう、もうこうなりゃ絶対に生還するぞ! 最難関ダンジョンだけど、絶対に生きて脱出するぞ! どんな手を使ってでも!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる