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第21話 条件が三つある
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「さて、見ての通り私はこの有り様だ。自分の存在を維持するのに精一杯でテレポートのような高位魔法を使うどころではないが」
床から数センチ浮いているツバキ。
その姿は薄くて、まるで向こう側が透けて見えそうな程だった。
光希はツバキに言う。
「別にいいさ。一緒に戦ってくれと言ってるわけじゃない。地上への道案内をしてくれればそれでいい」
「ただでか?」
「条件があるなら聞こう。そもそも、ツバキ、お前だって実は由羽愛に少し情が湧いているんだろ? 助けたいと思わないか?」
「私が興味があるのはその才と能力だけだ。お前も、由羽愛も素晴らしい能力を持っている。お前たちの力を利用してやりたいとは思うがね」
ちらりと由羽愛に視線をやるツバキ。その目にはなんとも言えぬ優しさが溢れていた。
「由羽愛のことはお気に入りなんだろう?」
「ま、むかーし死んだ妹にちょっと似ているのでね。ただそれだけさ。さて、私はこのダンジョンをよく知っている。道案内をしてやらんこともない。それには条件が三つある」
「よし、聞こう。なんだ?」
ツバキはふっと笑った。
その笑みは由羽愛を見るときのような温かいものではなく、むしろ冷酷で残虐さすら感じさせるほどの笑みであった。
実際、光希の背筋はゾッとした。
――さすが、元魔女だな。
一筋縄の条件ではないだろう。
そこに、どんな罠が仕掛けられているかもわからない。
光希は一言一句聞き漏らすまいと精神を集中させた。
ツバキはすっ、と腕を伸ばすと、少し離れたところを指さした。
「まずは、アレをやめさせてもらおう。うざい」
アレ? アレとはなんだ。
光希はまずはじっとツバキの顔をにらみ、そしてパッとそちらの方に顔を向けた。
そこには――。
「も、もっとか? こうか? あ、これ以上は無理だぞ、乳首が出たらBANだからな。ここ! ここギリギリのライン! ほらどうだ?」
ミシェルがドローン型カメラの前で胸当てを外し、薄い衣服の襟ぐりをぐいっと開けて胸を寄せている姿があった。
:おならのらなお〈さすが! もっと攻めていこうぜ〉
:パックス〈あの、ミシェルさん、お願いがあるんですけど、そのウサギ耳でレイピアの柄のところをこう、こすって見るのって可能ですか?〉
:特殊寝台付属品〈えっ〉
:Q10〈えっろ〉
:小南江〈尻尾! 尻尾を見たいっす! おしりをこっちに向けて尻尾を揺らしてみてくださいっす〉
「………………」
「…………………………」
光希はそちらを見るのをやめた。
「で、あとの二つの条件は?」
と、光希は静かに言った。
「いやまずやめさせろよ、小学生の教育に悪いだろうが」
と、ツバキも静かに言った。
「ほへー。大人の女の人って綺麗……」
と、由羽愛も静かに言った。
「おいミシェル、もうやめないと二度と膝枕させてやらないぞ」
「はっ! マスターの命令とあれば仕方がない……今日はここまでだ」
すました顔で胸元を正すミシェル。
あいつは強いが実に馬鹿だなあ、と光希は思った。
パーティ内では凛音とミシェルが馬鹿担当だったからな。
向き直り、改めて光希はツバキに問う。
「で、あとの二つの条件は?」
「うん。まず一つ目。私を殺したモンスターがまだこのダンジョン内にいる。ありていにいえば復讐したい。そいつを、殺してほしい」
「なるほどな。しかし、魔女だったお前を殺すほどのモンスター、俺達に倒せるか?」
「私の助言があればね。そして二つ目。お前たちがこのダンジョンから抜け出すまでのあいだ、あの子どもに魔法を教えてやりたいんだ。あいつはまだまだ伸びる。だが現状では一人前とはいえない、子どもだしね。だから、由羽愛に魔法の教育を施して成長させてやりたい」
「なんのために?」
「言っただろう? 死んだ妹に似ている。妹が死んだとき……詳しくは話してやらんが、あのとき、私がもっとうまくやれたら死ななくてよかったんじゃないかという後悔がある。今度はうまくやりたい」
二つ目は……まあいいだろう、由羽愛を強化してくれるというのならば歓迎だ。パーティメンバーの戦力増強は望むところだからだ。
一つ目は……。
「お前を殺したモンスターはどんなやつで、今どこにいるんだ? そいつを倒したら、間違いなく俺達を地上に案内するか?」
床から数センチ浮いているツバキ。
その姿は薄くて、まるで向こう側が透けて見えそうな程だった。
光希はツバキに言う。
「別にいいさ。一緒に戦ってくれと言ってるわけじゃない。地上への道案内をしてくれればそれでいい」
「ただでか?」
「条件があるなら聞こう。そもそも、ツバキ、お前だって実は由羽愛に少し情が湧いているんだろ? 助けたいと思わないか?」
「私が興味があるのはその才と能力だけだ。お前も、由羽愛も素晴らしい能力を持っている。お前たちの力を利用してやりたいとは思うがね」
ちらりと由羽愛に視線をやるツバキ。その目にはなんとも言えぬ優しさが溢れていた。
「由羽愛のことはお気に入りなんだろう?」
「ま、むかーし死んだ妹にちょっと似ているのでね。ただそれだけさ。さて、私はこのダンジョンをよく知っている。道案内をしてやらんこともない。それには条件が三つある」
「よし、聞こう。なんだ?」
ツバキはふっと笑った。
その笑みは由羽愛を見るときのような温かいものではなく、むしろ冷酷で残虐さすら感じさせるほどの笑みであった。
実際、光希の背筋はゾッとした。
――さすが、元魔女だな。
一筋縄の条件ではないだろう。
そこに、どんな罠が仕掛けられているかもわからない。
光希は一言一句聞き漏らすまいと精神を集中させた。
ツバキはすっ、と腕を伸ばすと、少し離れたところを指さした。
「まずは、アレをやめさせてもらおう。うざい」
アレ? アレとはなんだ。
光希はまずはじっとツバキの顔をにらみ、そしてパッとそちらの方に顔を向けた。
そこには――。
「も、もっとか? こうか? あ、これ以上は無理だぞ、乳首が出たらBANだからな。ここ! ここギリギリのライン! ほらどうだ?」
ミシェルがドローン型カメラの前で胸当てを外し、薄い衣服の襟ぐりをぐいっと開けて胸を寄せている姿があった。
:おならのらなお〈さすが! もっと攻めていこうぜ〉
:パックス〈あの、ミシェルさん、お願いがあるんですけど、そのウサギ耳でレイピアの柄のところをこう、こすって見るのって可能ですか?〉
:特殊寝台付属品〈えっ〉
:Q10〈えっろ〉
:小南江〈尻尾! 尻尾を見たいっす! おしりをこっちに向けて尻尾を揺らしてみてくださいっす〉
「………………」
「…………………………」
光希はそちらを見るのをやめた。
「で、あとの二つの条件は?」
と、光希は静かに言った。
「いやまずやめさせろよ、小学生の教育に悪いだろうが」
と、ツバキも静かに言った。
「ほへー。大人の女の人って綺麗……」
と、由羽愛も静かに言った。
「おいミシェル、もうやめないと二度と膝枕させてやらないぞ」
「はっ! マスターの命令とあれば仕方がない……今日はここまでだ」
すました顔で胸元を正すミシェル。
あいつは強いが実に馬鹿だなあ、と光希は思った。
パーティ内では凛音とミシェルが馬鹿担当だったからな。
向き直り、改めて光希はツバキに問う。
「で、あとの二つの条件は?」
「うん。まず一つ目。私を殺したモンスターがまだこのダンジョン内にいる。ありていにいえば復讐したい。そいつを、殺してほしい」
「なるほどな。しかし、魔女だったお前を殺すほどのモンスター、俺達に倒せるか?」
「私の助言があればね。そして二つ目。お前たちがこのダンジョンから抜け出すまでのあいだ、あの子どもに魔法を教えてやりたいんだ。あいつはまだまだ伸びる。だが現状では一人前とはいえない、子どもだしね。だから、由羽愛に魔法の教育を施して成長させてやりたい」
「なんのために?」
「言っただろう? 死んだ妹に似ている。妹が死んだとき……詳しくは話してやらんが、あのとき、私がもっとうまくやれたら死ななくてよかったんじゃないかという後悔がある。今度はうまくやりたい」
二つ目は……まあいいだろう、由羽愛を強化してくれるというのならば歓迎だ。パーティメンバーの戦力増強は望むところだからだ。
一つ目は……。
「お前を殺したモンスターはどんなやつで、今どこにいるんだ? そいつを倒したら、間違いなく俺達を地上に案内するか?」
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