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第19話 十年ぶり
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すると光希の目の前に、ふわっともやのようなものができた。
それはだんだんと人の形となっていって――。
一人の少女の姿となった。
だが、現実味がないほど薄い煙のような存在感。
「やあやあ。久しぶり。十年ぶりかな?」
その姿を見て、由羽愛が叫んだ。
「お姉さん!?」
その言葉通り、消え去りそうなほど薄い影は、しかし、よく見ればササノ・ツバキの姿をしていた。
「貴様っ!」
ミシェルがレイピアを構える。
光希はそれを片手で制した。
「ササノ・ツバキ。解呪をあれだけまともにくらっても魂が消滅しないとはな」
「ふふふ。私ほどの魔力を持っているとね、あの程度では成仏できないよ」
「成仏? お前みたいなのが仏様になってたまるか」
「ははは。言葉遊びはけっこう。で、なにか用かい? 見たとおり、私にはもう戦うほどの力はない。おかげさまでね。ずいぶん存在が薄くなってしまった。もう一度、さっきの解呪をくらったら、本当に存在が消えてしまうかもしれないよ。こんなあわれな幽霊になんか用はないだろう?」
「……俺達がお前に用があるんじゃない。お前が俺達に用があるんじゃないのか?」
光希がそう言うと、ツバキは凄みのある笑顔で光希を見つめる。
しばらく睨み合ったあと、ツバキが静かに言った。
「私に目的が無いとは言わない。で、なにが言いたい?」
「俺達がここを脱出するのに協力してくれ。そうしたら、俺達もお前に協力してやる」
「はははっ! 君たち程度の探索者がこの元魔女たる私になにを協力できると言うんだい?」
「お前が魔女の幽霊ならば――さっきの由羽愛の解呪で消滅していたはずだ。だが、そうはなっていない。だからお前は――」
「ストップ。黙れ。これ、配信とやらをやってるんだろう? 全世界に? 滅多なことを口にするもんじゃない」
「やはりな。俺達はお前に協力できる、そうだろう? そしてお前も俺達に協力できる」
はあ、とため息をついてツバキは呆れたような顔で尋ねる。
「私が何を協力できるっていうんだい? ああ、あの死んだ魔法使いの女の子の魂を探してほしい、とかだろう?」
「それもあるが、最優先は由羽愛を脱出させることだ。由羽愛だけでいい。お前、テレポーターの魔法は使えないのか?」
「使えるとも。だがお前も知っている通り、多少難しい術式で準備に半日はかかる。そもそもこんなに存在が薄くなってしまっては難しいな」
そのとおりで、テレポーターの魔法というのは最高難易度の魔法であり、詠唱だけで数時間かかるという戦闘中には不向きな魔法である。
光希がそれを使おうと思ったら半日の準備ではすまないほどだ。
「とにかく、まだ子供である由羽愛だけでも生還させたいんだ、俺は」
ツバキは何かを手を顎にあて、何かを考え込み始めた。
「ふむ……ふーん……うーん……あれをこうしてああすれば……そうだなあ……しかしなあ……お前らに、あいつが倒せるかなあ?」
それはだんだんと人の形となっていって――。
一人の少女の姿となった。
だが、現実味がないほど薄い煙のような存在感。
「やあやあ。久しぶり。十年ぶりかな?」
その姿を見て、由羽愛が叫んだ。
「お姉さん!?」
その言葉通り、消え去りそうなほど薄い影は、しかし、よく見ればササノ・ツバキの姿をしていた。
「貴様っ!」
ミシェルがレイピアを構える。
光希はそれを片手で制した。
「ササノ・ツバキ。解呪をあれだけまともにくらっても魂が消滅しないとはな」
「ふふふ。私ほどの魔力を持っているとね、あの程度では成仏できないよ」
「成仏? お前みたいなのが仏様になってたまるか」
「ははは。言葉遊びはけっこう。で、なにか用かい? 見たとおり、私にはもう戦うほどの力はない。おかげさまでね。ずいぶん存在が薄くなってしまった。もう一度、さっきの解呪をくらったら、本当に存在が消えてしまうかもしれないよ。こんなあわれな幽霊になんか用はないだろう?」
「……俺達がお前に用があるんじゃない。お前が俺達に用があるんじゃないのか?」
光希がそう言うと、ツバキは凄みのある笑顔で光希を見つめる。
しばらく睨み合ったあと、ツバキが静かに言った。
「私に目的が無いとは言わない。で、なにが言いたい?」
「俺達がここを脱出するのに協力してくれ。そうしたら、俺達もお前に協力してやる」
「はははっ! 君たち程度の探索者がこの元魔女たる私になにを協力できると言うんだい?」
「お前が魔女の幽霊ならば――さっきの由羽愛の解呪で消滅していたはずだ。だが、そうはなっていない。だからお前は――」
「ストップ。黙れ。これ、配信とやらをやってるんだろう? 全世界に? 滅多なことを口にするもんじゃない」
「やはりな。俺達はお前に協力できる、そうだろう? そしてお前も俺達に協力できる」
はあ、とため息をついてツバキは呆れたような顔で尋ねる。
「私が何を協力できるっていうんだい? ああ、あの死んだ魔法使いの女の子の魂を探してほしい、とかだろう?」
「それもあるが、最優先は由羽愛を脱出させることだ。由羽愛だけでいい。お前、テレポーターの魔法は使えないのか?」
「使えるとも。だがお前も知っている通り、多少難しい術式で準備に半日はかかる。そもそもこんなに存在が薄くなってしまっては難しいな」
そのとおりで、テレポーターの魔法というのは最高難易度の魔法であり、詠唱だけで数時間かかるという戦闘中には不向きな魔法である。
光希がそれを使おうと思ったら半日の準備ではすまないほどだ。
「とにかく、まだ子供である由羽愛だけでも生還させたいんだ、俺は」
ツバキは何かを手を顎にあて、何かを考え込み始めた。
「ふむ……ふーん……うーん……あれをこうしてああすれば……そうだなあ……しかしなあ……お前らに、あいつが倒せるかなあ?」
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