空のない世界(裏)

石田氏

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外伝・劇場版(風) 山吹色の世界

01

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 信号が青へと変わった。当然、青になれば、進む。おじさんは迷いなく足を前へ出した。


あら~、横断歩道わたる前に右見て左見て、また右見て進むんだよね~



大人はいいの。それに、歩行者優先。車が気をつければいいこと。だって

キーッ

ドーンッ

グシャ

これが、この男の人生。
に、なる予定である。
少女、ホタルは未来が視えた。いや、未来と言うより正確には死を直視できた。見た者の未来の死がリアルに視れた。いや、視えてしまっている。無論、彼女の意思など関係なく。
「視たくない、視たくない、視たくない、視たくない、視たくない、視たくない」
だが、視えてしまう。
彼女は壊れた。人間の死を沢山視てきた彼女は、死を誰よりも恐怖し、それでいて自分の死は恐れなかった。何故なら、彼女はまだ、自分の死を視たことはない。




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 とある会場。
 カメラのフラッシュが飛び交うなか、これから世界にとっての一大の発表に、皆は期待をのせていた。
 これから、日本技術開発局のWチームが開発した、少女の武器製造に成功し、それを本日この場より発表するのだ。
 少女の武器とは、能力者にしか使用することしか出来ない武器である。もともと、少女は一つの能力しか手にすることができなかった。それを補う形で、新たに能力を複数持つには、その能力を宿した武器を手にすることが、戦力を大きく変えることができる。しかし、その特殊な武器を生み出すことができたのは色ありの少女の王にして、トリニティの王、黒の少女のみだった。
 今まで現れた色ありの少女が持つ武器は強力で、こちらが圧倒的不利にあった。例えば、白の少女はステッキ状の武器で重力を操作する能力だった。故に、隕石を落としたりと、壮大な技を繰り出してきた。
 それが、科学をもってそれが現実化した。キングが赤の少女から奪取した『ドラゴンキラー』の大剣から、武器の構成を徹底的に調べあげ再現する為、努力にあたった。その初代作品が能力を一定期間保存し、ボタン操作により能力を行使するものだった。しかし、ボタン操作の為、単純な能力操作に限られ、また能力を長期間記憶することはできなかった。莫大な情報量上、能力を行使するとメモリーが吹っ飛んだり、高度な能力は保存すら出来ないという欠陥だらけだった。それでも、試作品の誕生により、ようやく男でも能力が使えるようになったことに、世界的に大ニュースとなったわけだ。
 そして、今。これ以上にない大ニュースが発表されようとしていた。

ガシャッ

そこに、変な音が聞こえた。全員が後方を見ると、そこには鎧武者がいた。
「な、なんだあれは・・・・」


そこからは祭ごと。赤い花火をあげながら……



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 パンッ、パンッ
空高く空砲が鳴り響く。
時と場所はかわり、ここは学校。
 「不可逆的反応とは、化学反応に正反応がおき、逆反応がおきないことを意味します。つまり、変化したものに対してもどには戻らないということです。
 人間は常に進化していきます。それは、他の生物にも言えて、環境の変化と共にその体質は変化をとげます。
 進化したものがもとに戻ることを退化と言い、生物学的に、生き物は進化はするが退化はしないとされています。これを不可逆的反応と比べると、物質に不可逆と可逆がある場合、物質の変化による不可逆は進化ととらえることができるのではないでしょうか?
 科学者と、生物学の視点は違う為、生物外のみに使われる専門用語を他の分野にとりいれ立証するべきだと私は考えます」
これは学生の学習発表会の場であった。



 時は30XX年。世界は滅びを間逃れ、今に至る。
 場所は東京のどこかの学校。現在、学園祭が開かれ、体育館では文化部による学習発表会が開かれており、外ではお祭りのように屋台が並ぶ。
 捕捉すると、過去の2000年代と違い、価値観が大きく変わる。例えば、学習発表にあった生物に退化はないという説の確定は2000年代にはまだ不完全であった。それも、退化ではないという正論の確証はその後となる。
 もっと分かりやすく言うと、物理の不可逆は生物の進化とイコールであると。対象は違うが、新しい立証方を考える上では斬新さを訴えているのだろう。
 勿論、学生の戯言。何を言おうと自由である。故に、大人が口を出す分野ではないだろう。
「いやぁ~、この丸くて熱々でホクホクの美味しいやつは何だ?」
「これは人間の言葉で、たこ焼きと呼ぶらしいです」
「ほぉ~、たこ焼き」
丸いものを凝視する、体格が丸めの少女と小さなメイド服を着た少女が、テント通りを歩いていた。
「ねぇ、お金貸してくれない?」
「いや……その、私お金なくて」
「はぁ?貸してって言ったのが聞こえないの?」
「だ、だから今お金ないって・・・・」
「あんた、私に口出すわけか」
屋台から外れた場所の奥、少しギャルっぽい少女がもう一人の気の弱そうな子にたかっていた。
「これだから人間は醜い」
「ですね」
「ベルン、誰か来ないか見張ってなさい」
「よろしいのですか?巫女様がまだ手を出すなと言われていますが」
「構わないわ。一人行方不明になるだけよ」
「分かりました」
「ではよろしく頼むわ」
そう言って、たこ焼きをいっぺんにほおばった後、この場をあとに、揉めている少女らへと足を進めた。
「ほら、あるじゃないの」
「そ、それは駄目!クラス皆のお金なの。屋台の買い出しに使うから」
「な~に、少し貰うだけよ。大丈夫、バレやしない。まぁでも、もしバレたらあんたのせいってことで。私のこと言ったら殺すから」
ドシッ、ドシッ。
重い足音と共にあらわれる、巨体。
「あらあら、度胸もない人間が。殺すと言うなら殺される覚悟があって言ってるのか、人間よ」
「な、なによ」
「ほら、行きなさい」
いつの間にか、お金を取り返したのを気の弱そうな子に渡す。
「あ、すいません」
「何故、謝るんだ人間よ。そこはお礼ではないのか」
「あ、あの・・・・すいません」
「おい、なんだよデブ。何やったか知らねぇけど、邪魔しやがって」
「デブ・・・・」
「は?そうだろ、デブ。それかブタだったか?」
それを言われ、怒りに満ちたデブ・・・・ではなく少女は、顔をだんだん赤くし、そして周囲の外気を熱くした。
「な、なんだよこいつ」
「やはり、口の悪い人間を黙らせるにはこの手が一番」
巨体な女はドスッ、ドスッと口の悪い学生にどんどん近寄る。
「おい、来んな。デブが近寄ると熱いんだよ。それに、・・・・」
既に巨体は、大きな口を開けていた。
「あ」

パクっ


信じられない口に、先程の少女は呑み込まれ、食われた。その光景を見ていた少女は何も言えず、口をぽっかり開けて腰を落としていた。ポツポツと雨が降り始めたが、腰がぬけて立てなかった。
「大丈夫ですよ。あなたには用がありますから。巫女様にお会いしてもらいます」
 メイド服を着た少女が傘を差し出してきた。



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「きゃあぁーー」
「降ってきたぁー」
突然の雨に、外にいた生徒達は中へと急いだ。
「うわぁー濡れた~」
「ねぇ、ホタルちゃん知らない?」
「えっ?戻ってないの」
「でもこんな雨じゃ、流石に外にいないんじゃないの?」
「それが買い出しに出たっきりなの」
「警報でてるよ。大丈夫かな」
「私、行くよ」
「真紀ちゃん!?」
「大丈夫だよ。ちょっと迎えいくだけ」
「でも・・・・」
「同じクラスメイトだし、心配じゃん」
「・・・・うん」
「じゃあ行ってくる」
真紀は傘を手に、どしゃ降りの雨の中を進もうとした。
「真紀ちゃん」
「ん?」
「気をつけてね」
「うん」
そう言って、駆け足で雨の中を突っ切った。
 真紀ちゃんなら大丈夫。でも、なんだろう。胸の中がざわざわする。

真紀ちゃん・・・・



                              +  +  +


 雨が激しくふるなか、人通りが少なくなった道の真ん中に、奴はいた。

「この世界は偽りか?」

最初の発声の質問にしては意味が不明。しかし、その意味に答えは無用だった。

奴は日本式兜を被り、鞘を腰に吊るして刀を手に構えていた。
 その目の前に唖然とする真紀。
「な、なんだよこいつ」
現状を理解する時間はなかった。考えている時間はなかった。何故なら、奴は考える時間を与えずに襲ってきたからだ。奴は兜も鎧も刀も持たない少女に刀を持って襲ってきたのだ。奴は足に力を入れ、地面を強く踏み込み、蹴った。
「水刀」
真紀は、青の少女が使っていた水の能力を使い、水を刀のように変形させ、形をつくった。
「毒刀」
更に、水刀を強化し緑の少女が持つ毒を操る能力で、水刀に毒を混ぜる。
 だが、それだけでは不十分だ。鎧兜に水の刀であろうと、毒を混ぜようと、鎧兜に傷はつけられない。
「闇刀」
紫の少女が持つ闇を操る能力。一瞬にして、青かった刀は、緑になり、そして紫に変色した。
「おりゃああぁぁーーーーーー」

カキーンッ!


刀と刀の激しいぶつかり音は、辺りを響かせた。だが、真紀は強化した刀に更に能力を上乗せする。


パリッ


鎧兜の刀にヒビが徐々に広がっていく。そして、決め手に真紀は鎧兜の奴を、鎧ではなくその内側にいる奴に集中をかけた。



ーーーーーー!


突然、鎧兜の奴は崩れ落ち、膝に地面をつけた。


真紀は破壊の能力を鎧兜の内側に発動したのだ。
「やったか?」


ガシャッ


「!」
鎧兜は、鎧の音をカシャカシャとたてながら、再び立ち上がり、兜のさきの目が赤く光る。


プシューー


白い吐息を出しながら、威圧感を放つ武人。
「か、勝てない・・・・」
今まで相手をしてきたどの少女とも違う、そうまるで強者であり恐者である。
「こわい・・・・」
初めての感情。何も手が出せないこの感覚。
手に力が入らない・・・・


ピカーッ、ゴロゴロゴロ……


雷鳴と雷の光に照される武人。

「そなたに問おう。そなたは武人か」

突然の質問。真紀は戸惑いながら答える。
「わたしは・・・・私は真紀。人を探している。あなたは誰?」
 しかし、人に聞いておきながら、武人は答えなかった。変わりにかえってきたのは

プシューー

白い吐息と、やる気だった。
武人はまだ続ける気であった。
「冗談でしょ……」
再び刀を構える武人相手に真紀は、一つの策を頭の中に講じていた。


 武人相手に、ましてや刀の達人相手ではど素人が、勝てるはずがない。それに、あの鎧にしても、刀にしても、少女の能力を直に受けて、刃こぼれや、傷一つつけられていないからにして、あれは普通の武具ではない。なら、ここは大きな技で一発与えて、その隙にこの場を立ち去る他ない。


「   北の業火・スルト   」


地獄の炎が鎧武者を襲い、大胆に爆発をおこす。辺りが燃え盛る炎の中、真紀は急いで走る。
「多分、あれでも死なないんだろうな・・・・」

ヒューーッ

「どうしよう、結局あの子見つからなかったな」

ヒューー……グサッ!

風をきり、鋭い刃が真紀の背中から突き刺さり、腹に風穴をあけて、その刃が血を一緒に吹き出しながらあらわれた。

「うっ…………」

「辛いか、そなたよ」

「…………」

気を失った真紀に、鎧武者は真紀の体から刀を抜き取った。
 だらだらと出てくる血を眺め、武人は消えていった。


その後、鳴り響くサイレン音の中、病院に運ばれたと、山吹に一報が入るのは、約2時間後のことだった。


                                  +  +  +


 とある病院、とある病室。
大人しくベッドで眠る真紀の横に、椅子に腰掛け心配する真紀がいた。
「真紀ちゃん・・・・」
私も、真紀ちゃん一人で行かせないで一緒に行けば良かったと後悔した。が、真紀ちゃんですら勝てなかった相手に、私がいたところで状況が変わるとは思えなかった。
 結局のところ、行方不明になったホタルとか言う女の子は帰ってこず、警察にまかせることになった。


チャイム音が鳴った。


時計を見て、5時だと確認する。
「真紀ちゃん、そろそろ私帰るね」
そう言って、身支度を済ませ、病室を出た。



                                 +  +  +


 雨はすっかりやみ、夕映えが美しい光景になっていた。
「この光景見ながら、真紀ちゃんと一緒に帰りたかったな・・・・」

「それは無理な話しですね」

突然の声に、背後を振り向く。
「誰?」
そこにいたのはメイド服の少女と、現在行方不明のクラスメイト、ホタルだった。
「あなたは・・・・どうしてここにあなたが?」
「彼女は、私達の協力者です。用があり、私達と共に行動してもらっています」
「そうならそうと、何故連絡を入れなかったの!あなたのせいで真紀は・・・・」
「うっ・・・・」
山吹とホタルの間に直ぐ様、メイドが入った。
「御悔やみ察します。ですが、ホタルさんには連絡を入れないよう我々がお願いしたのです」
「連絡を入れるとまずいことなの?」
「そこは察っして欲しいです」
「まさか…………色ありの少女!?」
「はい。ですが、ホタルさんを責めないでください。我々にはホタルさんのお力が必要ですから」
「我々って、他にもいるの?」
「はい、おります。ですので妙な真似はしないでくださいね」
「その色ありの少女、トリニティが何の用なの?」
「あなたにも、我々と共に行動してもらいます。あなたには巫女様にお会いしてもらいます」
「巫女様?」
「あなたの産みの親です」
「えっ?産みの親!?」
「あなたも、我々と同じく色ありの少女。そして、こちら側の人間ですよ」
「そ、そんなの嘘よ!」
「いいえ、嘘ではありません。それでも嘘だとおっしゃるなら、あなたの産みの親は誰ですか?家族はいますか?」
その質問には答えられなかった。山吹は知らなかった。
 水口教官が引き取り、世話をしたというのは聞いている。しかし、産みの親が誰かなんて話は聞かなかった。水口教官が引き取ったと言うから、自分は捨てられたのかと思っていた。
「わからない・・・・」
「分からないのは、恥じることではありません。例え自身のことであろうと」
メイド服の少女はそう言った。そして、決め手に
「さぁ、行きましょう。理由なんて関係ありません。我々と共に行くのです、山吹色の少女よ」
山吹はその言葉に大きく反応した。そして、手を差しのべるメイド服の彼女の手を、とってしまった。




                               +  +  +



 「ククッ、さぁリベンジといきましょうかクマ」
都市部のいっかくのビル屋上で、辺りを見渡す全身クマのキグルミを着た紺色の少女と、パペットのベアがいた。



                                +  +  +


 「一昨日、女子学生が狙われた事件が発生しました。同じく昨日には同じ学校で行方不明者がでています。
 また、その前から同じクラスメイトの子が2人行方不明となっており、警察は今回の一件は何かしらの因果関係があるとみて捜査を進めております。
 続いてのニュースですーーー」
流れてくるニュースはどれも暗く、続いてのニュースは高齢者のひき逃げ事故についてだった。
「全く、技術開発局Wチームの発表会場の襲撃、学生の行方不明、学生の謎の負傷……いったい何がおこってるんだ。東がいなくなった途端にこれだ。東なら、どうするのかな…………」
キャプラは、官邸で茶を飲みながらテレビを見ていた。

コン、コン

「はい、どうぞ」
「失礼します」
首相の秘書、さくらが訪室した。
「首相、真紀さんが先程病室で目覚めたようです」
「そうか、良かった」
「それより、真紀さんが目覚めた時に話された件なんですが」
「まさか、襲った犯人を見たのか」
「えぇ。と言うより戦ったみたいですが。それよりその犯人なんですが、発表会場の襲撃犯と同一人物でした」
「鎧武者か」
「はい。手も足もでなかったそうで。何よりあの鎧はかなり強度とか。内側に向けた技も受け止めたことから、鎧無しでも頑丈かと」
「それは驚いた。確かに、あの会場の防犯カメラからしてかなりの強者に見えた。確かに強い。だが、そこまで頑丈となると不死身にしか思えないが」
「あの鎧、やはり色ありの少女が使う武器の対、防具でしょうか」
「可能性あるね。しかも、奴が持つ刀も恐らくね」
「どのように対処するんですか」
「それより、かしこまるのお互いそろそろやめないか」
「え~、お兄ちゃんから言ってきたのに!」
「わりぃ、やっぱ慣れないわ」



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 とある病室。
「どういうこと、ふきちゃんが行方不明って」
「そういわれても、ねぇー?」
「うん。真紀ちゃんのお見舞いに行くって言ったっきり、女子寮に帰って来てないんだよ」
真紀は、クラスメイトから山吹の失踪を聞かされていた。
「私、探しに行かなくちゃ!」
「や、まずいって。そのからだじゃ、無理だよ」
「そうだよ、やめた方がいいよ。病院の先生にも怒られるよ。真紀さんは絶対安静なんだから」
私はそれが嫌だった。絶対安静なんて、友達の危機にできるわけない。こっちが無理。
「あっ!」
「いっちゃった。でも、まずいよ。傷口開いたりしたら、監視役に任命した水口教官から、かなり怒られるんじゃない?」
「それ、マジ観念だわ。本当、迷惑」



 知っていた。ふきちゃん以外、私とはあまり親しくしない。嫉妬か、敵意か、私が色ありの少女であることが気に入らないらしい。無色。どの色にも属せず、どの色にも縛られず、どの色にもなれる、そんな色である。
 だから、私にとって一番大事で、大切なふきちゃんを助けるのが私の役目である。ふきちゃんが私を心配したように、私もふきちゃんを心配する。恐らく何かあったであろうふきちゃんをさりげない、何気無い顔で、助ける。
 それが私の大役だ。


ズドーーンッ


街が破壊される音。良く見ると、そこにはクマの巨体がビルとビルの間から顔を出していた。
「ベア・・・・」
どうやら近くにベアの主人、クマベラがいるらしい。当然、緊急出動したヘリのモーター音が聞こえる。恐らく、能力者の特別部隊だろう。
「あっちは大丈夫だね」
真紀は、そのまま山吹の捜索を続行した。



                                 +  +  +


「街が・・・・」
ベアによって街が破壊されていくのを、ただ遠くで眺めることしかできないでいた。
「忘れたのですか?我々は守るのではなく、街を破壊することだと」
「でも・・・・」
「巫女様の命令ですよ」
巫女様、その名に山吹は何もかえせなかった。メイド服の少女は、山吹の母だと答えたが、今更あらわれて、あなたはこっち側の人間だから、街を破壊しろと言われても、混乱するだけだった。
「おや、あれはあなたが言う友達ではないですか?」
「えっ?」
山吹は、辺りを見渡す。すると、真紀の姿が見えた。
「真紀ちゃん!?」
あっ・・・・私を探しているんだ。私のせいで・・・・
「山吹すずら、時間です。我々も行きますよ」
メイド服の少女に誘われ、山吹は山吹を探す真紀を背後に、その場を去った。



                                  +  +  +


 奴はそこにいた。突然、広い道に霧があらわれ、霧の中から奴は姿を見せた。
「この時を待ちわびた」

ガシャ、ガシャ

鎧武者は、腰にある鞘から刀を抜き、刃の先を真紀に向けた。
「邪魔!今、お前の相手してる場合じゃない」
しかし、鎧武者は問答無用で襲いかかってきた。
「闇刀」
真紀は右手に紫色に輝く刀を出した。

カキーーン!

刃と刃がぶつかる。キチキチと刃同士の擦れる音が聞こえる。しかし、鎧武者の方が力はあった。おされていく真紀は、とっさに刃を離し、鎧武者の刃は空振りし、前に力を失いバランスを崩す鎧武者の腸に蹴りを入れた。
 真紀は鎧武者から、距離をとる。鎧武者はというと、体勢を戻し再び刀を構えていた。
「お侍さんは、実はストーカーでしつこい人だったりするのか」
真紀は皮肉を言って、その後闇刀を手から離した。
「?」
兜をかぶり、顔が見えなくても分かる。奴は先程の行動に疑問をもった。
「おあいにく様、私は武人相手に刀で挑もうとは思っていない。前回のでかなり学習したわけよ。まぁ、ふきちゃんなら怒るかもね。学習するの遅いって。だから、他の子相手だったらあなたは負けてたよ、お侍さん」
すると、今のが挑発であると分からず激怒した鎧武者は、突然カパッと口が開いたかと思えば、そこからもう一本の刀を出してきた。
「お前はピエロか」
と、ツッコミをとりあえずいれとく。
「右に『童子切安綱』、左に『宗三左文字』。いざ、参る」
今度は二刀流で襲いかかる奴に、真紀は応戦の構えをとった。

「赤!」

真紀は色を唱えた。すると、空中辺りに赤いペンキが飛び散った。

「燃えろ」

真紀は指をピストルのようにつくり、そこから赤いペンキが集まり、

ドンッ!

重い銃声のように、指先から炎の弾丸が数発放たれた。

ドッドッドッドッ!

全弾命中。鎧は炎に包まれ、鎧武者は火だるまと化した。

ガシャ、ガシャ

しかし、火だるまはまだ動く。燃えてもなお、彼の野心は燃え尽きない。
「我は、敵が誰であろうと強者ならば、相手は選ばん」
「そっか。なら、私も武士の心にこたえよう!」
真紀は右手を出した。しかし、先程の闇刀や、水刀、毒刀とは全く別物であった。


「ピンク!」

パシャッ

ピンクのペンキが飛び散り、そこから刀へとかたちをつくる。そして、
「いでよ、召喚!ライ○セーバー」
ピンク色に光る刀を出した。ブーン、ブーンと音を出しながら。
「さぁ、round2といきますか!」
その宣言に、鎧武者は二刀を構え襲いかかってきた。

ブーン

しかし、鎧武者の両手はライ○セーバーによって焼き切られ、その場の地面にドサッと落ちた。そして、とどめに胸辺りにライ○セーバーを打ち込んだ。
「私にもフ○ースの才能あるのかな?」
なんて言いながら、倒れゆく敵を上から目線で見た。
「これが、女の復讐よ。女を怒らせると、ライ○セーバーで、大事なとこ焼き切るんだからね!」
そう言いながらも、敵が誰なのか知りたかった。
 真紀は、敵から兜を抜き取った。すると
「これは!?」




《次回に続く》
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