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ドラゴンを倒す数時間前

「ようこそ!ギルドへ。御用は何でしょうか?」
ギルド受付のお姉さんは優しく老人二人に挨拶した。
 そんな親切なお姉さんにババアは臭い口臭をぶちまけた。何の恨みがあるというのか!?お姉さんは涙目になる。しかし、ババアはそんなこと気にせず、致死量の毒ガスもどきを口から発しながら、用を話す。
「私たちは、ギルドへ登録しに来たんだよ」
「ギ、ギルド登録ですか?」
ババアとジジイは頷く。それを見てお姉さんは冗談だろ、と思っているはずだ。しかし、ガチだった。
 周りの冒険者もやめとけコールが殺到するも、二人の老人の耳には入らなかった。何せ二人は、かなり耳が遠いので、周りのガヤが聞こえていなかった。
「で、では、ギルド登録にはいくつかの書類が必要になってきます。まず、身分証のご提示をお願いします」
そう言われたが、さっばり分からないジジイは
「身分証?」
と首をかしげる。すると、ババアが
「住民票が必要なんだよ、じいさん」
「あぁ、成る程。住民票のことか。で、その住民票発行には、何処に行けばいいんじゃ?」
「お姉さん、市役所はどこかい?」
「住民票?し、市役所?私には何のことか分かりませんが、身分証は名前と年齢が分かれば構いません。別に口頭でおっしゃっても構いませんが」
そう言われ、ジジイはポンと手を叩く。
「なんじゃ、そうなのか。ならそう言って欲しかったのう。わしはガイン、歳は104じゃ」
「104っ!?」
「ワハハハ、生きた化石と言われてるわい。因みに、婆さんはわしと同い年じゃ」
「104が二人!?」
「わしも婆さんも、年金だけじゃ生活するのも苦しくてな、だから出稼ぎに来たら、誰でも登録可能で仕事がもらえるこのギルドを見つけたってわけよ」
「はぁ・・・・」
「じゃから、婆さんと一緒にギルド登録しに来たわけよ。聞くところによると、なんいど?とか言うやつによっては高い報酬があるとか。きゅうきょく?とか言うのは、報酬が100万貰えるんだろ?年寄りが100万手にするなんて、今更必要もないんだが、どうせなら稼ぎまくって婆さんと旅行にでも行こうかと思ったんだけど、わしは海外の言葉が分からんでな、どうしたらええか、ぐーぐる?とかで調べたわけよ。そしたら、英語教室なんてのがあるらしいんだが、知ってるか?昔は無かったが、今じゃ色々な習い事があってよ、ばれりーなやろっくくらいみんぐとか、あとーー」
話し長いよ、何の話しだったか分かんないじゃん!
「じいさん、もういいだろ。お姉さん困ってるじゃないか」
そして、あんたの口臭くさいよ。喋るなババア・・・・と、心の中で思うお姉さん。
「で、では、登録がすみましたので、あちらの掲示板から御依頼を選んで、こちら受付にもって来てくだされば、今日からでも依頼を受けることは可能になります。
 因みに、依頼の難易度についての説明はギルド登録カードの裏に記載されておりますので、必ず御確認下さい」
そう言って、お姉さんは二人に登録書(兼、登録カード)を渡した。
「おぉ、これでわしらもはれてギルドメンバーか」
「じいさんや、早速掲示板とやらの所へ行こうや」
「おぅ、そうだな。姉ちゃんや、あんがとな。あと、おっぱいが大きくてえぇのぉ」
「じいさんや、エッチな目をしてないで、はよう行かんか」
「はいはい、婆さんはせっかちだな」
そう言いながら、二人は掲示板に向かった。



 一言いうなら、最悪な客だった。 しかし、更に最悪がおきる。
 さっきまで掲示板にいた二人だったが、目を離した隙に消えていた。少し気にはなったので辺りを見回そうとした時、
ムニュ
両胸に違和感が・・・・、恐る恐る振り向くと、さっきまでの男の老人が、受付嬢の両胸を両手いっぱいに揉んでいた。
「きゃああぁぁーーーーーー!」
思いっきり、スケベジジイの頬に平手打ちをくらわした。
「ぶへっ」
今ので歯が一本抜けたが、入れ歯だったので気にしなかった。
「じいさんや、変態もほどほどにしな。それより、お姉さんや、この依頼を受けようと思う」
依頼の紙を受付嬢に出した。それを受け取り見ると、そこには『ドラゴン討伐・報酬140万・難易度【究極】』と書かれていた。
「あ、あの・・・これは?」
「いや、報酬の一番高いのを選んだだけだが」
「いや、お婆さん。この依頼は流石にお婆さんでは無理かと」
「なに?依頼を受けるのに、制限やルールがあったかのう?」
「いえ、ありませんが。この依頼、ドラゴン討伐ですよ」
「知っておるが。そこに書いてあろう。わしだって、字くらい読める」
「いえ、そういう意味では・・・・」
「なに、任せなさい。この魔法老女の魔法にかかれば、世界を滅ぼすのも簡単じゃ」
「そうですか・・・・、では依頼を受けるということで受理します。ご武運を」
 本来は止めるべき依頼だが、この老人がしつこいので、仕方がなかったということにしとこう。
「では、行ってらっしゃいませ」
二度と帰って来るなと念じる受付嬢を背後に、老人二人はドラゴン討伐に向かった。
 誰もが帰って来るはずがないと、誰もが思った。勿論、受付嬢含めて。



しかし、戻って来た。無傷で、しかもドラゴンの一部を切り落とし、見せてきた。
「嘘っ・・・・・」


続く
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