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叶わぬ恋も叶えてみせて
1 プロローグ
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「なぁ、由里子。僕は君の素敵な旦那さんになれただろうか」
[叶わぬ恋も叶えてみせて]
青く広がる雲ひとつない空をアネムは、手で目元を軽く覆いながら見上げる。手の隙間からは光が入り、彼女の目がキラキラと光っている。職場体験ウィークの1日目の朝。先生から頼まれた地上の人達からの手紙を期待と不安を詰め込んだ茶色い肩掛けの鞄にしまう。そして、くしゃくしゃになっている宛先のメモ用紙を広げ、制服のポケットから取り出した。学校から離れ、街の中心にある広場までやってくると、小さな虹がかかる噴水の横にある茶色のベンチに腰掛けた。
「ええっと…1人目は…」
アネムは地面につかない足を前後に揺らし、鼻歌を歌いながら一通目の手紙を確認する。
———愛する夫 貴仁さんへ
アネムは文字を見て、ニコッと笑うと、住所が書かれたメモ用紙と手紙を照らし合わせた。すると、宛先の文字と手紙の文字が青く光りはじめ、文字が浮かび上がってくる。
「よし!ここで合ってる。さっそく行こ~!」
アネムはピョンっとベンチから降りると、うさぎのようなスキップで目的地へと向かい始めた。
広場を抜け、住宅街にやってくると、アネムは地図を指でなぞりながら一軒一軒、家を確認していた。そして、小さな足が動きを止めた。
「あった~!!」
幼い指差す先は、大きな家々に挟まれた小さな平屋だ。外には何かのキャラクターであろうオブジェクトが立っているようだ。家自体は至ってシンプルだが、どこかしこに特徴的な動物の置物が置かれている。
「可愛い~!お花の冠を被ったうさちゃんだ!あれ…?でもうさぎさんの耳ってもっと長かった様なぁ…」
アネムは首を傾げながら、じーっとそのお着物を観察する。すると、アネムの後ろに大きな影が近づいて来た。
「おや?これはこれは。こんなに可愛らしいお嬢さんが、私の家に何かご用かな?」
アネムは包容力のある優しい声に気づき、ハッと後ろを振り向く。すると、そこには柔らかな笑みを浮かべる白髪混じりのお爺さんが立っていた。質素な身なりをしているが、腕を見れば、高そうな時計をしている。そんなお爺さんがこの家の者だと気づいたアネムは、慌てて置物から離れ、勢いよく頭を下げた。
「あわわ!ごめんなさいッ!私、この置物が可愛くてつい…」
「あぁ、良いんじゃよ。そんな頭を下げんでも。こんな可愛いお嬢さんに気に入ってもらって、フラワーラビーもさぞ嬉しそうにしているはずじゃ」
『フラワーラビー』という聞き慣れない単語に、はてなマークを浮かべているアネムを見たお爺さんは、その置物をそっと手で包み、ゆっくりと持ち上げた。
「この子の名前じゃ。私の友人であり、恋人であり、相棒でもある。そして私がこの子の生みの親でもある」
アネムはポカンと口を開けてお爺さんを見つめる。その様子を見て、はっはっはっと笑うお爺さんはどこか満足げに「私がこの子の作った事が意外だったかな?」とアネムの頭を撫でた。
「い、いえ!そんな事ありません!ただそのてっきり…女の人が作ったのかと思ってました…」
申し訳なさそうに見つめてくるアネムにお爺さんは優しく話しかける。
「よく言われる事じゃ。別に気にしてはおらんよ。それより…」
そのお爺さんは帽子の真ん中に記されている紋章を見ると、何か納得したように顎に手を当てた。
「もしかして、私にお届け物かな?」
お爺さんはアネムの鞄を指差す。アネムは「そうだった!」と茶色い鞄から一通のピンクの封筒を取り出した。そして、帽子の唾をぎゅっと掴むと、アネムは大きな声で元気よく言った。
「貴仁さん!貴方にお届け物です!」
[叶わぬ恋も叶えてみせて]
青く広がる雲ひとつない空をアネムは、手で目元を軽く覆いながら見上げる。手の隙間からは光が入り、彼女の目がキラキラと光っている。職場体験ウィークの1日目の朝。先生から頼まれた地上の人達からの手紙を期待と不安を詰め込んだ茶色い肩掛けの鞄にしまう。そして、くしゃくしゃになっている宛先のメモ用紙を広げ、制服のポケットから取り出した。学校から離れ、街の中心にある広場までやってくると、小さな虹がかかる噴水の横にある茶色のベンチに腰掛けた。
「ええっと…1人目は…」
アネムは地面につかない足を前後に揺らし、鼻歌を歌いながら一通目の手紙を確認する。
———愛する夫 貴仁さんへ
アネムは文字を見て、ニコッと笑うと、住所が書かれたメモ用紙と手紙を照らし合わせた。すると、宛先の文字と手紙の文字が青く光りはじめ、文字が浮かび上がってくる。
「よし!ここで合ってる。さっそく行こ~!」
アネムはピョンっとベンチから降りると、うさぎのようなスキップで目的地へと向かい始めた。
広場を抜け、住宅街にやってくると、アネムは地図を指でなぞりながら一軒一軒、家を確認していた。そして、小さな足が動きを止めた。
「あった~!!」
幼い指差す先は、大きな家々に挟まれた小さな平屋だ。外には何かのキャラクターであろうオブジェクトが立っているようだ。家自体は至ってシンプルだが、どこかしこに特徴的な動物の置物が置かれている。
「可愛い~!お花の冠を被ったうさちゃんだ!あれ…?でもうさぎさんの耳ってもっと長かった様なぁ…」
アネムは首を傾げながら、じーっとそのお着物を観察する。すると、アネムの後ろに大きな影が近づいて来た。
「おや?これはこれは。こんなに可愛らしいお嬢さんが、私の家に何かご用かな?」
アネムは包容力のある優しい声に気づき、ハッと後ろを振り向く。すると、そこには柔らかな笑みを浮かべる白髪混じりのお爺さんが立っていた。質素な身なりをしているが、腕を見れば、高そうな時計をしている。そんなお爺さんがこの家の者だと気づいたアネムは、慌てて置物から離れ、勢いよく頭を下げた。
「あわわ!ごめんなさいッ!私、この置物が可愛くてつい…」
「あぁ、良いんじゃよ。そんな頭を下げんでも。こんな可愛いお嬢さんに気に入ってもらって、フラワーラビーもさぞ嬉しそうにしているはずじゃ」
『フラワーラビー』という聞き慣れない単語に、はてなマークを浮かべているアネムを見たお爺さんは、その置物をそっと手で包み、ゆっくりと持ち上げた。
「この子の名前じゃ。私の友人であり、恋人であり、相棒でもある。そして私がこの子の生みの親でもある」
アネムはポカンと口を開けてお爺さんを見つめる。その様子を見て、はっはっはっと笑うお爺さんはどこか満足げに「私がこの子の作った事が意外だったかな?」とアネムの頭を撫でた。
「い、いえ!そんな事ありません!ただそのてっきり…女の人が作ったのかと思ってました…」
申し訳なさそうに見つめてくるアネムにお爺さんは優しく話しかける。
「よく言われる事じゃ。別に気にしてはおらんよ。それより…」
そのお爺さんは帽子の真ん中に記されている紋章を見ると、何か納得したように顎に手を当てた。
「もしかして、私にお届け物かな?」
お爺さんはアネムの鞄を指差す。アネムは「そうだった!」と茶色い鞄から一通のピンクの封筒を取り出した。そして、帽子の唾をぎゅっと掴むと、アネムは大きな声で元気よく言った。
「貴仁さん!貴方にお届け物です!」
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