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第10章 決戦前

第112話 シャルティ様の目

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===リリ視点========================

「「「はい?」」」

 私とルル、師匠も揃って戸惑ってしまいます。
 シャルティ様が言い出した事もまだ処理出来ていないのに、またややこしそうな人達が………。

「先程はまさかあの有名な『全能の大英雄』様とはつゆ知らず、とんだご無礼を働いた事をお詫び申し上げます」
「そして、厚かましいとお思いでしょうが、我々も一ファンとして、貴方様のご活躍を側で見届けたいと思っている所存です」

 初めて見た時から仲の悪そうなグレース様とエンフィート様がとても息の合ったようにお願いしてきました。

 まあ、確かに師匠を初めて見たんだとしたら、こうなるのも頷けます。……私もきっとそうすると思いますし……。 

「………もうやめて……」

 師匠は嬉しいのか、天井を見ながら遠い目をしています。

 このまま師匠に任せた方が良いと思うけど、私だって師匠の弟子だし、何より師匠のビックファンだと自負している程、師匠に会うより前から師匠の事をいっぱい調べたんだ!こんなにわかファンなんてイチコロにしてやります!!

「なら!テストをします!!第1問!師匠が使う『魔導』の最大の特徴は!?」
「当時の魔法のレベルを遥かに超えた魔法!!」
「現在も無い魔法!!」
「ブッブー!!」

 何ですか、このレベルは?これでファンとか笑わせてくれますね!?

「正解は、魔法とは思えない程の現象を引き起こしながらも、魔法にギリギリ分類出来る事、でした!!」
「「なるほど!!」」
「おい待て、何でそんな事を知ってるんだ?」

 師匠が私の肩を掴んで聞いてきましたけど、ルルに片手で師匠の手を退かすように指示して、ルルがその通りに師匠の手を退かして私から遠ざけてくれる。

 さあ、まだまだこれからです!!

「第2問!当時、師匠が使う『殲滅武術』は一体どこまで出来ていた?」
「海を斬る!」「大陸を割る!」
「惜しい!正解は当時一番高かった山の頂上からその大地を割った、でした!!」
「「あ、そう言えば!!」」
「だから何でそれを知ってんだよ~!!」

 師匠の泣きそうな叫びを無視して、次の問題に移りました………。






「………もう無理、死ぬ……」

 全10問、師匠に関する問題を終え、一問も正解を言えなかった事にショックを受けているにわかファン達と不貞腐れたように目を閉じて外を見ているシャルティ様、そして、何故かこの世の終わりのような顔になっている師匠。

「……?師匠、どうしたんですか?あ、もしかして、私が出した問題に間違いが……?」
「……無いから逆に辛い………」

 師匠はそう言い残し、椅子に座って顔を机に突っ伏して静かになりました。

「………もう良いですか?」

 静かになった部屋の中で少し寂しそうな声でシャルティ様が私達を目は開いていませんが、正面に見据えて来ました。

「……貴方なら師匠がなんて返事するのか分かると思いますが……」
「………ええ、分かりますよ。ただし、2つのパターンが見えますが」

 シャルティ様が言った2つのパターンという言葉に思わず眉を寄せてしまいます。

 だって、シャルティ様は私達と会った時は2つのパターンだなんて一言も言わず、1つの結果しか見えていなかったような事ばかり言っていました。

「……恐らく、『全能の大英雄』様の変化と……敵勢力の変化だと思います」

 私が理由を尋ねる前にシャルティ様は答えてくれました。

 敵勢力……。それは『神の強欲ゴットグリード』の事を言っているのでしょう。だけど、それを知っていたところで危険な事には変わりありません。

「…申し訳ありませんが、シャルティ様を連れて行く事は出来ません」
「……そうですか……。あなたが返事をするのは見えていたんですけど、結果までは見ないでおいたので、期待したんですけどね………」

 シャルティ様は自身の『ソウルウェポン』をトントンと地面に2回、鳴るように突く。
 すると、今まで光もしなかったシャルティ様の『ソウルウェポン』の先端に浮かんでいた透明な球体が色を帯び始めました。

 そして、数分後には丁度真ん中辺りを境に真っ黒で溶岩のような赤色がところどころ血管のように張り巡らされている絶望と破壊を表しているような片面と神々しい程光輝いていて、ところどころに羽が舞っている綺麗で幻想的な片面。

「……私が見れる未来は今、2つあって、片方は世界の崩壊、片方は世界が崩壊を免れ、これからも続いていくという未来。どれらも実現してしまう可能性があるので、それらを左右するのがあなた達だと思うんです」

 シャルティ様は色を帯びた球体を元の透明に戻しながら、目を開けました。
 その目は神の目のような神々しい白が輝いていて、私がリルになった時とほとんど同じでした。

「…この際、告白します。私は神と人間の間の子供なんです」
「………え?」「…………」

 あまりにも衝撃的な告白に、私は反射的に口が開き、ルルに至っては口が開いているのに、一言も喋る事なくピクリともしません。

「……やっぱり驚きますよね」

 シャルティ様は目を閉じ、少し何かを決意したように、自分のほっぺを軽く両手で叩くと、話し始めました。

「私の母親は普通の人間でした。ですが、父親はこの世界に落ちた神だったらしいんです。そして、神とは知らずに母は父と結婚し、私を産みました」

「そして、私の目を見て、父の正体を悟ってしまった母は父を国に訴え、父を処刑しました。……まあ、私が聞いたのはここまでなんですけど……」

 シャルティ様は別に父親の事を悲しむ感じも母親を責めるような感じもありません。普通なら、神とはいえ、父親の事は気にするべきだと思うんですけど……。

「私の父は未来を予知する力があったみたいで、それが私に遺伝した事を考えると、感謝はしてますが、別に父の事は何とも思ってないんです」

「母の事もです。私には感情というか、愛情を知らないんで、別に家族という意識はなかったんです。まあ、そんな私の話は置いといて……」

 え?ここまで話しておいて置いとくの?それはそれで気になるというか、気にしちゃうんですけど………。

「こういうのも上に立つ上で必要なテクニックなんですよ?」

 シャルティ様は悪女というよりは小悪魔のように笑います。

「私が言いたいのは、私は神に少なからず関係のある立場です。なら、私が神と人との戦争に立ち会うのはいけない事なんですか?」
「そ、それは………」

 確かに。そう言われたら断りにくいですよ……。

「本当にそれだけなのか?」

 いつの間にか復活していた師匠が、机から頭を離さず、顔を横にして聞いてきます。

「もうメンタルは大丈夫なんですか?」
「うっせ。それよりも、だ。あんたにとっては流れ弾全てが一撃必殺だそ?そんなところに無理に行く必要はない」

 師匠の言葉を聞いたシャルティ様は再び目を開き、師匠をしっかり見据えて口を開きました。

「私は神と人との間の存在として、という以前に私は『神の強欲ゴットグリード』がどうやって魔脈を利用するのかを知っていて、それを防ぐ手段を知っています」

 シャルティ様はとんでもない発言をしました………。


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