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第2章 勇者活動という名の雑用
第40話 肉ばっかり
しおりを挟む2人と出会ってから2日が経って街を出てから3日目。ついに街で買っておいた食料が底をついた。まあ、普通に考えれば倍の速度で無くなるのは当たり前だ。
因みにメサとメイカは昨日で漸くスキルを獲得した。俺の馬操縦適正とは違い、御者適正というスキルらしいが。
「で、どうします?」
「すみません!私たちが居るからこんな事に……!」
「メサちゃんたちが悪い訳じゃないから、どうするか決めよう?」
「そんなの、動物を捕まえて食べたら良いじゃない?」
みんなが当然思い付いていた事をメイカが言う。だが……
「誰も動物を解体出来ないんじゃーー」
「紅葉さんに教わったのはそこそこ前なんで自信は無いんですが、一応出来ますよ」
お嬢様が言おうとする前に俺が間に挟む。それを聞いてお嬢様は『早く言ってよ』と言いたげな顔になる。
「ですが、お嬢様はあんまり生き物を殺す事に抵抗があると思ったので…」
そう、お嬢様は昔から虫すら殺せないほど生き物の命を大切にしている。だから、冗談だとしてもメサにあんな事を言ったのは衝撃だった。
「でも、そうしないと生きられないじゃん」
お嬢様は当たり前のように言った。確かにその通りだが、悩んでいた俺が馬鹿らしく思えてしまう。俺の知らないうちに、お嬢様はもうこの世界に順応しているかもしれない。
「分かりました、では獲物を探して来ますので少々お待ちください」
「え~、私も一緒に行きたい~」
「昼食の時には同行して構いませんから、今回はお待ちください」
「……分かった」と少し不貞腐れた感じだったが、一応分かってくれたみたいだ。
「メサとメイカ、お嬢様の事頼んだぞ」
「はい、いってらっしゃいませ」「私は子供じゃな~い!!」
メサとお嬢様の声を聞いて、俺は近くの森へと足を踏み入れた………。
「しっかし、居るのは虫かさっきから来る魔物くらいだな」
俺は先程来た《ホーンラビット》という、普通のウサギの頭に鋭い角が生えた魔物を蹴り飛ばしながらボヤく。
予想はしていたが、やっぱり普通に魔物は出るみたいだな。それに、魔物は死ぬと魔石という石を残して後の体は蒸発してしまった。
あの博物館で見た魔物の剥製は動物の皮を魔物風にしたのか、もしくは何か特別な方法で体が蒸発するのを防いだのか。
まあ、魔石は換金出来るらしいから拾っておくけど、お嬢様がやった《ブリキアント》、あれを普通に倒していたら魔石が大量ゲット出来たんだろうな。お嬢様が魔石ごと消し炭にしたのは少しやり過ぎたのかもしれないと金銭面的に不安になって来た今だから思う。
「お、漸く見つけた。あれは…鹿か。血抜きとかをしっかりすれば美味しいんだよな……!」
右手に肘から肩くらいまでの長さがある針を作り出し、構える。狙うは頭、一瞬で仕留める。
俺は静かだが、充分な速度を持った針を投げ、針は鹿の耳の辺りに見事貫通した。
「あ、お帰り~。捕まえれた?」
「ええ、鹿を捕まえました」
お嬢様に見せるため、無限収納から鹿を取り出す。お嬢様は軽く黙祷をした後、鹿を見渡している。
メサとメイカも鹿……というより、無限収納を使った左手をジッと見ている。無限収納をスキルで取りたいのだろうが、多分無理だぞ。
「では、調理して来ますので適当に時間を潰しておいてください」
「じゃあ、お皿とか置いといて。並べておくから」
お嬢様は当然のように皿並べをしそうなので、机と椅子を作り出し、皿も無限収納から取り出した後にメサたちを見る。お前ら、お嬢様より先に並べろよ?
だが、俺の視線での訴えも虚しく、お嬢様は素早く皿を並べていく。もう仕方ない、さっさと調理しよ。
一応スキルとして持っておいた方がうまく出来るよな。
執事たる者、動物の解体程度、素早くこなせるべき!
スキル
・解体術 (執事たる者、解体程度の雑事はこなせるべき)
を獲得しました。
よし、さっさとやるか。あんまり生き物を解体するのは好きじゃないが、これが自然の摂理。栄養にさせていただきます。
朝から鹿肉を焼いて食べるという、なかなか重い朝食を終えて、今度は昼。昼ならどんな獲物でも大丈夫だろ。
「よ~し!初めての狩り!!」
馬車から降りた途端、凄く森に入りたそうにしているお嬢様を見ながら、馬を近くの木に停める。
「狩りなのかもしれませんが、魔物が出るので気をつけましょう」
「分かってるって~」
「私たちも行くんですか?」「あんまり魔物は倒せないわよ」
行く気満々なお嬢様と行く気が全くない2人を連れて森に入る。
歩いて1分も経っていない。予想はしていたが、俺たちに魔物が襲いかかって来た。
相手は鋭い口を持った針の無い赤ちゃん程度の大きさの蜂の姿をした魔物《ギロチンビー》だ。博物館で見た情報だと、クワガタのような口で人間を三等分にして巣に持ち帰るという、殺人蜂。
それを見たお嬢様は、
「キモい」
と言って、全身に炎を浴びせて倒した。魔石が落ち、俺がそれを回収して先に進む。
「あの《ギロチンビー》を一瞬で…」「普通じゃない…」
メサとメイカはお嬢様の魔法を初めて見た事もあって、かなり驚いていた。だが、お嬢様は狩りをするので頭がいっぱいのようで、聞こえていないようすで歩いている。
《ギロチンビー》はBランク冒険者以下なら複数で居る事が義務付けられている、危険な魔物だ。そんな魔物もすぐに燃えカスになったが。
「陸人、見つけても手出さないでね。私が捕まえたい」
「構いませんが、威力を調整してくださいね」
お嬢様の様子からして消し炭にしそうだったんだが、お嬢様は心外とも言いたげに頬を膨らませて俺を見てくる。そんな事に気を取られていたからか、お嬢様は2人に近づく《ギロチンビー》に気付いていなかった。
《ギロチンビー》は諸説あるらしいが、2匹1組で行動する場合が半々程度にあるらしい。それは多くの獲物を見つけた時に多く見られるらしい。
「危ない!」
右手にリボルバー型の片手銃を作り出し、《ギロチンビー》のこめかみらしきところと口に2発、撃ち込む。《ギロチンビー》は鳴き声も出す暇も無く、倒れた。
メサとメイカは《ギロチンビー》の羽音が良く聞こえる距離まで気付いていなかったらしく、振り返って腰を抜かしている。
「魔物はいつ襲ってくるか分からないんだから気をつけろよ?」
「「は、はい……」」
2人にそれだけ言って、後はお嬢様に任せる。背後から聞こえてくる声から察すると、お嬢様は2人に謝っているみたいだ。気付けなかった事にお嬢様が責任を感じるのは違うと思うけどな。
「お、イノシシ発見!」
「足止めしてて!」
話が終わったのかもよく知らないが、全力で走って来たお嬢様による雷を受けたイノシシは少し歩いて倒れた。
イノシシの肉は豚肉と似ているから料理しやすいが……そろそろ野菜と米が欲しい……!
その場で調達する日々が2日続き、やっと2つ目の街《センコーン》が見えた。
《センコーン》は防壁が街を囲っているのは前と同じだが、門は4方向、東西南北のような位置にしか無い。
そして、一番驚いたのは……
「何あの塔!?」
防壁からはみ出るほど高い円柱の建物があった………。
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ここでも追記しておきますが、前の街を《センコーン》と書いてしまったのは間違いです。本当は《トレナス》です。混乱してしまった方には申し訳ありません!
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