春の洗礼を受けて僕は

さつま

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親愛なるあなたへ

10話 一人旅4 ★

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 閉じた睦月の足を片方上げる。やめてやめてと叩かれても無視して、吸う。
「……!!」
 顔を隠しているが、多分涙目になっている事だろう。
「睦月も舐めて」
「………!!?」
 手を外して、絶望的な表情をしている。
 面白おかしくなってきたので、悪戯に、くびれたところをぐるりとなぞると、睦月が息を殺して気持ちを逃す。
「睦月、声は我慢するなって言ったろ」
 注意しながら、片手を後ろに回す。ゆっくりと埋めると、睦月の背中が何度も突っ張った。
「うっ、ふうっ…」
 熱に浮かされながら、夏伊のそれを口に含んで、手で擦る。
 睦月の中を何度も往復しながら、満遍なく触れていく。そうしたらだいぶ心地よくなってきたようで、内壁がきゅうきゅうと痙攣して吸い付いてきて、生々しくていい。
 小さく水音が鳴る。
「…ふ、ふう」
 すぐに口と手が留守になって、目を閉じて快感を追ってしまう。それを見たら、笑みが溢れた。
 指を抜くと、そこが切なげに戦慄く。
 体を起こして、睦月を仰向けにした。
「夏伊…」
「どうした」
 紫に蕩ける瞳で、ぼんやりと夏伊を見つめてくる。
「どうだった…? ちょっとは…気持ちよかった…?」
 いましたやつ、と言葉を足される。
「最高に良かった」
「…それは言い過ぎ…」
「本当だよ」
 体がふわふわしてる、とつぶやく。
 その睦月の腰を上げて、自分の太ももの上に乗せた。
「入れる…?」
「入れたいけど、止めてもいい」
 どうするか問われて、したいと答えたものの、ちょっと待ってと制する。
 少ししてから、睦月がぽつりと呟いた。
「夏伊…。おれ、夏伊のことがすごく好き…」
 夢でも見ているような、のんびりとした口調。
「…好きでいてもいい…?」
「…俺は重いだろうから覚悟しろよ」
「…それって…いいことじゃん…」
「そうかな」
 睦月が微睡み顔でニコニコしているから、つられて笑った。
 脱力している体が、抵抗なく受け入れていく。
 でも、過敏なところに当たって、睦月の体がまた強張った。
「ん! ふうっ…」
 強く締め付けられて、堪える。
 腰を打ち付けたいのを我慢して、しばらくそのままでいたら、
「う、動かして、ほしい」
 たまらず睦月がぎこちなくおねだりをした。
 ぐっと沈めて肌が触れ合うと、切なげに息を吐いた。
 ゆっくりと引き抜いていくと、胸が締め付けられるような声を上げる。
 それを続けると、睦月の顔がどんどん紅潮していって、下はとろとろと濡れそぼる。枕に顔を擦り寄せて悶えるところも、またたまらなく良い。
「んっん、ああ…! はあ…」
 止めどなく喘ぎながら、夏伊の動きに合わせて無意識に腰を揺らす。
「んん、夏伊、夏伊」
 両足で夏伊の体を挟んで、必死にくっついてきたので、膝頭にキスをした。
「あっ、ん、うぅ」
 随分と甘い声を上げる。たまらないなと思った。この人はこんなに可愛らしかったか? そんな事を思う自分の骨抜き加減にも、苦笑してしまう。
 この人間界の悪魔は、あまりに魅力的だ。愛らしくて、優しくて、強靭な精神の持ち主。
 そんな人が自分を選んで側に戻ってきてくれた事を、たまらなく嬉しく思った。
「睦月」
 まだ華奢な体を抱きしめる。
 またつらくなる時があったら、その時は必要とされたい。支えになれたらいい。夏伊にとって、睦月がそうであるように。
「夏伊、う、もうダメ」
 大きく喘いで、必死に伝えてくる。
「俺も、もう」
「キスしたい…」
 噛み付くようなキスをして、世界が白くなった。


「…これは富山土産か?」
 あんころ餅とコーヒーを用意していた睦月に、髪をタオルで拭きながら、夏伊が尋ねる。
「うん、そう」
「土産物に罪はない…とはいえ…」
 ちょっとデリカシーがないのでは、と言いたげな顔。
「でもさ、コーヒーとあんこって合うんだよ」
「……」
 そんな話はしていない、と言いながら夏伊が席に着く。睦月も自分の席に座った。
「いただきます」
 沈黙を破ったのは、睦月だった。
「夏伊が、確証がないって判断した理由が知りたい」
 ああ、と一言。
「睦月の答えと大体同じ」
 あんころ餅を口にして「おいしいな」と感想を述べる。
「でしょ」
「大体同じなのと、あとはこれ」
 これじゃ足りないと思ったけどと言いながら、傍に置いたバッグから、封筒を出す。
「見ていいの?」
「いいよ」
 入っていた紙を、ぺらりと開く。
「…え」
 名前と年齢らしきものが、ずらりと並んでいる。睦月の理解が追いつかない。
「香月家の、昭和後期以降の死亡者と享年をまとめた」
「…そうなの。皆さん、かなり長生きだったんだね。100歳越えた人もいる…」
「生きている親類も含めて、大体長生きだな」
 コーヒーを飲む。
「だから、睦月にちょっとくらい生命力を吸われたとしても、大した事ないと言いたかった。それは、関係を戻すための説得材料の一つ」
「……夏伊って、ほんとに、めちゃくちゃ、不器用だね」
 ふふふと睦月が笑う。
「褒めてる?」
「褒めてるのかな?」
「褒めろよ」
 テーブルの下で睦月の足をつつく。


 そうしている内に日が傾いてきたので、夏伊がそろそろ失礼すると言った。
「そうだ、ヒロが夏休み中に家に遊びにおいでよって言ってたぞ」
「えっ、やった! 図書委員の日と塾の集中講義の期間は外さないと…」
「了解、それならグループメッセージで日程決めよう。じゃ、お邪魔しました」
 そう言って玄関のドアを開けたものの、閉めて振り向く。
 夏伊が睦月の前髪を掻き上げて、おでこにキスをした。
「じゃあな」
 ポカンとしているその口にも、キスをする。
「ちゃんと鍵掛けろよ」
 ドアが閉まる。
「…き……キザだなぁ…」
 戸惑いながら鍵をかけて、リビングに戻ると、夏伊から電話がかかってきた。
「はい、どうした? 忘れ物?」
「忘れ物といえば、そうだな」
 言い忘れてたけど、と前置きをされる。
「今回のセックスは、記憶に残ってるから。睦月、これからもよろしく」
「………」
 そんなことを言われても困る。
 赤面して黙りこくるしかなかった。
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