春の洗礼を受けて僕は

さつま

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夏の魔物

7話 次の金曜日2 ★☆

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 マンションのエントランスを入って、ポストを確認する。
 中身を分別して、チラシをゴミ箱に捨てた。
「夏伊は先に行ってていいよ。おれ、荷物を取ってから行くから」
 後ろ手に鍵を渡して、預かりボックスを操作しようとしたけれど、夏伊は立ち止まったままだった。
「暑いから、先に中に入ってて」
「荷物持つよ」
 限りなくジェントルでにこやかな顔つきだ。
「あ、そう…?」
 じゃあと、ひとつ箱を持ってもらった。
 夏伊が後ろからついてくる。
「そういえば、手術の後ってどんな感じだったの?」
「ああ、そうだな、点滴してもらったり」
「そっか、点滴ね」
 玄関ドアを開ける。
「鼻は?」
「鼻は、まあ」
 まあ言いたくないんだろうな、と判断して、この話は止めた。
 荷物を靴箱の上に置くと同時に、首筋に顔を近づけられる。
「この匂い」
「えっ?」
 …まだ何も起きていないのに?
「汗臭い? 嗅がないでほしい…」
 体を離す。
「ゴメンゴメン」
 ニコッと笑って、靴を脱ぎながらうちに上がっていった。
 エアコンをつけっぱなしにして家を出たので、酷暑でも室内はよく冷えている。
「お茶どうぞ」
 リビングの床に座った夏伊に、コップを手渡す。
 それを一気に飲み干して、暑かった、生き返るわーと気持ちよさそうに笑った。
 シャワーを勧めてもいいと言うので、睦月が先に浴びることにした。
 理由があって来たはずだけど、深刻そうには見えない。何なら今までで一番開けっ広げな態度ですらある。
 鼻の通りが良くなると、性格も変わるのかな…。そんなことあるのか…?
 シャワーを浴びながらムムム…と唸っていたら、急に浴室のドアが開いた。
「夏伊!?」
 何で入ってきたの!? と叫ぼうとしたら、頭を鷲掴みにされて、性急にキスをされた。
「うぐっ、う、うう」
 ぬるりとした舌が、睦月にお構いなしに口腔を蹂躙する。
「んむ、うぐっ」
「睦月、しよ」
「嘘でしょ!?」
「火曜からずっとしたかった」
 それを言われると、心当たりがない訳ではない。
 睦月がシャワーを止める。
「…じゃあ、ベッドに行こ…」
 睦月をベッドに倒して、座って見下ろす。
「ちょっと待ってて」
 いきなり一物を出して、しごき始めた。
「う、うん…?」
 何だか、うまく言えないけれど、強烈な違和感を覚えている。
 手慣れた動きで大きくさせると、睦月の両足を開かせた。
「えっなに…?」
 その真ん中目掛けて、吐精する。
「……」
 言葉少なになった睦月に、ニコニコしながらキスをしようとしてきたのを、顔を逸らしてしまった。
「…まあいいよ」
 怒っているような笑顔。
 探る様子もなく、睦月にぎゅっと指を入れてくる。
「ッ!」
 精液の助けを借りて入ったものの、痛みで体が跳ねた。
「なっ…」
「逃げんな」
 指を引き抜かれた。体がずり上がって逃げるのを、足を掴んで引き戻されて、また力ずくで指を挿入される。
 痛みと恐怖で、体がギシギシと強張っていく。信じられないものを見ている。顔は夏伊、声も確かに夏伊なのに、体が違う。
 確証はないけれど間違いない。
 ありったけの声で叫んだ。


「お前…! 誰だ!!」
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