39 / 39
ウィル編 02章 外伝:クラウとフェルナ
13-[大切な家族]
しおりを挟む
「ねえねえフェルナ、あんな見た目だけのスケベ野郎のどこがいいの?」
フェルナが弓の手入れをしている横から、不意に気になったのかメルトがそんな質問をしてきた。
「メルトったら、あいつが聞いたら凹むわよ?あいつも普段はあんな感じだけどいいところもいっぱいあるんだよ?」
「ふーん、全然いいところ思いつかないけどねー。見た目と剣の腕くらい?」
「ちょっとメルト、流石にそれはひどいんじゃない?クラウだって他にいいところあるでしょ?」
横からラスがメルトを窘めた。
「じゃあお姉ちゃん、他にクラウのいいところ上げてよ」
「うーん、実家がお金持ち?」
「ラス、それあいつのいいところになってないから・・・」
フェルナは目頭を押さえながら苦しい感じでラスに突っ込んでいた。そんなやり取りをしていると珍しくクラウが厨房の方から出てきた。
「おーい、パン焼いてみたんだがお前ら食うか?」
「わーい、食べる食べるー!」
「クラウが料理するなんて珍しいね?」
「まあ、たまにはな。フェルナも食べるか?」
そう言うとクラウはフェルナにパンを一つ差し出した。フェルナは差し出されたそのパンを受け取って眺めると、ゆっくりと食べた。口に含んだそれは、遠い日の、フェルナの両親が毎朝焼いてくれたパンの味が微かにした。そしてフェルナの頬には自然と一筋の涙が流れた。
「しょっぱいわよ、・・・馬鹿」
「ん?そうか?そんなに塩は入れたつもりなかったんだけどな」
「・・・ありがと」
「ん?なんか言ったか?」
「なんでもない!まだまだねって言ったのよ!」
「へぇへぇ、厳しいことで」
「ただいまー!」
「あ、ウィルお帰りなさい!」
「よお、ウィル!ちょうど今パン焼いたんだがお前も食べるか?」
「え?クラウさんが?珍しいですね!お腹減ってたんで是非!」
「あ、クラウ!私にもう一個ちょうだい!」
「メルト、人様の魅力が全然わからないお前にこれ以上食わせるパンはねぇ!」
「・・・さっきの聞こえてたの?そんなこと言わないでよー、パンくれたらいいところ捻り出してあげるからさ!」
「お前それ褒めてねーし、むしろ傷えぐってるし!」
パンを乗せた盆をクラウはメルトから遠ざけるように両手で上に上げて持ち、メルトは必死にパンを奪おうとぴょんぴょんと飛び跳ねていた。
フェルナはその光景を眺めながらあの日母親に言われた言葉を胸に噛み締め、今日も前を向いて生きていく。
--ウィル編第二章 外伝「クラウとフェルナ」 完--
フェルナが弓の手入れをしている横から、不意に気になったのかメルトがそんな質問をしてきた。
「メルトったら、あいつが聞いたら凹むわよ?あいつも普段はあんな感じだけどいいところもいっぱいあるんだよ?」
「ふーん、全然いいところ思いつかないけどねー。見た目と剣の腕くらい?」
「ちょっとメルト、流石にそれはひどいんじゃない?クラウだって他にいいところあるでしょ?」
横からラスがメルトを窘めた。
「じゃあお姉ちゃん、他にクラウのいいところ上げてよ」
「うーん、実家がお金持ち?」
「ラス、それあいつのいいところになってないから・・・」
フェルナは目頭を押さえながら苦しい感じでラスに突っ込んでいた。そんなやり取りをしていると珍しくクラウが厨房の方から出てきた。
「おーい、パン焼いてみたんだがお前ら食うか?」
「わーい、食べる食べるー!」
「クラウが料理するなんて珍しいね?」
「まあ、たまにはな。フェルナも食べるか?」
そう言うとクラウはフェルナにパンを一つ差し出した。フェルナは差し出されたそのパンを受け取って眺めると、ゆっくりと食べた。口に含んだそれは、遠い日の、フェルナの両親が毎朝焼いてくれたパンの味が微かにした。そしてフェルナの頬には自然と一筋の涙が流れた。
「しょっぱいわよ、・・・馬鹿」
「ん?そうか?そんなに塩は入れたつもりなかったんだけどな」
「・・・ありがと」
「ん?なんか言ったか?」
「なんでもない!まだまだねって言ったのよ!」
「へぇへぇ、厳しいことで」
「ただいまー!」
「あ、ウィルお帰りなさい!」
「よお、ウィル!ちょうど今パン焼いたんだがお前も食べるか?」
「え?クラウさんが?珍しいですね!お腹減ってたんで是非!」
「あ、クラウ!私にもう一個ちょうだい!」
「メルト、人様の魅力が全然わからないお前にこれ以上食わせるパンはねぇ!」
「・・・さっきの聞こえてたの?そんなこと言わないでよー、パンくれたらいいところ捻り出してあげるからさ!」
「お前それ褒めてねーし、むしろ傷えぐってるし!」
パンを乗せた盆をクラウはメルトから遠ざけるように両手で上に上げて持ち、メルトは必死にパンを奪おうとぴょんぴょんと飛び跳ねていた。
フェルナはその光景を眺めながらあの日母親に言われた言葉を胸に噛み締め、今日も前を向いて生きていく。
--ウィル編第二章 外伝「クラウとフェルナ」 完--
0
お気に入りに追加
19
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
転生錬金術師・葉菜花の魔石ごはん~食いしん坊王子様のお気に入り~
豆狸
ファンタジー
異世界に転生した葉菜花には前世の料理を再現するチートなスキルがあった!
食いしん坊の王国ラトニーで俺様王子様と残念聖女様を餌付けしながら、可愛い使い魔ラケル(モフモフわんこ)と一緒に頑張るよ♪
※基本のんびりスローライフ? で、たまに事件に関わります。
※本編は葉菜花の一人称、ときどき別視点の三人称です。
※ひとつの話の中で視点が変わるときは★、同じ視点で場面や時間が変わるときは☆で区切っています。
※20210114、11話内の神殿からもらったお金がおかしかったので訂正しました。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる