上 下
25 / 39
ウィル編 02章:あの空にもう一度虹を架けて

14-[虹の滝]

しおりを挟む
 宴から一夜明け、ウィル達が外に出てみるとそこには昨夜の雨を蓄えて潤っている地面があった。そして昨夜の雨とは対照的に、作物を育てるには水の次に陽の光が必要だろうと言わんばかりに空からは日差しが指していた。

「おー、おー!本当に地面が濡れているよー!」

 メルトはまるで小さい子供の頃に戻ったかのように昨夜の雨でできた水溜まりでぱしゃぱしゃと足を踏んではしゃいでいた。メルトの楽しそうな様子を見て、村の子供達もそれに混じって一緒に遊び始めた。メルトは子供たちにそれー!と水をかけると子供達はきゃっきゃっと言って喜び、そしてメルトに水をかけ返した。

「やったなー!がおー!」

 メルトが冗談っぽく威嚇するポーズを取ってみせるとそこから今度は追いかけっこが始まった。その後村の子供が濡れた地面で滑って擦りむいてしまい、ラスに手当てをされていることは容易に想像できた。そんなことをしていると遠くから歩いてきたコルネがこちらを見つけ、小走りしてきた。

「皆さんおはようございます!昨日はよく眠れましたか?見てください、みなさんのおかげで乾いていた土地に潤いが戻りました。本当にありがとうございました!」

 そう言うとコルネは深々と頭を下げてきた。

「コルネさん、よかったですね。もしこの村の果物が取れたら食べに来てもいいですか?」

「ええ、もちろんです!ウィルさん達に喜んでもらえるよう、これからまた皆で頑張って畑を作ってきます!」

「この村の果物は本当に美味しいって評判だったから一度食べてみたかったのよ!」

「フェルナさんも是非いらしてください!」

 今のコルネは最初にギルドに入って来た時とは違って素敵な笑顔に溢れていた。ウィル達はそんなコルネに付いて回り、再興に励む村の様子を見ながら話していた。その途中で裏の森の方から村の子供が数人ウィル達の方へと走ってきた。

「メルトお姉ちゃん、ラスお姉ちゃん、コルネお姉ちゃんも!ちょっとこっち来て!」

 そう言うと子供達はメルトとラスの手をぐいぐい引っ張った。

「ちょっとちょっと、どうしたの?」

 その子供達はメルト達をどこかに案内したがっているようだった。子供達に引っ張られるメルトとラスの後ろにコルネとウィル達も付いていった。子供達はメルトやラスの手を引きながら森の中を急いで走っていく。

「そんなに走ると危ないよ?」

「わっわっ、待って、そんなに急ぐと転んじゃうって!」

そして子供達に付いていき森の奥へ行くと、そこには昨日遺跡に行く途中に通った滝があった。しかし、そこにあった滝は昨日見たものと全く様子が違ってまるで別の場所に来たかのように錯覚した。

「うわあ、綺麗!」

「でしょでしょー!これをお姉ちゃん達に見せたかったんだー!」

「すっごく綺麗なの!」

「本当に綺麗・・・」

 そこに広がっていたのは滝に架かる七色に輝く大きな虹だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

処理中です...