憂いの空と欠けた太陽

弟切 湊

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学校祭〜二日目前半〜

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今日はこの大学に通う学生だけが参加出来る、学校祭二日目だ。お客さんを入れる最初の日でもある。
友人の企画に出る僕は店となる講義室にいなければならないが、シフト制らしいので後半は他の店を回りに行って良いらしい。
今までの学校祭は御園とゲームしてて、ブースを回るどころか学校にも来なかったので、せっかくだから後半は回ってみることにした。

……何はともあれ、前半を成功させなきゃいけないのだけど。
気乗りしないながらも衣装に着替えて準備をする。料理担当はまた別の人たちの役目なのでそれは任せて、僕らは料理の配膳と片付け、お客さんの受け付けをしなければならない。
僕はバイト経験的に受け付けが向いてるだろうということで、とりあえずはその係になった。ローテーションなので後で配膳もするだろうけど、最初は確かにこの方が慣れててやりやすそうだ。
受け付けは講義室の外に簡易的に作ってあるので、そこに行ってお客さんを待った。

僕はあまり興味が無いけど、昨日メイド服着るのに乗り気だった人たちはメイクまでバッチリで凄かった。女の子みたい、とまではいかないけれど、男性とも女性とも言いきれないような綺麗さがあった。
……実際お客さんが来てくれるかは分からない。でも、友人がこの企画をやりたがった理由は何となく分かる気がした。
来るといいな、お客さん。

そう思いながら立っていると、

「えー、可愛いー!」

パタパタと数人の女性が駆け寄ってきた。今まで起きたことのないシチュエーションに目を白黒させてしまう。
そういえば僕もメイド服なんだった。
やっぱり来ないで欲しい……。

「すみません、5人分受け付けお願いします!」

僕が受け付けして通すと、女性たちはキャッキャと嬉しそうに話しながら中に入っていった。
そうか、女性も来るのか。女性がメイド服来てるメイドカフェのお客さんがどういう層なのか分からないけど、女装だと入りやすかったりするのかもしれない。物珍しくもあるだろうし。

お客さんの入りは結構良くて、小さな講義室はすぐいっぱいになった。幸い食べ物は軽食ばかりですぐ食べられるものしか置いてなかったから、回転率は良くて忙しい代わりに行列が伸びることはなかった。待ち時間は少なく済んでるはず。

係を交代してウェイターをやる時も、運ぶものが軽いから特に支障はなかった。
お客さんの中には時々ちょっとマナーが悪い人がいて、面白がって『足の毛剃ってるの?』とか言ってメイドの足を触る人もいた。僕はやられなかったけど、やられた子は愛想笑いで嫌そうだったし、普通にセクハラではないだろうか。男性だからといって何をしてもいいわけではない。
そう思ってどうしようか考えていると、メイドじゃないウェイターの格好をした御園が割り込んで辞めるように注意していた。なるほど、護衛ってこういうことか。
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