憂いの空と欠けた太陽

弟切 湊

文字の大きさ
上 下
104 / 142

学校祭〜二日目前半〜

しおりを挟む
今日はこの大学に通う学生だけが参加出来る、学校祭二日目だ。お客さんを入れる最初の日でもある。
友人の企画に出る僕は店となる講義室にいなければならないが、シフト制らしいので後半は他の店を回りに行って良いらしい。
今までの学校祭は御園とゲームしてて、ブースを回るどころか学校にも来なかったので、せっかくだから後半は回ってみることにした。

……何はともあれ、前半を成功させなきゃいけないのだけど。
気乗りしないながらも衣装に着替えて準備をする。料理担当はまた別の人たちの役目なのでそれは任せて、僕らは料理の配膳と片付け、お客さんの受け付けをしなければならない。
僕はバイト経験的に受け付けが向いてるだろうということで、とりあえずはその係になった。ローテーションなので後で配膳もするだろうけど、最初は確かにこの方が慣れててやりやすそうだ。
受け付けは講義室の外に簡易的に作ってあるので、そこに行ってお客さんを待った。

僕はあまり興味が無いけど、昨日メイド服着るのに乗り気だった人たちはメイクまでバッチリで凄かった。女の子みたい、とまではいかないけれど、男性とも女性とも言いきれないような綺麗さがあった。
……実際お客さんが来てくれるかは分からない。でも、友人がこの企画をやりたがった理由は何となく分かる気がした。
来るといいな、お客さん。

そう思いながら立っていると、

「えー、可愛いー!」

パタパタと数人の女性が駆け寄ってきた。今まで起きたことのないシチュエーションに目を白黒させてしまう。
そういえば僕もメイド服なんだった。
やっぱり来ないで欲しい……。

「すみません、5人分受け付けお願いします!」

僕が受け付けして通すと、女性たちはキャッキャと嬉しそうに話しながら中に入っていった。
そうか、女性も来るのか。女性がメイド服来てるメイドカフェのお客さんがどういう層なのか分からないけど、女装だと入りやすかったりするのかもしれない。物珍しくもあるだろうし。

お客さんの入りは結構良くて、小さな講義室はすぐいっぱいになった。幸い食べ物は軽食ばかりですぐ食べられるものしか置いてなかったから、回転率は良くて忙しい代わりに行列が伸びることはなかった。待ち時間は少なく済んでるはず。

係を交代してウェイターをやる時も、運ぶものが軽いから特に支障はなかった。
お客さんの中には時々ちょっとマナーが悪い人がいて、面白がって『足の毛剃ってるの?』とか言ってメイドの足を触る人もいた。僕はやられなかったけど、やられた子は愛想笑いで嫌そうだったし、普通にセクハラではないだろうか。男性だからといって何をしてもいいわけではない。
そう思ってどうしようか考えていると、メイドじゃないウェイターの格好をした御園が割り込んで辞めるように注意していた。なるほど、護衛ってこういうことか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

そんなの聞いていませんが

みけねこ
BL
お二人の門出を祝う気満々だったのに、婚約破棄とはどういうことですか?

春を拒む【完結】

璃々丸
BL
 日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。 「ケイト君を解放してあげてください!」  大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。  ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。  環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』  そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。  オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。 不定期更新になります。   

成り行き番の溺愛生活

アオ
BL
タイトルそのままです 成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です 始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください オメガバースで独自の設定があるかもです 27歳×16歳のカップルです この小説の世界では法律上大丈夫です  オメガバの世界だからね それでもよければ読んでくださるとうれしいです

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

平凡顔のΩですが、何かご用でしょうか。

無糸
BL
Ωなのに顔は平凡、しかも表情の変化が乏しい俺。 そんな俺に番などできるわけ無いとそうそう諦めていたのだが、なんと超絶美系でお優しい旦那様と結婚できる事になった。 でも愛しては貰えて無いようなので、俺はこの気持ちを心に閉じ込めて置こうと思います。 ___________________ 異世界オメガバース、受け視点では異世界感ほとんど出ません(多分) わりかし感想お待ちしてます。誰が好きとか 現在体調不良により休止中 2021/9月20日 最新話更新 2022/12月27日

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

ゆい
BL
涙が落ちる。 涙は彼に届くことはない。 彼を想うことは、これでやめよう。 何をどうしても、彼の気持ちは僕に向くことはない。 僕は、その場から音を立てずに立ち去った。 僕はアシェル=オルスト。 侯爵家の嫡男として生まれ、10歳の時にエドガー=ハルミトンと婚約した。 彼には、他に愛する人がいた。 世界観は、【夜空と暁と】と同じです。 アルサス達がでます。 【夜空と暁と】を知らなくても、これだけで読めます。 随時更新です。

処理中です...