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旅館
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冴木さんを車に寝かせた有栖が戻ってきて、僕たちは二人で片付けを始めた。
川原でキャンプをする人の中には片付けせずに帰る人もいるみたいで、結構問題になっているみたいなので僕たちはそんなことがないようにしないと。許可取る時に冴木さんの名前も電話番号も山の管理人さんに知られているから、冴木さんに迷惑をかけない意味でもしっかり片付けなければ。
大きめのごみ袋に、ごみを余さず詰めていく。その間有栖はバーベキューセットをばらして、中の炭を取っ手と蓋がついた入れ物に並べて入れる。発火したら危険なので、この火消し壺で消してから再利用するのだ。火消し壺は中が密閉されていて、酸素がなくなって鎮火する仕組みだ。窒息消火というらしい。
鎮火には少し時間がかかるので、炭は放置してミニテーブルやバーベキューセットを車に積み込んだ。
冴木さんは後部座席に横たえてあって、メガネは運転席横のスピードメーターのところに置いてあった。
お酒が入ったせいか赤らんだ顔に気が抜けた表情で眠る彼は、なんかこう、放っておくと危なそうな感じがした。有栖の横にいるから目立たないだけで、冴木さんだってイケメンなのだ。マネージャーという立場だから今まで飲み会とかあまり参加しなくて、しても有栖が一緒だっただろうから大丈夫だったんだと思うけど、そうじゃなかったら危なかったんじゃないだろうか。
「何してるんだ?」
「え? ああ、冴木さんモテそうだなって」
「ああ、モテるぞ普通に。本人は気付いてないが」
「やっぱりそうなんだ。……何で気付かないんだろう? 不用心な感じがするけど」
「…………」
有栖がジト目で僕を見る。
「なに?」
「いや、類は友を呼ぶって言葉を思い出しただけだ」
「ふーん?」
言葉の意味は知ってるけど、有栖が何を言っているのかはよく分からなかった。
鎮火して冷めた炭を袋に移し替えて、火消し壺と共に車に乗せる。
“来た時よりも綺麗に”というキャンプ場のルールに則って、この川原も綺麗にした。最後にごみが落ちていないかなどを確認して、有栖が運転席、僕が助手席に収まった。冴木さんにもシートベルトをしておく。
明日も休みなので、今日はこの近辺の小さな旅館に泊まることになっている。せっかくの休日だし、ファンに騒がれると有栖の気が休まらないから、なるべく人の少ない場所にあるこぢんまりとした旅館を選んだ。
都市部には客室が離れのようになっていて、部屋丸々一つが周囲とは隔離されている旅館もあるみたいだけど、当然高いお金を払わなければ泊まれないし、ここからも遠いのでやめた。家を建てるのにはかなりのお金がかかる訳なので、一回泊まるきりの旅館に高いお金をかけていられないのだ。
一時間ほどかけて着いた旅館は、小さくて地味だった。普段ホテルとか泊まる人には物足りなそうだけど、物静かで質素な感じが僕には好感が持てた。ちょっと隠れ家的な魅力もある。
客室は四部屋あって、そのうち二部屋は埋まっているのか入口のボードに札がかけてあった。着物姿で出迎えてくれた女将さんにそれとなく聞いてみたところ、どうやらいつも来てくれる常連さんらしい。常連さん以外ももちろん来てくれるらしいが、今日は僕たちだけみたいだ。
フラフラしていて寝ぼけ眼の冴木さんは有栖に任せて、女将さんの案内で部屋に入る。
畳が敷かれた部屋にはテーブルと座椅子があり、窓際には板張りの上にミニテーブルと椅子が置いてあった。
冴木さんは酔いが覚めるまで畳の上に寝かせて、僕達は窓から見える景色を眺めたり、荷物を整理したりしていた。
川原でキャンプをする人の中には片付けせずに帰る人もいるみたいで、結構問題になっているみたいなので僕たちはそんなことがないようにしないと。許可取る時に冴木さんの名前も電話番号も山の管理人さんに知られているから、冴木さんに迷惑をかけない意味でもしっかり片付けなければ。
大きめのごみ袋に、ごみを余さず詰めていく。その間有栖はバーベキューセットをばらして、中の炭を取っ手と蓋がついた入れ物に並べて入れる。発火したら危険なので、この火消し壺で消してから再利用するのだ。火消し壺は中が密閉されていて、酸素がなくなって鎮火する仕組みだ。窒息消火というらしい。
鎮火には少し時間がかかるので、炭は放置してミニテーブルやバーベキューセットを車に積み込んだ。
冴木さんは後部座席に横たえてあって、メガネは運転席横のスピードメーターのところに置いてあった。
お酒が入ったせいか赤らんだ顔に気が抜けた表情で眠る彼は、なんかこう、放っておくと危なそうな感じがした。有栖の横にいるから目立たないだけで、冴木さんだってイケメンなのだ。マネージャーという立場だから今まで飲み会とかあまり参加しなくて、しても有栖が一緒だっただろうから大丈夫だったんだと思うけど、そうじゃなかったら危なかったんじゃないだろうか。
「何してるんだ?」
「え? ああ、冴木さんモテそうだなって」
「ああ、モテるぞ普通に。本人は気付いてないが」
「やっぱりそうなんだ。……何で気付かないんだろう? 不用心な感じがするけど」
「…………」
有栖がジト目で僕を見る。
「なに?」
「いや、類は友を呼ぶって言葉を思い出しただけだ」
「ふーん?」
言葉の意味は知ってるけど、有栖が何を言っているのかはよく分からなかった。
鎮火して冷めた炭を袋に移し替えて、火消し壺と共に車に乗せる。
“来た時よりも綺麗に”というキャンプ場のルールに則って、この川原も綺麗にした。最後にごみが落ちていないかなどを確認して、有栖が運転席、僕が助手席に収まった。冴木さんにもシートベルトをしておく。
明日も休みなので、今日はこの近辺の小さな旅館に泊まることになっている。せっかくの休日だし、ファンに騒がれると有栖の気が休まらないから、なるべく人の少ない場所にあるこぢんまりとした旅館を選んだ。
都市部には客室が離れのようになっていて、部屋丸々一つが周囲とは隔離されている旅館もあるみたいだけど、当然高いお金を払わなければ泊まれないし、ここからも遠いのでやめた。家を建てるのにはかなりのお金がかかる訳なので、一回泊まるきりの旅館に高いお金をかけていられないのだ。
一時間ほどかけて着いた旅館は、小さくて地味だった。普段ホテルとか泊まる人には物足りなそうだけど、物静かで質素な感じが僕には好感が持てた。ちょっと隠れ家的な魅力もある。
客室は四部屋あって、そのうち二部屋は埋まっているのか入口のボードに札がかけてあった。着物姿で出迎えてくれた女将さんにそれとなく聞いてみたところ、どうやらいつも来てくれる常連さんらしい。常連さん以外ももちろん来てくれるらしいが、今日は僕たちだけみたいだ。
フラフラしていて寝ぼけ眼の冴木さんは有栖に任せて、女将さんの案内で部屋に入る。
畳が敷かれた部屋にはテーブルと座椅子があり、窓際には板張りの上にミニテーブルと椅子が置いてあった。
冴木さんは酔いが覚めるまで畳の上に寝かせて、僕達は窓から見える景色を眺めたり、荷物を整理したりしていた。
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