憂いの空と欠けた太陽

弟切 湊

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遊園地の話Ⅴ(可香谷視点)

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冴木さんから『遊園地に遊びに行きませんか』とLINEが来たとき、ぼくは何か妙な気持ちになった。
彼に急にどうしたのかと理由を問うてみると、どうやら有栖さんや遊沙さんの為らしい。
どこかほっとしたような、残念なような。そんな気分だった。
しかし、断る理由など全くない。ぼくは理由を聞いた後に承諾の返事を送った。

知っている顔がほとんどで、一人だけ知らない人がいたが、それは遊沙さんの友人らしい。定期的に有栖さんと火花を散らしているところを見ると、彼のライバルと言ったところだろうか。そんな彼がこの場に呼ばれていることに若干違和感を覚えたが、遊沙さんや相手の二人の反応を見て察した。
遊沙さんは冴木さんに似ているところがあって、天然っぽいと思っていたが、恋愛沙汰にも鈍感らしい。有栖さんは苦労しそうだ。
そのライバルは御園さんというらしいが、彼もなかなか難儀そうだった。友人という立場故に色々と苦しい思いをしていることだろう。有栖さんと遊沙さん、二人の仲を引き裂きたいが、遊沙さんが有栖さんを信頼している手前、やりたいけど出来ない。そんな感じだった。

同性愛者は少なくないが、多いわけでもない。単純に考えれば好きになれる対象はたくさんいるのに、狭い友人関係で一人を取り合う羽目になるとは。

その点ぼくは恵まれていると思う。冴木さんのことを恋愛対象として見ている訳ではないが、他の人とは違う心地よさを感じている。それを誰にも邪魔されることなく一緒にいられるのだから。これ以上の幸せ……というのか、安堵感のような何かは、そうそう得られるものではないだろう。


…………いくつか乗り物に乗ったが、二人乗りのアトラクションでは有栖さんと御園さんは何故かことごとく隣同士になっていて、悲劇以外の何物でもなかった。あれだけ遊沙さんと隣になれないと、一種の奇跡なのではないかと思ってしまう。むしろ運命かもしれない。

これは第三者の助けが必要だろうか。

仕事で疲れたぼくに送られてくるLINEの数々は、ぼくにとっては癒やしだった。丁寧な文面で進捗やその日の発見、ぼくへのさりげない気遣いなどが書かれているのを見ると、何故か満足感や安堵感があるのだ。それにどう返信しようか悩む時間も楽しい。
そんな彼の喜びは、有栖さんと遊沙さんが幸せになること。それならば、ぼくの答えは一つ。御園さんには大変申し訳ないが、彼を引き離して二人の邪魔をやめさせる。ぼくが冴木さんと楽しむ時間が減るので本当は当事者で何とかして貰いたいが、あの様子ではとても無理だろう。

今までにそれなりにアトラクションに乗ったし、時間も三時近い。デートではないと言ってもあまりに恋人っぽく出来ていないのは不憫だ。
観覧車とかにでも二人で乗せてやるべきだろう。
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