憂いの空と欠けた太陽

弟切 湊

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新居探しⅣ

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新居を探し始めてしばらく経って、僕たちはようやく良い場所を見つけた。そこは今いる都心からかなり離れたのどかな場所で、家の場所はそこからさらに奥の標高が高めのところにあった。ちなみに土地だけだ。
近くに川もあるしちょっと遡れば滝もある。森も近いけど、森からは少し離れた日当たりが良くて風が心地よい場所だ。虫も少なく温度も適した好立地だ。周囲は人があまり住んでいなくて、少し降りたところに田んぼがいくつかと民家がちらほら。問題があるといえば交通の便があまり良くないことだろう。でもマイナス面はそこだけ。土地代もそれほど高くない。もちろん土地としては、だけど。僕から見たら十分高い。
土地代に関しては、土地を売っている人が、

「田舎ってだけでもあまり売れないのに交通の便も悪けりゃ土地しかないっていうのがね……。いやあ、買ってくださって良かったですよ」

と言っていたので、この土地はあまり人気がなく徐々に値段が下がってこうなったようだ。
僕の好きな自然があって人も少なくて滝も川もあって、有栖の嫌いな虫は家まで来ない。値段としても冴木さんを悩ませることはないだろう。そんな訳で、僕たちの家はここに決まった。

家が――というより土地が決まったところで、有栖が家の設計案を持ってきた。彼は設計に関しては素人のはずだけど、そんなことは微塵も感じさせないくらい上手に描かれていた。こういう言い方は彼は嫌がるだろうけど、やはり才能があるのだろう。
2階建てなのか設計案は2枚あった。1枚目には玄関と居間と風呂場、トイレ、収納があり、窓の位置まで細かく描かれていた。図からすると、テーブルが置けるくらい広いウッドデッキがあるようだ。有栖には言ってないはずだけど、僕の欲しいものを何も言わずに付けてくれているあたり、顔だけじゃなくて中身もイケメンだなあと思う。
2枚目には部屋が3つあって、それぞれ”寝室”、”書斎”、”決めかねる”と書いてあった。1つはまだ決まっていないらしい。今回は個室ではなく全て共用のようだ。各々で部屋を作るとそれだけで3部屋作らなければならないし、この方が実用的で楽なのだろう。そもそも今の家よりかなりこぢんまりした造りだし(というより今が大き過ぎるのだが)、それぞれの部屋なんて作っていたら生活に必要な部屋に割く空間がなくなる。
ベッドは違うと言っても一緒の部屋で寝るとなると、家族感が増す。

有栖はこの造りで異存はないかと聞いたけど、僕も冴木さんも首を振った。有栖は2人の要望もきちんと取り入れて、その上で生活しやすいように組み立ててくれている。感謝はあれど異存はない。

後はこれを任意の建築会社に持って行って、一緒に内容を詰めるらしい。壁の素材やら何やらを決めるときはまた相談するとのことだ。なんか色々任せてしまって申し訳ないが、有栖は何処か満足げだったのでそれで良しとした。


―――――――†

(端書き)
先週に引き続き、土日といいながら月曜日に更新ですみません。今後もちょくちょくこういうことがあるかもしれませんが、気長にお待ちくださると嬉しいです。
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