憂いの空と欠けた太陽

弟切 湊

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おまけ・ホワイトデー(大遅刻)

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「ほら、遊沙。受け取れ」


そっぽを向いて照れくさそうに有栖が差し出してきたのは、小さな紙袋だった。

「?」

意味が分からずにしばし思考して、今日が何の日か思い出した。今日は3月14日。ホワイトデーだ。
ホワイトデーとなれば、これはバレンタインデーにあげたチョコのお返しだろう。
人から貰う食べ物には抵抗があるが、有栖がくれるものなら大丈夫だろう。多分。

そう思って紙袋を覗くと、細長い小さな箱が入っていた。袋から取り出して開けてみる。

「わ」

中に入っていたのは、食べ物ではなかった。
細い銀色のチェーンと、細長くて青い鉱物で出来たペンダントヘッド。青い鉱物は透き通っていてシンプルで、ダイヤモンドなどのような煌びやかさはないが、代わりに上品で控えめな美しさがあった。

「綺麗……」

「気に入ったか?」

僕が鉱物を光に透かして魅入っていると、有栖がそわそわと声をかけてきた。

「うん。ありがとう、有栖」

そういうと、有栖はほっとしたようだった。僕が御園にイヤーカフをあげた時もそうだったけど、物をあげるときは気に入らなかったらどうしようって気になってしまうから、有栖もきっとそうだったのだろう。

それにしても、これでは僕の手作りチョコでは割に合わない気がする。この鉱物は多分アクアマリンかトルマリン系の石柱だと思うから、大きさとか透き通り具合とか色とかを鑑みても、これだけで2000円はしそうだ。チェーンも繊細で高そうだし、本当にこんなに良いものをもらって良いのだろうか。

…………いや、そういうのを言うのは野暮だよな。
有り難く貰っておこう。

僕は大切にするね、と言って首からそれを提げた。

食べ物も嬉しいけれど、食べたらなくなってしまうから、こういう物だとずっと持っておけて嬉しい。
それに、なんだか僕が前に毒に当たったことを気にして食べ物じゃないものにしてくれた気がする。確証はないけれど、何故かそんな気がした。
それが、凄く嬉しい。有栖は知らないだろうけど、僕は鉱物も結構好きだし。
僕の好みを詳しく知らないはずなのに、僕が欲しいものをくれたのが不思議だった。

うん、とても大事にしよう。有栖の気持ちも一緒に。


―――――――――――†

(端書き)
アクアマリンとかトルマリンとか分からない方は、Twitterの方に参考画像載せておきましたので参考にしていただければと思います。ハッピーホワイトデー!(遅い)
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