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面倒な誘い
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「合コン?」
自分とは全く縁のない言葉に思わず首を傾げる。怪訝な顔をしてしまったかもしれないが、こればかりは仕方がない。
「そう! 人数足りなくて……。予定では五人ずつのはずだったんだけど、相手が間違えてて本当は六人だったらしくて、こっちの人数が一人足りないんだよ……! 頼むっ! こういうの遊沙しか頼めないから!」
本当に困った様子で耳打ちしてくるのはいつも遊んでくれている友人のうちの一人だ。御園は風邪を引いてしまったとかで昨日から休んでいる。もし彼がいたら僕じゃなくて彼のところに話が行ったのだろうけど、いないためこうして僕に頼んでいるのだろう。
日頃から遊んでくれている恩もあるし、本当なら即答したいところなのだけど、有栖の存在があるから二つ返事でとはいかない。有栖は僕のことを好き……なわけだから、僕としても彼の嫌がることは避けたい。恋愛感情が分からないから何とも言えないけれど、多分自分の好きな人が他の女性とか男性とかと合コンに行った、とか知ったらすごく傷つくんじゃないかと思う。多分。
「ええと、そうしたいのは山々なんだけど、その、家の人にそういう所行っちゃ駄目って言われてて」
「バレなきゃ大丈夫だって! おれらもう大学生だし、いつまでも親のお伺いばっかり立ててても駄目だろ? な? 行こうぜ、頼む! 一生のお願い!」
「うっ……!」
駄目だ、断り切れない……。バレなきゃ大丈夫とかそういう問題じゃなくて普通に駄目だと思うけど、友人の頼みも無下に出来ない。
どうしよう。
「だー! もう! 時間がないから行くぞ!」
「え!? ちょ、ちょっと待って、まだ良いとは言ってな――」
「駄目とも言ってないだろ! 飯代はおれが出すから! いるだけで良いから! 二次会も蹴って良いから!」
彼は僕の手を引っ張ってぐいぐい歩いて行く。残念ながら腕力も脚力も貧弱なので抵抗も出来ない。
うん、出来るだけのことはした。諦めるしかないか……。
有栖には帰ってから謝ろう。そして勢いに流されるのはこれで最後にしよう。
諦めた僕は合コン会場のイタリアンレストランまで連行されていった。
―――――――――――†
「初めまして~!」
メイクも服装もバッチリな女性達が笑顔で挨拶していき、僕らも挨拶をしなければならなかった。基本的に人見知りな僕はこういう席が苦手なのだけど、頼まれた上に連れて来られたからには乗り切るしかない。
ニコニコして良い感じに受け答えしていれば角も立たないだろう。
友人とその他の男性陣は皆コミュニケーション能力が高そうだし、僕はあまり喋らなくてもよさそうだ。
ご飯代を出してくれるというのであまり高いものは頼めない。学生はお金が必要だし、他人のお金でホイホイ頼むのは申し訳ない。僕がメニューを見ながら思案していると、一人の女性が話しかけてきた。
「遊沙君は何頼むの~?」
「え? ええと、まだ悩んでいるんですけど、せっかくだからパスタかなと……」
「あー、わたしもパスタ食べたいんだよね~、遊沙君はどれが良いと思う? あと敬語禁止ね~? 同い年なんだから気楽にね♪」
「え、ああ、すみません……じゃなくてごめん。うーん……僕は海鮮が好きだからボンゴレビアンコ……かな」
「え、奇遇じゃーん! わたしもそれにしようと思ってたんだよねー! ……店員さ~ん、注文お願いしま~す」
彼女は僕のも一緒に注文してくれた。そういう声かけは苦手だからやってくれるのは凄く助かる。
ただ、ちょっとこの人……苦手だ…………。
良い人なのは分かる。顔も可愛くて綺麗だし、コミュニケーション能力も高いからモテそうだ。
そうなのだけど、ちょっと、その……僕の性格には合わないのかもしれない。
一緒にいるのに気を張っていないといけない感じがする。有栖と一緒にいるときは全くそう思わないのに。
やっぱり異性だからだろうか。
ああ、早く帰りたい…………。
自分とは全く縁のない言葉に思わず首を傾げる。怪訝な顔をしてしまったかもしれないが、こればかりは仕方がない。
「そう! 人数足りなくて……。予定では五人ずつのはずだったんだけど、相手が間違えてて本当は六人だったらしくて、こっちの人数が一人足りないんだよ……! 頼むっ! こういうの遊沙しか頼めないから!」
本当に困った様子で耳打ちしてくるのはいつも遊んでくれている友人のうちの一人だ。御園は風邪を引いてしまったとかで昨日から休んでいる。もし彼がいたら僕じゃなくて彼のところに話が行ったのだろうけど、いないためこうして僕に頼んでいるのだろう。
日頃から遊んでくれている恩もあるし、本当なら即答したいところなのだけど、有栖の存在があるから二つ返事でとはいかない。有栖は僕のことを好き……なわけだから、僕としても彼の嫌がることは避けたい。恋愛感情が分からないから何とも言えないけれど、多分自分の好きな人が他の女性とか男性とかと合コンに行った、とか知ったらすごく傷つくんじゃないかと思う。多分。
「ええと、そうしたいのは山々なんだけど、その、家の人にそういう所行っちゃ駄目って言われてて」
「バレなきゃ大丈夫だって! おれらもう大学生だし、いつまでも親のお伺いばっかり立ててても駄目だろ? な? 行こうぜ、頼む! 一生のお願い!」
「うっ……!」
駄目だ、断り切れない……。バレなきゃ大丈夫とかそういう問題じゃなくて普通に駄目だと思うけど、友人の頼みも無下に出来ない。
どうしよう。
「だー! もう! 時間がないから行くぞ!」
「え!? ちょ、ちょっと待って、まだ良いとは言ってな――」
「駄目とも言ってないだろ! 飯代はおれが出すから! いるだけで良いから! 二次会も蹴って良いから!」
彼は僕の手を引っ張ってぐいぐい歩いて行く。残念ながら腕力も脚力も貧弱なので抵抗も出来ない。
うん、出来るだけのことはした。諦めるしかないか……。
有栖には帰ってから謝ろう。そして勢いに流されるのはこれで最後にしよう。
諦めた僕は合コン会場のイタリアンレストランまで連行されていった。
―――――――――――†
「初めまして~!」
メイクも服装もバッチリな女性達が笑顔で挨拶していき、僕らも挨拶をしなければならなかった。基本的に人見知りな僕はこういう席が苦手なのだけど、頼まれた上に連れて来られたからには乗り切るしかない。
ニコニコして良い感じに受け答えしていれば角も立たないだろう。
友人とその他の男性陣は皆コミュニケーション能力が高そうだし、僕はあまり喋らなくてもよさそうだ。
ご飯代を出してくれるというのであまり高いものは頼めない。学生はお金が必要だし、他人のお金でホイホイ頼むのは申し訳ない。僕がメニューを見ながら思案していると、一人の女性が話しかけてきた。
「遊沙君は何頼むの~?」
「え? ええと、まだ悩んでいるんですけど、せっかくだからパスタかなと……」
「あー、わたしもパスタ食べたいんだよね~、遊沙君はどれが良いと思う? あと敬語禁止ね~? 同い年なんだから気楽にね♪」
「え、ああ、すみません……じゃなくてごめん。うーん……僕は海鮮が好きだからボンゴレビアンコ……かな」
「え、奇遇じゃーん! わたしもそれにしようと思ってたんだよねー! ……店員さ~ん、注文お願いしま~す」
彼女は僕のも一緒に注文してくれた。そういう声かけは苦手だからやってくれるのは凄く助かる。
ただ、ちょっとこの人……苦手だ…………。
良い人なのは分かる。顔も可愛くて綺麗だし、コミュニケーション能力も高いからモテそうだ。
そうなのだけど、ちょっと、その……僕の性格には合わないのかもしれない。
一緒にいるのに気を張っていないといけない感じがする。有栖と一緒にいるときは全くそう思わないのに。
やっぱり異性だからだろうか。
ああ、早く帰りたい…………。
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