63 / 142
水族館デートⅠ
しおりを挟む
「なあ、遊沙。水族館行かないか?」
有栖のそんな一言から始まって、断る理由もない僕は連れて行ってもらうことにした。冴木さんは優しい笑顔で見送ってくれた。
有栖がとても嬉しそうなので、僕もちょっと気合いを入れて彼に買って貰ったゴシック調の服を着てお洒落してみた。馬子にも衣装って感じで悪くはないと思う。
あ、そんなこと言ったら選んでくれた有栖に失礼か。僕に似合うと思って買ってくれたのだから。
そんなこんなで何となく悪くない見た目になった僕と、髪型と髪色を変えて「クールで妖艶なイケメン」から「セクシーかつ妖艶なイケメン」になった有栖は水族館に来ているのだけど。
青で染まった世界に桜色の髪と言うのは、それはもう目立つ。本当に目立つ。有栖の容姿と相まって死ぬほど目立つ。サングラスをしていたって普通にバレるから今日はマスクなのだけど、そんな物では到底隠しきれない感じだ。
魚を見に来ているのだから人間になんて興味を示さない人が多かったことと、今日が平日であったことが幸いして居心地は悪くなかったけれど、それでもやはり人の視線とひそひそ話は気になるものだ。
入り口で貰ったパンフレットの中に書いてある地図を頼りに水槽を巡っていく。パンフレットには魚に餌やりをする時間やイルカショーの時間なども書いてあった。タイムスケジュールは結構細かくて全て回るのは到底無理だったので、有栖と相談して「鰯のトルネードショー」とサメのいる巨大水槽で行われる「餌やりタイム」を見に行くことにした。せっかくだからイルカショーを見るべきではあるのだけど、ありきたり過ぎるのと水が跳ねたときに服が濡れるのを危惧してやめることにした。
有栖には言わなかったけど、僕は磯の匂いが駄目だし、室内系のイベントで丁度良かったと思う。
海は無理なのに水族館は平気なのが不思議だな、と思ったけれど、小さいドームに頭を突っ込んで360度魚を眺められる小さなアトラクション的なものをやってみたときパニックを起こしかけたので、恐らく海に囲まれるのが駄目なのだろうと分かった。
有栖は純粋に楽しそうでちょっと羨ましい。でも彼が嬉しそうだと何故だか僕まで嬉しくなるので、その羨ましさも次第に何処かに消えていった。
小さな水槽たちを見て回っている内に、鰯のトルネードショーの時間になった。
これは餌の入った小さな袋を落として、それを食べようとする鰯たちが群れでトルネードを作ると言うもので、餌やりのイベントには変わりないのだが、他の魚では見られない珍しいイベントだ。
平日なのに人混みになっていてちょっとげんなりしたけれど、ショーが始まるとそんなことも忘れて魅入ってしまった。餌の袋はあちこちに落とされるので、その都度鰯の群れが形を変えて、銀色の腹をきらきらと輝かせながら泳ぐ様は美しい以外の何者でもなかった。
―――――――†
(端書き)
最近投稿頻度が落ちていてすみません。忙し……くはないはずなのですがね。
とはいえこの作品を中途半端にやめて更新しなくなる、なんてことは絶対しませんのでそこだけはご安心ください。終わりまでちゃんと書きあげます。
余談ですが海洋恐怖症の範囲(?)がよく分からないので遊沙の設定がちょっとガバいかもしれませんがご了承ください。作者は沖縄でシュノーケリング中にパニックを起こして死にかけてますが、海洋恐怖症者が怖がるという画像は怖くないのです。これって海洋恐怖症なんですかねえ。有識者の方がもしいたらTwitterとかで教えてください。
有栖のそんな一言から始まって、断る理由もない僕は連れて行ってもらうことにした。冴木さんは優しい笑顔で見送ってくれた。
有栖がとても嬉しそうなので、僕もちょっと気合いを入れて彼に買って貰ったゴシック調の服を着てお洒落してみた。馬子にも衣装って感じで悪くはないと思う。
あ、そんなこと言ったら選んでくれた有栖に失礼か。僕に似合うと思って買ってくれたのだから。
そんなこんなで何となく悪くない見た目になった僕と、髪型と髪色を変えて「クールで妖艶なイケメン」から「セクシーかつ妖艶なイケメン」になった有栖は水族館に来ているのだけど。
青で染まった世界に桜色の髪と言うのは、それはもう目立つ。本当に目立つ。有栖の容姿と相まって死ぬほど目立つ。サングラスをしていたって普通にバレるから今日はマスクなのだけど、そんな物では到底隠しきれない感じだ。
魚を見に来ているのだから人間になんて興味を示さない人が多かったことと、今日が平日であったことが幸いして居心地は悪くなかったけれど、それでもやはり人の視線とひそひそ話は気になるものだ。
入り口で貰ったパンフレットの中に書いてある地図を頼りに水槽を巡っていく。パンフレットには魚に餌やりをする時間やイルカショーの時間なども書いてあった。タイムスケジュールは結構細かくて全て回るのは到底無理だったので、有栖と相談して「鰯のトルネードショー」とサメのいる巨大水槽で行われる「餌やりタイム」を見に行くことにした。せっかくだからイルカショーを見るべきではあるのだけど、ありきたり過ぎるのと水が跳ねたときに服が濡れるのを危惧してやめることにした。
有栖には言わなかったけど、僕は磯の匂いが駄目だし、室内系のイベントで丁度良かったと思う。
海は無理なのに水族館は平気なのが不思議だな、と思ったけれど、小さいドームに頭を突っ込んで360度魚を眺められる小さなアトラクション的なものをやってみたときパニックを起こしかけたので、恐らく海に囲まれるのが駄目なのだろうと分かった。
有栖は純粋に楽しそうでちょっと羨ましい。でも彼が嬉しそうだと何故だか僕まで嬉しくなるので、その羨ましさも次第に何処かに消えていった。
小さな水槽たちを見て回っている内に、鰯のトルネードショーの時間になった。
これは餌の入った小さな袋を落として、それを食べようとする鰯たちが群れでトルネードを作ると言うもので、餌やりのイベントには変わりないのだが、他の魚では見られない珍しいイベントだ。
平日なのに人混みになっていてちょっとげんなりしたけれど、ショーが始まるとそんなことも忘れて魅入ってしまった。餌の袋はあちこちに落とされるので、その都度鰯の群れが形を変えて、銀色の腹をきらきらと輝かせながら泳ぐ様は美しい以外の何者でもなかった。
―――――――†
(端書き)
最近投稿頻度が落ちていてすみません。忙し……くはないはずなのですがね。
とはいえこの作品を中途半端にやめて更新しなくなる、なんてことは絶対しませんのでそこだけはご安心ください。終わりまでちゃんと書きあげます。
余談ですが海洋恐怖症の範囲(?)がよく分からないので遊沙の設定がちょっとガバいかもしれませんがご了承ください。作者は沖縄でシュノーケリング中にパニックを起こして死にかけてますが、海洋恐怖症者が怖がるという画像は怖くないのです。これって海洋恐怖症なんですかねえ。有識者の方がもしいたらTwitterとかで教えてください。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
23
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる