51 / 142
ショピング Ⅱ(有栖視点)
しおりを挟む
遊紗の服を黒から脱却させるということで、俺はパステルカラーの服を探していた。けばけばしい色は似合わないというのもあるが、今からだと早めに春物を買ってしまってもいいかと思ったのだ。
そんなわけで、とりあえずトップスから探してみる。薄い水色か薄緑のものをメインに、白も視野に入れて吟味する。
薄い生地のシャツが良いだろうか。まだしばらく肌寒いし、タートルネックのセーターでもいいかもしれない。
結局手に取ったのは、いつか彼が見せてくれた蛾に似た薄緑色の春物シャツと、白いタートルネックセーター、青系のグラデーションがかかったTシャツ。今年流行りのコーデュロイ生地のシャツもいくつか選んだ。試着してもらって絞ればいいので多めに選ぶ。
続いてボトムスだ。パステルに合わせるので伸縮性のある生地の白いズボンを1本選ぶ。ボトムスは別色がいくつかあれば色んなものに合わせられるし、この白1本か、遊紗が気に入ったものがあればプラス1本くらいで良いだろう。多様性の時代だし、袴みたいなズボンスカートやガウチョパンツなどを着せてみてもいいのだが、そういうのは俺が勧めるものでもないだろう。着たい人が着たいものを着ればいいのだから。
今の服選びに関しては頼まれたことだから俺が決めているが、遊紗が着たくなければ無理矢理買ったりしないつもりだ。
選んだ服を遊紗に渡して試着をしてもらう。服というのは、見た目が気に入っても着心地が良くないとか、体の形に合わないといったことがよくある。買ってから気付いても遅いので、ここでちゃんと見極めておかなければならない。
遊紗の試着を待っている間、俺は他の服を見てみることにした。
ふと目に留まったのは、他とは少し毛色の違う、上品な服。シンプルな黒いシャツなのだが、袖がフリルのようになっている。貴族が着てそうな感じだ。着る人を選ぶだろうが、遊紗が着たらどうなるか非常に気になる。
遊紗は黒髪に黒目だから、確かに黒が良く似合う。黒い服でもちょっと飾り気のある服なら印象も変わるのではないだろうか。
遊紗が1枚目のシャツを着て見せてくれた。薄緑が良く似合うし、服が明るい色なので、自然と顔も明るく見える。見た目はバッチリだ。着心地も悪くないとのことなので、これは購入決定。他のも着てもらう。
その間に、俺はまたさっきの服の辺りを物色していた。ここにあるのはゴシック調のもののようだ。黒をベースに、レースやらフリルやらが使われた服が置かれている。女性も着られるようだが、一応男性向けなのでデザインはシンプルだ。肩のあたりが編み込みになっている服が遊紗に似合いそうだったので、さっきの袖がヒラヒラしたやつと一緒に着てもらうことにした。遊紗の好みとは違うかもしれないが、単純に俺が見たい。
先に渡した服たちはどれも似合ったが、いくつか本人の好みじゃなかったり着心地があんまり良くなかったりしたようなので、それを売り場に返して、買う分は5着くらいになった。ボトムスは白のズボンと茶色の7分丈ズボンの2本。
それらをカゴに入れて、俺の我が儘のために2着着てもらう。そしてまた着てもらっている間に遊紗が選んだ5着に似合うアウターを2着ほど選んでおいた。
「有栖、着たけど。どう?」
シャっとカーテンを開けた遊紗を見て、俺は思わず顔を覆ってしゃがみこんでしまった。
あまりに似合いすぎる。色的には悪魔に近いが、まるで天使のようだった。
「やっぱ似合ってない?」
突然しゃがみこんだ俺に戸惑いながら、そんなことを言う遊紗。
「…………とても似合っている。お前が嫌じゃなければ買って着て欲しいくらいだ」
「そう、良かった。…………着心地は悪くないし、デザインも嫌いじゃないよ。あんまり着ないタイプだからちょっと落ち着かないけど」
「そうか」
もう1着の方もびっくりするくらい似合って、俺の心臓の辺りがキュッとなる感覚を覚えた。
なんだろう、このゲーム風に言うとHPが削られていく感じは。何かがドカンとダイレクトに心に来る。
可愛いという感情に近い気がする。
結局その2着も買って、アウターの着心地も問題なかったようなのでそれも買って、合計11着を買うことになった。
それなりの金額にはなったが、高いものはいいものなのでその分長く着られる。
服屋を出た後はフードコートで昼食を食べ、珍しい店を見つけては中に入ってみるということを繰り返した。冴木用にお土産もいくつか買って、帰路に着く。
遊紗からは服代を払うと何度も言われたが、それは許可しなかった。元々俺が彼の服を買うつもりだったしな。
――――――――――――✝︎
(端書き)
作者はファッションに詳しくないので、コーデュロイ生地の名前が分からず「なんか流行りの生地」でGoogle検索しました。出てきてくれて助かりました。
ちなみに「なんかザラザラした生地」と「たてじまの生地」では出てきませんでした。
そんなわけで、とりあえずトップスから探してみる。薄い水色か薄緑のものをメインに、白も視野に入れて吟味する。
薄い生地のシャツが良いだろうか。まだしばらく肌寒いし、タートルネックのセーターでもいいかもしれない。
結局手に取ったのは、いつか彼が見せてくれた蛾に似た薄緑色の春物シャツと、白いタートルネックセーター、青系のグラデーションがかかったTシャツ。今年流行りのコーデュロイ生地のシャツもいくつか選んだ。試着してもらって絞ればいいので多めに選ぶ。
続いてボトムスだ。パステルに合わせるので伸縮性のある生地の白いズボンを1本選ぶ。ボトムスは別色がいくつかあれば色んなものに合わせられるし、この白1本か、遊紗が気に入ったものがあればプラス1本くらいで良いだろう。多様性の時代だし、袴みたいなズボンスカートやガウチョパンツなどを着せてみてもいいのだが、そういうのは俺が勧めるものでもないだろう。着たい人が着たいものを着ればいいのだから。
今の服選びに関しては頼まれたことだから俺が決めているが、遊紗が着たくなければ無理矢理買ったりしないつもりだ。
選んだ服を遊紗に渡して試着をしてもらう。服というのは、見た目が気に入っても着心地が良くないとか、体の形に合わないといったことがよくある。買ってから気付いても遅いので、ここでちゃんと見極めておかなければならない。
遊紗の試着を待っている間、俺は他の服を見てみることにした。
ふと目に留まったのは、他とは少し毛色の違う、上品な服。シンプルな黒いシャツなのだが、袖がフリルのようになっている。貴族が着てそうな感じだ。着る人を選ぶだろうが、遊紗が着たらどうなるか非常に気になる。
遊紗は黒髪に黒目だから、確かに黒が良く似合う。黒い服でもちょっと飾り気のある服なら印象も変わるのではないだろうか。
遊紗が1枚目のシャツを着て見せてくれた。薄緑が良く似合うし、服が明るい色なので、自然と顔も明るく見える。見た目はバッチリだ。着心地も悪くないとのことなので、これは購入決定。他のも着てもらう。
その間に、俺はまたさっきの服の辺りを物色していた。ここにあるのはゴシック調のもののようだ。黒をベースに、レースやらフリルやらが使われた服が置かれている。女性も着られるようだが、一応男性向けなのでデザインはシンプルだ。肩のあたりが編み込みになっている服が遊紗に似合いそうだったので、さっきの袖がヒラヒラしたやつと一緒に着てもらうことにした。遊紗の好みとは違うかもしれないが、単純に俺が見たい。
先に渡した服たちはどれも似合ったが、いくつか本人の好みじゃなかったり着心地があんまり良くなかったりしたようなので、それを売り場に返して、買う分は5着くらいになった。ボトムスは白のズボンと茶色の7分丈ズボンの2本。
それらをカゴに入れて、俺の我が儘のために2着着てもらう。そしてまた着てもらっている間に遊紗が選んだ5着に似合うアウターを2着ほど選んでおいた。
「有栖、着たけど。どう?」
シャっとカーテンを開けた遊紗を見て、俺は思わず顔を覆ってしゃがみこんでしまった。
あまりに似合いすぎる。色的には悪魔に近いが、まるで天使のようだった。
「やっぱ似合ってない?」
突然しゃがみこんだ俺に戸惑いながら、そんなことを言う遊紗。
「…………とても似合っている。お前が嫌じゃなければ買って着て欲しいくらいだ」
「そう、良かった。…………着心地は悪くないし、デザインも嫌いじゃないよ。あんまり着ないタイプだからちょっと落ち着かないけど」
「そうか」
もう1着の方もびっくりするくらい似合って、俺の心臓の辺りがキュッとなる感覚を覚えた。
なんだろう、このゲーム風に言うとHPが削られていく感じは。何かがドカンとダイレクトに心に来る。
可愛いという感情に近い気がする。
結局その2着も買って、アウターの着心地も問題なかったようなのでそれも買って、合計11着を買うことになった。
それなりの金額にはなったが、高いものはいいものなのでその分長く着られる。
服屋を出た後はフードコートで昼食を食べ、珍しい店を見つけては中に入ってみるということを繰り返した。冴木用にお土産もいくつか買って、帰路に着く。
遊紗からは服代を払うと何度も言われたが、それは許可しなかった。元々俺が彼の服を買うつもりだったしな。
――――――――――――✝︎
(端書き)
作者はファッションに詳しくないので、コーデュロイ生地の名前が分からず「なんか流行りの生地」でGoogle検索しました。出てきてくれて助かりました。
ちなみに「なんかザラザラした生地」と「たてじまの生地」では出てきませんでした。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢?いま忙しいので後でやります
みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった!
しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢?
私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。
天啓によると殿下の婚約者ではなくなります
ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。
フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。
●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移要素はありません。
使い捨ての元神子ですが、二回目はのんびり暮らしたい
夜乃すてら
BL
一度目、支倉翠は異世界人を使い捨ての電池扱いしていた国に召喚された。双子の妹と信頼していた騎士の死を聞いて激怒した翠は、命と引き換えにその国を水没させたはずだった。
しかし、日本に舞い戻ってしまう。そこでは妹は行方不明になっていた。
病院を退院した帰り、事故で再び異世界へ。
二度目の国では、親切な猫獣人夫婦のエドアとシュシュに助けられ、コフィ屋で雑用をしながら、のんびり暮らし始めるが……どうやらこの国では魔法士狩りをしているようで……?
※なんかよくわからんな…と没にしてた小説なんですが、案外いいかも…?と思って、試しにのせてみますが、続きはちゃんと考えてないので、その時の雰囲気で書く予定。
※主人公が受けです。
元々は騎士ヒーローもので考えてたけど、ちょっと迷ってるから決めないでおきます。
※猫獣人がひどい目にもあいません。
(※R指定、後から付け足すかもしれません。まだわからん。)
※試し置きなので、急に消したらすみません。
BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました
厘/りん
BL
ナルン王国の下町に暮らす ルカ。
この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。
ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。
国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。
☆英雄騎士 現在28歳
ルカ 現在18歳
☆第11回BL小説大賞 21位
皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
完結【BL】紅き月の宴~Ωの悪役令息は、αの騎士に愛される。
梅花
BL
俺、アーデルハイド伯爵家次男のルーカス・アーデルハイドは悪役令息だった。
悪役令息と気付いたのは、断罪前々日の夜に激しい頭痛に襲われ倒れた後。
目を覚ました俺はこの世界が妹がプレイしていたBL18禁ゲーム『紅き月の宴』の世界に良く似ていると思い出したのだ。
この世界には男性しかいない。それを分ける性別であるα、β、Ωがあり、Ωが子供を孕む。
何処かで聞いた設定だ。
貴族社会では大半をαとβが占める中で、ルーカスは貴族には希なΩでそのせいか王子の婚約者になったのだ。
だが、ある日その王子からゲームの通り婚約破棄をされてしまう。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる