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看病(有栖視点)
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俺は遊沙を姫抱っこの形で抱き上げて、彼の部屋に連れて行った。
ベッドに寝かせて、布団を掛けてやる。額に触れてみると、酷い熱だった。さっき頭を撫でたときはこたつに入っているせいだと思ってあまり気にしていなかった。
ええっと、俺が熱を出したとき、冴木は何をしてくれたっけ。確か、濡れたタオルで汗を拭いてくれて、氷枕を用意してくれて……あとは、粥か。
俺は料理とかしたことないが、ネットで調べれば作り方くらい出てくるだろう。
俺は一階の手洗い場に向かうと、風呂用の桶にぬるま湯を入れて、そこにタオルを付けて持ってきた。遊沙が着ているシャツの前だけ開けて体を拭いてやろうとして、小さく眉を顰めた。
遊沙の白くて骨が浮いた体には、無数の傷跡があった。以前あの下品な奴らに日常的に暴行されているような話をしていたので、その時の傷だろう。
打ち身のような青痣や切り傷の痕が主だったが、ところどころ所謂根性焼きと呼ばれるような痕もあって、ふつふつと怒りが湧き上がる。こんなに細くて小柄な子に三人がかりでこんなことをするなんて。
モデルという立場上、事件沙汰にするのは得策ではないが、もし次に出会ったら手が出てしまいそうだ。
今まで一人暮らしだったし、親には言っていないのだろう。冴木にも「知らない人に暴行を受けた」と嘘を吐いていたくらいだし。
いけない。早く拭いてあげないと。深呼吸をして気を取り直すと、なるべく優しく汗を拭いてやる。下半身はさすがに憚られるので、ズボンをまくって膝下辺りまで拭いてやった。服を着せ直して、氷枕を作るために一階に降りる。
確か氷枕用のゴムで出来た袋があったと思うが、場所が分からないのでビニール袋で代用する。
ビニール袋に氷をありったけ入れて、袋の口を閉めてからタオルで巻く。二階に戻って彼の頭の下に敷いてやると、また一階に引き返して粥を用意する。
ネットで調べてみると、単に白米を水で煮ればいいだけのようだった。米を研ぐのに若干苦戦して時間がかかってしまったが、初めてにしてはそれなりに出来た。塩と砂糖を間違えないように注意しながら味付けして味見もして、茶碗に盛って二階に上がる。
しかし、ここで一つ誤算があった。
遊沙が、粥を一口も食べてくれなかったのだ。スプーンで掬って口元に運んでも、猛烈に嫌がって口に含んですらくれない。何か食べないといけないだろうと思い、軽く話しかけながら何度もトライしてみたが、結局ダメだった。
今は気分じゃないのかもしれない。後でもう一度食べさせてみよう。
ベッド脇に椅子を持ってきて、そこに座って彼を眺める。
彼の寝顔は、苦しそうでありながら、どこか可愛く見えた。
…………可愛い? 男だぞ、彼は。
最近の俺は、何か変だ。前の俺だったら、誰かのことを看病するなんて絶対にしなかったはずだ。まあそれだけ大事に思っている同世代がいなかったからではあるけど。もし冴木が病気になったら、俺だって看病したかもしれない。だけど、自分でも、この何かと縁のある青年にここまで親身になる理由が分からなかった。
友人だからか? ただ友人だっていう理由で、家にまで住まわせているのだろうか?
…………分からない。自分で自分が分からなかった。
きっと、友人なんて出来たことがなかったから、距離感が掴めずにいるのだろう。
俺はそう思うことにした。
ベッドに寝かせて、布団を掛けてやる。額に触れてみると、酷い熱だった。さっき頭を撫でたときはこたつに入っているせいだと思ってあまり気にしていなかった。
ええっと、俺が熱を出したとき、冴木は何をしてくれたっけ。確か、濡れたタオルで汗を拭いてくれて、氷枕を用意してくれて……あとは、粥か。
俺は料理とかしたことないが、ネットで調べれば作り方くらい出てくるだろう。
俺は一階の手洗い場に向かうと、風呂用の桶にぬるま湯を入れて、そこにタオルを付けて持ってきた。遊沙が着ているシャツの前だけ開けて体を拭いてやろうとして、小さく眉を顰めた。
遊沙の白くて骨が浮いた体には、無数の傷跡があった。以前あの下品な奴らに日常的に暴行されているような話をしていたので、その時の傷だろう。
打ち身のような青痣や切り傷の痕が主だったが、ところどころ所謂根性焼きと呼ばれるような痕もあって、ふつふつと怒りが湧き上がる。こんなに細くて小柄な子に三人がかりでこんなことをするなんて。
モデルという立場上、事件沙汰にするのは得策ではないが、もし次に出会ったら手が出てしまいそうだ。
今まで一人暮らしだったし、親には言っていないのだろう。冴木にも「知らない人に暴行を受けた」と嘘を吐いていたくらいだし。
いけない。早く拭いてあげないと。深呼吸をして気を取り直すと、なるべく優しく汗を拭いてやる。下半身はさすがに憚られるので、ズボンをまくって膝下辺りまで拭いてやった。服を着せ直して、氷枕を作るために一階に降りる。
確か氷枕用のゴムで出来た袋があったと思うが、場所が分からないのでビニール袋で代用する。
ビニール袋に氷をありったけ入れて、袋の口を閉めてからタオルで巻く。二階に戻って彼の頭の下に敷いてやると、また一階に引き返して粥を用意する。
ネットで調べてみると、単に白米を水で煮ればいいだけのようだった。米を研ぐのに若干苦戦して時間がかかってしまったが、初めてにしてはそれなりに出来た。塩と砂糖を間違えないように注意しながら味付けして味見もして、茶碗に盛って二階に上がる。
しかし、ここで一つ誤算があった。
遊沙が、粥を一口も食べてくれなかったのだ。スプーンで掬って口元に運んでも、猛烈に嫌がって口に含んですらくれない。何か食べないといけないだろうと思い、軽く話しかけながら何度もトライしてみたが、結局ダメだった。
今は気分じゃないのかもしれない。後でもう一度食べさせてみよう。
ベッド脇に椅子を持ってきて、そこに座って彼を眺める。
彼の寝顔は、苦しそうでありながら、どこか可愛く見えた。
…………可愛い? 男だぞ、彼は。
最近の俺は、何か変だ。前の俺だったら、誰かのことを看病するなんて絶対にしなかったはずだ。まあそれだけ大事に思っている同世代がいなかったからではあるけど。もし冴木が病気になったら、俺だって看病したかもしれない。だけど、自分でも、この何かと縁のある青年にここまで親身になる理由が分からなかった。
友人だからか? ただ友人だっていう理由で、家にまで住まわせているのだろうか?
…………分からない。自分で自分が分からなかった。
きっと、友人なんて出来たことがなかったから、距離感が掴めずにいるのだろう。
俺はそう思うことにした。
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