11 / 142
嘘には嘘を Ⅳ(御園視点)
しおりを挟む
次の日、遊沙のいる病院に行ってみると、遊沙は一日入院することになると聞いた。
何が『たいしたことない』だ。
そういうのは絆創膏を貼ったら治る傷に使う言葉だ。
病室に入ると、遊沙はベッドで眠っていた。傍らには知らない男がうたた寝をしている。この男が遊沙を助けてくれたのかという感謝と、ちょっとした嫉妬が湧き上がる。遊沙と一晩同じ部屋にいたかもしれないなんて、羨ましすぎる。
オレは一人で悶えた後、思わずバンッと扉を殴ってしまった。遊沙がびっくりして飛び起きる。うたた寝男も驚いて目を覚ました。
うたた寝男のことはとりあえず無視して、一直線に遊沙に近付く。
こちらの気も知らないで、遊沙はニコニコといつもの笑顔を貼り付けて、大丈夫大丈夫と言う。
そんなにオレは頼りないのか。
遊沙とうたた寝男こと冴木は、口を揃えて階段から落ちたと言った。こんなよく分からない奴と口裏を合わせていることも、なんとも腹立たしくて仕方なかった。
オレは何があったか知っているんだぞと、よっぽど言ってやろうかと思った。
だけど、きっと遊沙はオレに心配をかけまいと嘘をついているのだろう。そんな遊沙の気持ちを踏みにじりたくはなかった。
オレは騙されてあげることにした。代わりに、遊沙にも騙されてもらう。オレが何にも知らないと思っていてもらおう。
自分を暴行した奴らがどうなったかなんて、優しい遊沙は知らない方がいいのだから。
冴木のことは正直信用できなかった。
というのも、昨日ボコった奴らから聞いた話によると、遊沙を助けたのは自分たちより背が高く、声が低い奴だったということで、冴木の見た目や声とはどことなく一致しないからだ。
遊沙の身長は160と少しくらい。オレと冴木は大体同じくらいで170中間くらいで、昨日の奴らも大体それくらいだった。これより高いとなると、180はあるかもしれない。
声だって、冴木のものはとても低いとは言えなかった。
そう考えると、助けた奴は確実に冴木じゃない。では本当に助けた奴は誰なのか? 冴木の目的は何なのか?
分からない事だらけで、頭がおかしくなりそうだった。
ただ、良くない目的があるのなら昨日の夜の内にできたはずだし、遊沙が寝ている時も一緒に寝落ちするような奴だ。悪い奴というわけではないだろう。
とにかく、遊沙が明日元気に大学に来てくれるまで安心はできなかった。
昨日の奴らは今頃病院だろうし、オレのことを警察に話したところで奴らの悪行が露わになるだけだ。無視して大丈夫だろう。
冴木のことはこれから注意を払っておけばいい。
そう結論づけて、オレは大人しく家に帰った。あんまり居座って、遊沙の傷に障るようなことになったら大変だ。
何が『たいしたことない』だ。
そういうのは絆創膏を貼ったら治る傷に使う言葉だ。
病室に入ると、遊沙はベッドで眠っていた。傍らには知らない男がうたた寝をしている。この男が遊沙を助けてくれたのかという感謝と、ちょっとした嫉妬が湧き上がる。遊沙と一晩同じ部屋にいたかもしれないなんて、羨ましすぎる。
オレは一人で悶えた後、思わずバンッと扉を殴ってしまった。遊沙がびっくりして飛び起きる。うたた寝男も驚いて目を覚ました。
うたた寝男のことはとりあえず無視して、一直線に遊沙に近付く。
こちらの気も知らないで、遊沙はニコニコといつもの笑顔を貼り付けて、大丈夫大丈夫と言う。
そんなにオレは頼りないのか。
遊沙とうたた寝男こと冴木は、口を揃えて階段から落ちたと言った。こんなよく分からない奴と口裏を合わせていることも、なんとも腹立たしくて仕方なかった。
オレは何があったか知っているんだぞと、よっぽど言ってやろうかと思った。
だけど、きっと遊沙はオレに心配をかけまいと嘘をついているのだろう。そんな遊沙の気持ちを踏みにじりたくはなかった。
オレは騙されてあげることにした。代わりに、遊沙にも騙されてもらう。オレが何にも知らないと思っていてもらおう。
自分を暴行した奴らがどうなったかなんて、優しい遊沙は知らない方がいいのだから。
冴木のことは正直信用できなかった。
というのも、昨日ボコった奴らから聞いた話によると、遊沙を助けたのは自分たちより背が高く、声が低い奴だったということで、冴木の見た目や声とはどことなく一致しないからだ。
遊沙の身長は160と少しくらい。オレと冴木は大体同じくらいで170中間くらいで、昨日の奴らも大体それくらいだった。これより高いとなると、180はあるかもしれない。
声だって、冴木のものはとても低いとは言えなかった。
そう考えると、助けた奴は確実に冴木じゃない。では本当に助けた奴は誰なのか? 冴木の目的は何なのか?
分からない事だらけで、頭がおかしくなりそうだった。
ただ、良くない目的があるのなら昨日の夜の内にできたはずだし、遊沙が寝ている時も一緒に寝落ちするような奴だ。悪い奴というわけではないだろう。
とにかく、遊沙が明日元気に大学に来てくれるまで安心はできなかった。
昨日の奴らは今頃病院だろうし、オレのことを警察に話したところで奴らの悪行が露わになるだけだ。無視して大丈夫だろう。
冴木のことはこれから注意を払っておけばいい。
そう結論づけて、オレは大人しく家に帰った。あんまり居座って、遊沙の傷に障るようなことになったら大変だ。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
男の娘を好きに成っても良いですか?
小春かぜね
BL
とある投稿サイトで、自分を応援してくれる人を、女性だと信じ好意を持ってしまった主人公。
相手のプロフィールから、思い思いに女性の姿を想像し、日増しにその想いは強く成っていく。
相手プロフィールからの情報で、自分との年齢差が有る事から、過度の交流を悩んでいた主人公だが、意外にも相手側が積極的の感じだ!?
これを機会と捉えた主人公は、女性だと思われる人とやりとりを始めるが……衝撃事実に発展する!!!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
使命を全うするために俺は死にます。
あぎ
BL
とあることで目覚めた主人公、「マリア」は悪役というスペックの人間だったことを思い出せ。そして悲しい過去を持っていた。
とあることで家族が殺され、とあることで婚約破棄をされ、その婚約破棄を言い出した男に殺された。
だが、この男が大好きだったこともしかり、その横にいた女も好きだった
なら、昔からの使命である、彼らを幸せにするという使命を全うする。
それが、みなに忘れられても_
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
幸せのカタチ
杏西モジコ
BL
幼馴染の須藤祥太に想いを寄せていた唐木幸介。ある日、祥太に呼び出されると結婚の報告をされ、その長年の想いは告げる前に玉砕する。ショックのあまり、その足でやけ酒に溺れた幸介が翌朝目覚めると、そこは見知らぬ青年、福島律也の自宅だった……。
拗れた片想いになかなか決着をつけられないサラリーマンが、新しい幸せに向かうお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる