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第三章 森の薬師編
75 エリアノ教会の審問官
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「メラメラ、助けてくれてありがとう」
マナは戻ってきたメラメラを抱きしめてやった。
「メラメラ、がんばったよ~」
「うん、本当に頑張ったね」
メラメラが、あの恐ろしい魔導師を退けても、マナの心は平常だった。リリーシャ・ミエルの存在を感じてから、自分にも同じような力があるのかもしれないと思っていた。そして、それが証明された。マナはそれを宿命として受け入れた。
「まいったなぁ。もう魔力がないや」
シャルが苦し気に言った。やられた肩から血が広がっていた。
「どうしよう、このままじゃシャルが……」
その時、夕日を遮って何者かの影が差した。マナは、あの魔導師が戻ってきたのかと思って慄いたが、
「おまえたち、無事か?」
そうして箒に乗って降りてきたのは、マナの知らない瑠璃髪の魔女だった。
「お母さん、良かった……」
シャルはその魔女を見て安心すると気を失った。
♢♢♢
夜になる頃にマナが家に帰ると、ニイナが激怒した。
「お前、あんまり心配させるなよ!!」
「ごめんなさい……」
「あのね、あのね、マナ、やくそう探してたの! おうじ様に探してたの!」
メラメラが一生懸命、説明すると。ニイナの表情が和らいだ。
「まったくお前は……まあ、無事で良かったよ。薬草は見つかったのか?」
「はい」
マナがカバンから陽明草を出して見せると、ニイナは逡巡してから、苦い顔になって言った。
「バカだなお前は、ここは薬学の国ロディスだぞ。薬王局にでも行けば、どんな薬草でも手に入る」
「あっ……そう、ですよね……」
ああ、またやってしまった。マナは悲しくなる。アルカードを思う余り考えなしに動いた挙句に、多くの人に迷惑をかけて、シャルには傷まで負わせてしまった。それが何の意味もなかった。
ニイナはマナの気持ちを良く察して、頭を強くなで回す。
「そんな顔するな。この花は王子に届けてやる。きっと、泣いて喜ぶぞ」
そういうニイナに、マナは寂しく笑った。泣いて喜ぶなんて、ニイナが元気付ける為に言ってくれているだけだと思っていた。
♢♢♢
アルカードが熱病を克服して目を覚ました時、傍らの小さな花瓶に一輪の花が差してあった。
マナが取ってきたものだと聞くと、彼はそれを栞にして、いつまでも大切にして持ち歩いたという。
♢♢♢
帝国内の、あるエリアノ教会にて、厳つい面の男が女神の像に祈りを捧げていた。見た目は聖職者だが、戦士のような屈強さが見え隠れしている。そして、近くには蝶のような翅を羽ばたかせるフェアリーが浮かんでいた。
一人の騎士が、彼の近くに膝を付いて報告した。
「アクスウェル様、例の魔導師が失敗しました」
アクスウェルと呼ばれた男は、祈りを止めて立ち上がた。
「あの魔導師を退けたか。確定だな、転生者だ」
それから彼は憮然として、不機嫌を隠さずに言う。
「奴は無事なのか?」
「重傷は負っているものの、命までは」
「そうか。奴が始末してくれれば、面倒がなかったものを。仕方がない、わたしが自ら出向くしかあるまい」
彼の傍らで振り向いたフェアリーの透き通った翅は火のように赤く、瞳は炎が燃えているように輝いていた。そして、アクスウェルの持つ杖の先端には、ファイアオパールが嵌め込んであった。
マナは戻ってきたメラメラを抱きしめてやった。
「メラメラ、がんばったよ~」
「うん、本当に頑張ったね」
メラメラが、あの恐ろしい魔導師を退けても、マナの心は平常だった。リリーシャ・ミエルの存在を感じてから、自分にも同じような力があるのかもしれないと思っていた。そして、それが証明された。マナはそれを宿命として受け入れた。
「まいったなぁ。もう魔力がないや」
シャルが苦し気に言った。やられた肩から血が広がっていた。
「どうしよう、このままじゃシャルが……」
その時、夕日を遮って何者かの影が差した。マナは、あの魔導師が戻ってきたのかと思って慄いたが、
「おまえたち、無事か?」
そうして箒に乗って降りてきたのは、マナの知らない瑠璃髪の魔女だった。
「お母さん、良かった……」
シャルはその魔女を見て安心すると気を失った。
♢♢♢
夜になる頃にマナが家に帰ると、ニイナが激怒した。
「お前、あんまり心配させるなよ!!」
「ごめんなさい……」
「あのね、あのね、マナ、やくそう探してたの! おうじ様に探してたの!」
メラメラが一生懸命、説明すると。ニイナの表情が和らいだ。
「まったくお前は……まあ、無事で良かったよ。薬草は見つかったのか?」
「はい」
マナがカバンから陽明草を出して見せると、ニイナは逡巡してから、苦い顔になって言った。
「バカだなお前は、ここは薬学の国ロディスだぞ。薬王局にでも行けば、どんな薬草でも手に入る」
「あっ……そう、ですよね……」
ああ、またやってしまった。マナは悲しくなる。アルカードを思う余り考えなしに動いた挙句に、多くの人に迷惑をかけて、シャルには傷まで負わせてしまった。それが何の意味もなかった。
ニイナはマナの気持ちを良く察して、頭を強くなで回す。
「そんな顔するな。この花は王子に届けてやる。きっと、泣いて喜ぶぞ」
そういうニイナに、マナは寂しく笑った。泣いて喜ぶなんて、ニイナが元気付ける為に言ってくれているだけだと思っていた。
♢♢♢
アルカードが熱病を克服して目を覚ました時、傍らの小さな花瓶に一輪の花が差してあった。
マナが取ってきたものだと聞くと、彼はそれを栞にして、いつまでも大切にして持ち歩いたという。
♢♢♢
帝国内の、あるエリアノ教会にて、厳つい面の男が女神の像に祈りを捧げていた。見た目は聖職者だが、戦士のような屈強さが見え隠れしている。そして、近くには蝶のような翅を羽ばたかせるフェアリーが浮かんでいた。
一人の騎士が、彼の近くに膝を付いて報告した。
「アクスウェル様、例の魔導師が失敗しました」
アクスウェルと呼ばれた男は、祈りを止めて立ち上がた。
「あの魔導師を退けたか。確定だな、転生者だ」
それから彼は憮然として、不機嫌を隠さずに言う。
「奴は無事なのか?」
「重傷は負っているものの、命までは」
「そうか。奴が始末してくれれば、面倒がなかったものを。仕方がない、わたしが自ら出向くしかあるまい」
彼の傍らで振り向いたフェアリーの透き通った翅は火のように赤く、瞳は炎が燃えているように輝いていた。そして、アクスウェルの持つ杖の先端には、ファイアオパールが嵌め込んであった。
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