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第二章 聖メディアーノ学園編
22 入学パーティーの事件
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それが誰の声かはマナには分からなかった。倒れる前に誰かがマナを受け止めて、給仕の驚く声といくつかの小さな悲鳴が重なった。それに少し遅れて、複数のグラスが床に落ちて砕け、ガラス片と飲み物が飛び散った。マナがその音に驚いて顔を上げると、抱き止めてくれたのがユリカだと知れた。ユリカはマナを守ってドリンクを背中に浴びてしまっていた。
「ちょっと! 今、わざとぶつかっただろ!」
シャルが怒って誰かに詰め寄っていた。
「まあ、はしたない言葉だこと」
見た事がない赤い制服の三人組がいて、シャルはそれらと対峙していた。どうやら、この三人の中の一人が、マナにちょっかいを出してきたらしい。マナは状況が呑み込めずに、呆然としてしまった。
「はしたなくて結構! わたしも平民だからね!」
それを聞いた三人の中のリーダー格らしい令嬢が高笑いした。
「下賤の者同士、お似合いですわね」
「あんた、魔法でぶっ飛ばしてやろうか」
「魔法だなんて、つまらない脅しを」
シャルの正体を知らない令嬢は、それが脅しだと決めつけていた。出来れば魔法を見せつけたいところだが、魔法はおいそれと使っていいものではなかった。令嬢たちを睨みつけるシャルに、ユリカが言った。
「いけません、シャル様、ここは穏便に」
「でも!」
「幸い、マナ様に怪我はありません。ですから、これ以上、事を荒立てる必要はありません」
ユリカの説得で、シャルは渋々引き下がった。
令嬢の一人がマナを睨み、憎しみをぶつけてくる。
「平民風情が、調子に乗って! アルカード様やティア様のような王族に平民が近づくなど、許されない事です! よく覚えておきなさい!」
凄まじい剣幕だったので、マナは震えてしまった。ユリカは代わりに憎しみを受け止めるようにマナを庇いながら、まっすぐに令嬢たちを見ていた。
「マナをいじめるな!」
上から声が聞こえてきて、令嬢たちが怪訝に見上げる。宙を飛んでいるメラメラが、上から彼女らを指して叫んだ。
「悪い奴! バ~カ! ブ~ス!」
「な、何なのあれは!?」
その騒ぎを聞きつけて、アルカードとティア姫が駆け付ける。
状況的に良くない事が起こったのは分かる。アルカードはマナの無事を確認して、ひとまずは安心した。
「何があったんだい?」
「あいつらがさ!」とシャルが指差しが先には誰もいなかった。「なんて逃げ足の速い奴らだ」
シャルは怒るよりも呆れてしまった。
「大丈夫ですか?」
ティア姫が美しい模様のあるハンカチで、ユリカの濡れた衣服を拭き始める。いつも冷静なゆりかでも、これには慌てた。
「いけません、姫様、わたしのような者にそんな事を」
ティア姫は周りの目など気にせずに、熱心にユリカの衣服を拭いていた。一国の王女が名も知らぬ従者を労わる姿は称賛されるべきものだ。周りで見ていた人々の多くが、ティア姫の優しさに感動していた。
「姫様、ありがとうございました。せめてものお返しに、このハンカチは綺麗にしてお返しいたします」
「いいのよ、気にしないでちょうだい」
あのユリカが、目に涙を浮かべていた。
マナは、ティアの優しさに心打たれると同時に、異様な絶望感に苛まれた。彼女は、はっきりと悟ってしまったのだ。
――この人には、絶対に勝てない……
マナはすっかり居た堪れなくなって、ユリカと一緒に隅の方に引っ込んでしまった。それからは、ため息ばかりついていた。ユリカは、先ほどの事件がマナを落ち込ませていると思っていた。よもや、ティア姫の存在自体がマナを苦しめているとは思うまい。
メラメラは相変わらずご馳走を食べていたが、時々手を休めては、マナの事を気にしていた。
「あんな奴の言った事なんて、気にする必要ないよ」
「うん……」
息巻いて言うシャルに対して、マナは上の空だった。シャルがあんな奴と揶揄する令嬢など、ティア姫の前で霞んでしまう。ちょっかいを出してきた令嬢が、あれほどの剣幕であったのにも関わらず、マナはそれを忘れてティア姫の事ばかり考えていた。
マナは、アルカードの事は好きだったが、正直言って王妃になってやろうという気概はなかった。なれたらいいな、という淡い期待を持つ程度で、アルカードと結ばれる未来など想像するのもおこがましいとすら思っていた。それなのに、ティア姫がアルカードの妃になるかもしれないと思うと、胸が苦しくなった。
――ティア様には、きっと誰もかなわない。
アルメリアやゼノビアも、妃候補として申し分ないが、ティア姫はずば抜けている。
マナはティア姫の事をほとんど知らないが、彼女はそう思わせる空気を持っていた。
いっそ、何もかも諦めて、ファンタジー世界の学園生活を満喫しようと思ったりもしたが、アルカードを慕う気持ちはどうにもできなかった。
マナは考えてばかりいたので、音楽が変わった事に気付かなかった。それに合わせて、周囲の雰囲気も一変する。会場の中央ではダンスが始まっていた。貴族の令嬢、令息が手を取り合って、ワルツを踊る。
「マナ!」
「は、はひぃっ!?」
急に声を掛けられて、マナは声が引きつってしまった。彼女の知らぬ間に、アルカードが間近に来ていた。
「探したよ。僕たちも踊ろう」
「え? え? 踊るって?」
「この日の為に練習していたじゃないか」
アルカードはマナの手を握ってエスコートする。
「さあ、行こう」
その時、ユリカはあまり良い顔をしなかった。先ほどの貴族の令嬢たちの事が頭を過ったのだ。しかし、侍女に過ぎない彼女が、王太子のアルカードを止めることは出来なかった。
すでに何組か踊っている中に、マナとアルカードも入っていった。
「あの、わたしまだうまく踊れなくて」
「いいよ、僕がリードするから」
二人のダンスが始まると、否応なしに注目が集まった。男子はマナの瞳の美しさと可愛らしさに目を奪われ、女子はたいてい悔しがって、その中には歯ぎしりする令嬢もいた。
マナが足を引っ張るので、二人のダンスは決して優雅とは言えなかった。危うくマナがアルカードの足を踏みそうになって、バランスを崩す場面もあり、アルカードがマナに接近して腰を支えると、女生徒は呪わし気にマナを見つめた。
憧れの王子様とのダンス、この瞬間は、マナの人生の中で一番幸せな時だった。王子に助けられながら、例え拙くとも最後まで踊りきった時、マナはまだ諦めたくないと強く思った。
後にはアルメリアとティア姫もアルカードと踊り、マナは最初にアルカードと踊って良かったと心から思わされた。二人の性格の違いがダンスにも現われていて、アルメリアとのダンスは切れが良く瀟洒で、ティア姫とのダンスは宙を舞に羽毛のように柔らかで優美だった。どちらのダンスも完成されていて、喝采を浴びていた。
マナは思う、アルメリアとティア姫、この二人と比べたら、自分は遥かに劣っていると。それでも、最後まで諦めずに頑張ってみようと心に決めた。
「ちょっと! 今、わざとぶつかっただろ!」
シャルが怒って誰かに詰め寄っていた。
「まあ、はしたない言葉だこと」
見た事がない赤い制服の三人組がいて、シャルはそれらと対峙していた。どうやら、この三人の中の一人が、マナにちょっかいを出してきたらしい。マナは状況が呑み込めずに、呆然としてしまった。
「はしたなくて結構! わたしも平民だからね!」
それを聞いた三人の中のリーダー格らしい令嬢が高笑いした。
「下賤の者同士、お似合いですわね」
「あんた、魔法でぶっ飛ばしてやろうか」
「魔法だなんて、つまらない脅しを」
シャルの正体を知らない令嬢は、それが脅しだと決めつけていた。出来れば魔法を見せつけたいところだが、魔法はおいそれと使っていいものではなかった。令嬢たちを睨みつけるシャルに、ユリカが言った。
「いけません、シャル様、ここは穏便に」
「でも!」
「幸い、マナ様に怪我はありません。ですから、これ以上、事を荒立てる必要はありません」
ユリカの説得で、シャルは渋々引き下がった。
令嬢の一人がマナを睨み、憎しみをぶつけてくる。
「平民風情が、調子に乗って! アルカード様やティア様のような王族に平民が近づくなど、許されない事です! よく覚えておきなさい!」
凄まじい剣幕だったので、マナは震えてしまった。ユリカは代わりに憎しみを受け止めるようにマナを庇いながら、まっすぐに令嬢たちを見ていた。
「マナをいじめるな!」
上から声が聞こえてきて、令嬢たちが怪訝に見上げる。宙を飛んでいるメラメラが、上から彼女らを指して叫んだ。
「悪い奴! バ~カ! ブ~ス!」
「な、何なのあれは!?」
その騒ぎを聞きつけて、アルカードとティア姫が駆け付ける。
状況的に良くない事が起こったのは分かる。アルカードはマナの無事を確認して、ひとまずは安心した。
「何があったんだい?」
「あいつらがさ!」とシャルが指差しが先には誰もいなかった。「なんて逃げ足の速い奴らだ」
シャルは怒るよりも呆れてしまった。
「大丈夫ですか?」
ティア姫が美しい模様のあるハンカチで、ユリカの濡れた衣服を拭き始める。いつも冷静なゆりかでも、これには慌てた。
「いけません、姫様、わたしのような者にそんな事を」
ティア姫は周りの目など気にせずに、熱心にユリカの衣服を拭いていた。一国の王女が名も知らぬ従者を労わる姿は称賛されるべきものだ。周りで見ていた人々の多くが、ティア姫の優しさに感動していた。
「姫様、ありがとうございました。せめてものお返しに、このハンカチは綺麗にしてお返しいたします」
「いいのよ、気にしないでちょうだい」
あのユリカが、目に涙を浮かべていた。
マナは、ティアの優しさに心打たれると同時に、異様な絶望感に苛まれた。彼女は、はっきりと悟ってしまったのだ。
――この人には、絶対に勝てない……
マナはすっかり居た堪れなくなって、ユリカと一緒に隅の方に引っ込んでしまった。それからは、ため息ばかりついていた。ユリカは、先ほどの事件がマナを落ち込ませていると思っていた。よもや、ティア姫の存在自体がマナを苦しめているとは思うまい。
メラメラは相変わらずご馳走を食べていたが、時々手を休めては、マナの事を気にしていた。
「あんな奴の言った事なんて、気にする必要ないよ」
「うん……」
息巻いて言うシャルに対して、マナは上の空だった。シャルがあんな奴と揶揄する令嬢など、ティア姫の前で霞んでしまう。ちょっかいを出してきた令嬢が、あれほどの剣幕であったのにも関わらず、マナはそれを忘れてティア姫の事ばかり考えていた。
マナは、アルカードの事は好きだったが、正直言って王妃になってやろうという気概はなかった。なれたらいいな、という淡い期待を持つ程度で、アルカードと結ばれる未来など想像するのもおこがましいとすら思っていた。それなのに、ティア姫がアルカードの妃になるかもしれないと思うと、胸が苦しくなった。
――ティア様には、きっと誰もかなわない。
アルメリアやゼノビアも、妃候補として申し分ないが、ティア姫はずば抜けている。
マナはティア姫の事をほとんど知らないが、彼女はそう思わせる空気を持っていた。
いっそ、何もかも諦めて、ファンタジー世界の学園生活を満喫しようと思ったりもしたが、アルカードを慕う気持ちはどうにもできなかった。
マナは考えてばかりいたので、音楽が変わった事に気付かなかった。それに合わせて、周囲の雰囲気も一変する。会場の中央ではダンスが始まっていた。貴族の令嬢、令息が手を取り合って、ワルツを踊る。
「マナ!」
「は、はひぃっ!?」
急に声を掛けられて、マナは声が引きつってしまった。彼女の知らぬ間に、アルカードが間近に来ていた。
「探したよ。僕たちも踊ろう」
「え? え? 踊るって?」
「この日の為に練習していたじゃないか」
アルカードはマナの手を握ってエスコートする。
「さあ、行こう」
その時、ユリカはあまり良い顔をしなかった。先ほどの貴族の令嬢たちの事が頭を過ったのだ。しかし、侍女に過ぎない彼女が、王太子のアルカードを止めることは出来なかった。
すでに何組か踊っている中に、マナとアルカードも入っていった。
「あの、わたしまだうまく踊れなくて」
「いいよ、僕がリードするから」
二人のダンスが始まると、否応なしに注目が集まった。男子はマナの瞳の美しさと可愛らしさに目を奪われ、女子はたいてい悔しがって、その中には歯ぎしりする令嬢もいた。
マナが足を引っ張るので、二人のダンスは決して優雅とは言えなかった。危うくマナがアルカードの足を踏みそうになって、バランスを崩す場面もあり、アルカードがマナに接近して腰を支えると、女生徒は呪わし気にマナを見つめた。
憧れの王子様とのダンス、この瞬間は、マナの人生の中で一番幸せな時だった。王子に助けられながら、例え拙くとも最後まで踊りきった時、マナはまだ諦めたくないと強く思った。
後にはアルメリアとティア姫もアルカードと踊り、マナは最初にアルカードと踊って良かったと心から思わされた。二人の性格の違いがダンスにも現われていて、アルメリアとのダンスは切れが良く瀟洒で、ティア姫とのダンスは宙を舞に羽毛のように柔らかで優美だった。どちらのダンスも完成されていて、喝采を浴びていた。
マナは思う、アルメリアとティア姫、この二人と比べたら、自分は遥かに劣っていると。それでも、最後まで諦めずに頑張ってみようと心に決めた。
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