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最終話 戦場
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あれから二ヶ月が経った。美早の怪我は回復し、保護した子供達も少しずつ自然な笑顔を見せ始めている。
最も変化が大きかったのは、やはり政府や国会議員達だろう。組織がばらまいたリストに載っていた現役大臣や大臣経験者、その秘書達はこぞって政界を追われて警察の事情聴取を受けた。その立役者となったのは、かねてから有力視されていた若手国会議員の出井州凌平だ。大臣経験者達が抜け、空席となった議席を埋める為の選挙でもその人気を存分に活かして全国行脚を行い、見事与党一党となっている。かねてから、のちの総理大臣と噂されていたがここまでの躍進を見せるとは思っていなかっただろう。
「おい、始まるぜ」
談話室のソファーでくつろいでいた樹端が、テレビが国会中継に切り替わったのに気付いて寝転んでいた身を起こす。
「まさかこんなに早くとはね」
「あの人、凄い人だったんだね!」
「ある意味想定通りか。な、荒隆?」
「まぁな」
各々自由にくつろいでいた四人もテレビを見る為に樹端のいるソファーへと近付く。今日の中継の目的は、新たに総理大臣へと就任する議員の所信表明演説だ。総裁選挙の結果で誰がなるのかは皆知っていたが、世間の関心は演説で何を言うかに注がれていた。
『内閣総理大臣、出井州凌平くん』
名前を呼ばれた出井州が、かつて荒隆が変革者として宣言をしたのと同じ発言台へと向かう。ゆっくりと深呼吸をした後、出井州が静かに話し始めた。
『……三ヶ月前。この議場は一度、変革者を名乗るテロリストに占拠されました。あの日、中継が中断された後に見た光景を私は忘れることが出来ません。一人の科学者と思われる白衣の男に連れられ、十歳にも満たない子供達が戦う為の道具として現れたのです。その後、報道各社に送られた情報により、この国の大臣達が秘密裏に子供達に人体実験を行い、特殊な兵士を作っていたことが発覚しました。私はまず第一に、この研究に関わった施設を全て解体し、研究を凍結します。そして二度とこのような悲劇が繰り返されないよう、内閣府直属の研究機関を開示ならびに一部廃止とします』
「やるな、こいつ。そこまで言い切るか!」
出井州の演説を聞いていた樹端が口笛を吹きながら感心する。残りの四人もまさかここまでの発言をするとは思っていなかったのだろう。僅かに驚いた顔をしている。
「でもこれで、新しい被害者は生まれないんだよね!」
「ええ、やっと終わるのね」
「俺達が生きている限り、二度とこんな事は繰り返させない」
「これで俺達の復讐もお終いだ。だが」
美早と永那が両手を打ち合わせて喜び、双也は決意を新たにする。出井州の言う通りになれば、荒隆の言葉通り彼らの復讐は終わるのだ。だが、まだ彼らにはやることがあった。
「あとは国外に傭兵として出された子供達の保護だろ?」
「みんなを救って、見届けて、それでようやく私達の目的は全部達成だね!」
「その為にも、そろそろ時間よ」
言いかけた荒隆の言葉を、樹端が継ぐ。やっと被害にあった子供達を全員助けられるという事実に喜ぶ美早に、永那が喜びを抑え込みながら平静を装ってみんなの視線を集め、荒隆へと向ける。
「俺達の宣戦布告は無駄じゃなかった。今度は五人一緒ではないが、各自全力で子供達を助けよう」
「おう!」
「うん!」
荒隆の宣言を受けて、五人は談話室を後にする。それぞれの新たな戦場へ向けて旅立つ為に。例えあの宣戦布告によって、もう二度とこの国を自由に歩けなくなっていたとしても、彼らに後悔はない。助け出した子供達が、自分達と同じようにそれぞれの名前を得て、これからの未来を笑顔で暮らしていけるのならば――。
最も変化が大きかったのは、やはり政府や国会議員達だろう。組織がばらまいたリストに載っていた現役大臣や大臣経験者、その秘書達はこぞって政界を追われて警察の事情聴取を受けた。その立役者となったのは、かねてから有力視されていた若手国会議員の出井州凌平だ。大臣経験者達が抜け、空席となった議席を埋める為の選挙でもその人気を存分に活かして全国行脚を行い、見事与党一党となっている。かねてから、のちの総理大臣と噂されていたがここまでの躍進を見せるとは思っていなかっただろう。
「おい、始まるぜ」
談話室のソファーでくつろいでいた樹端が、テレビが国会中継に切り替わったのに気付いて寝転んでいた身を起こす。
「まさかこんなに早くとはね」
「あの人、凄い人だったんだね!」
「ある意味想定通りか。な、荒隆?」
「まぁな」
各々自由にくつろいでいた四人もテレビを見る為に樹端のいるソファーへと近付く。今日の中継の目的は、新たに総理大臣へと就任する議員の所信表明演説だ。総裁選挙の結果で誰がなるのかは皆知っていたが、世間の関心は演説で何を言うかに注がれていた。
『内閣総理大臣、出井州凌平くん』
名前を呼ばれた出井州が、かつて荒隆が変革者として宣言をしたのと同じ発言台へと向かう。ゆっくりと深呼吸をした後、出井州が静かに話し始めた。
『……三ヶ月前。この議場は一度、変革者を名乗るテロリストに占拠されました。あの日、中継が中断された後に見た光景を私は忘れることが出来ません。一人の科学者と思われる白衣の男に連れられ、十歳にも満たない子供達が戦う為の道具として現れたのです。その後、報道各社に送られた情報により、この国の大臣達が秘密裏に子供達に人体実験を行い、特殊な兵士を作っていたことが発覚しました。私はまず第一に、この研究に関わった施設を全て解体し、研究を凍結します。そして二度とこのような悲劇が繰り返されないよう、内閣府直属の研究機関を開示ならびに一部廃止とします』
「やるな、こいつ。そこまで言い切るか!」
出井州の演説を聞いていた樹端が口笛を吹きながら感心する。残りの四人もまさかここまでの発言をするとは思っていなかったのだろう。僅かに驚いた顔をしている。
「でもこれで、新しい被害者は生まれないんだよね!」
「ええ、やっと終わるのね」
「俺達が生きている限り、二度とこんな事は繰り返させない」
「これで俺達の復讐もお終いだ。だが」
美早と永那が両手を打ち合わせて喜び、双也は決意を新たにする。出井州の言う通りになれば、荒隆の言葉通り彼らの復讐は終わるのだ。だが、まだ彼らにはやることがあった。
「あとは国外に傭兵として出された子供達の保護だろ?」
「みんなを救って、見届けて、それでようやく私達の目的は全部達成だね!」
「その為にも、そろそろ時間よ」
言いかけた荒隆の言葉を、樹端が継ぐ。やっと被害にあった子供達を全員助けられるという事実に喜ぶ美早に、永那が喜びを抑え込みながら平静を装ってみんなの視線を集め、荒隆へと向ける。
「俺達の宣戦布告は無駄じゃなかった。今度は五人一緒ではないが、各自全力で子供達を助けよう」
「おう!」
「うん!」
荒隆の宣言を受けて、五人は談話室を後にする。それぞれの新たな戦場へ向けて旅立つ為に。例えあの宣戦布告によって、もう二度とこの国を自由に歩けなくなっていたとしても、彼らに後悔はない。助け出した子供達が、自分達と同じようにそれぞれの名前を得て、これからの未来を笑顔で暮らしていけるのならば――。
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