Innovator-変革者-

飛永ハヅム

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第十話 邂逅

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「もうやめて! その子達には何の罪もないのよ!?」
「やめさせたければ、止めてみるといい。できればですが。くつくつくつ」
「そう、わかった」
 覚悟を決めた美早みはやの瞳が発光する。
「今度は何が出てくるのですか?」
樹端たつはと違って美早みはやの能力は見えないわよ。音だもの」
「uh~♪」
 美早みはやの歌声が響き、子供達十七人全員の体がくずおれた。
美早みはや……」
「安心して、眠ってもらっただけだから。でも早く手当てしないと」
「そのためにもこいつをなんとかしないとな」
 五人の瞳が煤山すすやまに向き、発光を始める。
「くつくつくつ。私が手札を全て晒すとお思いですか? こんな時の為に隠れ潜ませた駒が!!」
「念のため、この部屋と周辺にいた人には全員さっきので眠ってもらったよ」
「なっ……!?」
 勝ち誇ったように笑っていた煤山すすやまの笑みが凍りつく。
「さすがに聞こえず眠らない駒はいないのだろう?」
「くっ」
 美早みはや荒隆あらたかの言葉に窮地を察した煤山すすやまが蹴り開けた扉に向かい逃走を図る。
「逃がさない!」
 永那えいなの手に五人にだけ見える透明なムチが現れ煤山すすやまの左腕を捕らえ引っ張る。
「さて、知ってること洗いざらい吐いてもらおうか」
「言っとくが、そいつが俺達の中で一番エグイからな。能力も性格も」
 一見手ぶらに見える荒隆あらたかと、幻物質で出来た透明な大剣を手にした双也なみやが膝をついた煤山すすやまの前に立つ。
「次逃げようとしたらこいつの腹でぶん殴るから覚悟しといてくれ」
 双也なみやがこれ見よがしに大剣を床に突き立てる。
 見えなくても床に刻まれた傷でその大きさがうかがえた。
「それじゃ始めようか」
 二本立てた荒隆あらたかの指が煤山すすやまの頬を掠めるのに合わせて赤い血の筋が出来る。
 滴る頬の血に、震える煤山すすやまの右手が白衣の襟を掴んだその時だった。
「やれ」
 たった一言ののち、荒隆あらたかたちは脳を直接揺さ振られるという耐え難い感覚に襲われた。
「くっ……」
「なんだよ、今の」
「脳が揺れた……みたいな……」
「あいつ、まさか……!?」
荒隆あらたか!?」
 激しい脳の揺れに耐えた五人は戸惑いながらも体勢を整える。
 そんな中何かに気付き、五人が衝撃に襲われている間に逃げ出していた煤山すすやまの後を追って駆け出す荒隆あらたかに続いて双也なみやも駆け出す。
「何があった?」
「今のは俺達と同じ幻物質使いの仕業だ。それも他の物質に干渉できるだけの力量を有している」
「だが、あの男が言うにはそこまでの数値は出なかったと」
「ああ。単純にあの男が嘘をついていたのか、あるいは……」
「いたぞ」
 会話をしながら駆けていた二人は、建物の外で逃げていた煤山すすやまに追いついた。
 逃げるのをやめた煤山すすやまの目の前には大型のトレーラーが止まっている。
「えらく逃げ足が速いんだな」
「ただ逃げただけってことはないよな? ……そいつがあんたの切り札か?」
 荒隆あらたかがトレーラーに視線を送る。
「いかにも! 我々が有する最高戦力! 五号です!!」
 煤山すすやまの声に合わせてトレーラーの荷台が開く。
「なっ!?」
 白日の本に晒された五号と呼ばれる異様な姿をした存在。
 四肢が失われたその体はいたるところを管につながれ、生きているのが不思議なほどやせ細っている。
「生きてるのか……?」
「もちろん。ああ、もしかしたらあなた方の中にも懐かしいと感じる存在がいるかもしれませんね。何せ五号は第一世代の生き残りですから」
「!!」
「認識コード05。それが五号のかつての呼び名です」
 煤山すすやまの紹介に反応したのは荒隆あらたかだった。
「05!? そんな、まさか……」
荒隆あらたか?」
「それが、あの05だってのか……?」
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