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あの日から一週間、秋葉は学校を休み続けている。
間違いなく乱世との放課後のあの出来事がきっかけだろう。
「女の子を傷付けてしまった……」
想像以上にショックを受けているらしい乱世にいつもの元気と自信に満ち溢れた笑顔はなく、意気消沈を体現するかの様に力なく机に突っ伏している。
背後から漂ってくる陰湿な気配に耐えられなくなったのか、持ち前のお人好しで放っておけなくなったのか、あるいはそのどちらもか。
声をかけるなといった雰囲気を醸し出し続けている乱世に、勇気を出した木立が話しかける。
「なぁ、乱世。俺ちょっとした度胸試しに誘われてるんだけど、お前も来ないか?」
話しかけてはみたものの、ぴくりとも反応はない。
聞こえてくる呼吸音が寝息とは違うようだったので、聞こえてはいると判断した木立がめげずに話し続ける。
「最近この辺りで起こってる切り裂き事件。夜に一人で商店街を歩いてると、突然路地に引きずり込まれて全身を切り裂かれるっていうやつ。お前も知ってるだろ? まだ誰も死んではいないけど、次こそ犠牲者が出るんじゃないかってこの学校でも噂になってる、あれ」
その時、微かに乱世の頭が動いた気がした。
(気のせいか? でも少しは興味があるのかも!)
そう考えた木立は先程聞いたばかりの噂話を持ち出し、さらに興味を引こうとする。
「俺もさっき聞いたんだけどさ、あの事件の犯人はこの学校の女子生徒かもしれないんだって」
木立の言葉が引き金になり、乱世がようやく僅かにだが顔を上げた。
相変わらず整った顔をしているが、いつものような明るさややる気は感じない。
しかし乱世が顔を上げたことに手応えを感じた木立は心の中で一人ガッツポーズをする。
「その話、本当なのか?」
やる気も覇気も感じられない力のない声が木立に問いかける。
(興味はさほどないが、これも命令だったな)
自分が転校してきた理由を思い出した乱世がやむを得ないと言わんばかりに小さくため息を吐いたが、突っ伏していた乱世が顔を上げて更には話に食いついてきた事実に喜び、内心で狂喜乱舞していた木立は気付かない。
「今夜それを確かめに行くんだよ」
あくまで噂だと前置きをしながら、嬉々として再び乱世を誘う。
今度は意外なほどすんなりと了承した乱世に木立は目に見えて喜びを表現する。
「他の奴らにも知らせてくるな!」
そう言って席を立った木立を乱世は軽く手を振って見送る。
木立がいなくなっても再び机に突っ伏すことはしない。
だが面倒だといった気持ちを全面に押し出した顔で窓の外を見ながら頬杖をついた。
放課後になり、二人はクラスメイト達に誘われるがまま街へと繰り出す。
切り裂き魔が出るのは夜とのことだったが、そこは遊びたい盛りの高校生達だ。
ゲームセンターやカラオケ、ファミレスなどを転々としながら有り余る時間を潰すのには困らない。
夜までの軽く見積もっても四時間はあった時間を遊びつくし、いよいよ夜の帳が下りた商店街へと繰り出す。
昔ながらといった商店街は近所の大型商業施設などに押されて、昼間でもシャッターが下りている店は少なくない。開いている店も夜になる前に閉めてしまう為、乱世達が辿り着いた時には全ての店が閉まっていた。
見る限り人通りはなく、事件を起こすにはうってつけといった雰囲気だ。
「よっし、じゃあ行こうぜ乱世!」
肩に腕を回してきた木立と緊張気味の他数名の男子生徒と共に、乱世は月の光すら差さない暗い商店街へと足を踏み入れた。
それなりに長い商店街の西口から東口へと路地を気にしながら探索する。
しかしそうそう上手く切り裂き魔に出くわす訳もなく、全員に徒労感だけが募っていく。
「何も起きないし、誰とも会わないなぁ。本当に今日も切り裂き魔が出るんだろうな?」
「この事件の犯人はほぼ毎日、人を切り刻んで回ってる。だとしたら今夜も出てくるはずなんだけど……」
最後尾を歩いていた乱世達の前を行く、数名の生徒達がぼやき交じりのそんな会話をしている。
もはや初めの緊張感はなく、諦めムードが漂い始めていた。
切り裂き魔が一人になった人間を狙うのならば、誰か一人がオトリになった方が早い事に気付いていないわけではないだろう。
要は彼らは自分の身の安全を守りながら、切り裂き魔の正体を見てみたいのだ。
退屈な時間と化しただけの探索作業に乱世はあくびを噛み殺す。
「いやぁああああああああああッ!!!!!」
間違いなく乱世との放課後のあの出来事がきっかけだろう。
「女の子を傷付けてしまった……」
想像以上にショックを受けているらしい乱世にいつもの元気と自信に満ち溢れた笑顔はなく、意気消沈を体現するかの様に力なく机に突っ伏している。
背後から漂ってくる陰湿な気配に耐えられなくなったのか、持ち前のお人好しで放っておけなくなったのか、あるいはそのどちらもか。
声をかけるなといった雰囲気を醸し出し続けている乱世に、勇気を出した木立が話しかける。
「なぁ、乱世。俺ちょっとした度胸試しに誘われてるんだけど、お前も来ないか?」
話しかけてはみたものの、ぴくりとも反応はない。
聞こえてくる呼吸音が寝息とは違うようだったので、聞こえてはいると判断した木立がめげずに話し続ける。
「最近この辺りで起こってる切り裂き事件。夜に一人で商店街を歩いてると、突然路地に引きずり込まれて全身を切り裂かれるっていうやつ。お前も知ってるだろ? まだ誰も死んではいないけど、次こそ犠牲者が出るんじゃないかってこの学校でも噂になってる、あれ」
その時、微かに乱世の頭が動いた気がした。
(気のせいか? でも少しは興味があるのかも!)
そう考えた木立は先程聞いたばかりの噂話を持ち出し、さらに興味を引こうとする。
「俺もさっき聞いたんだけどさ、あの事件の犯人はこの学校の女子生徒かもしれないんだって」
木立の言葉が引き金になり、乱世がようやく僅かにだが顔を上げた。
相変わらず整った顔をしているが、いつものような明るさややる気は感じない。
しかし乱世が顔を上げたことに手応えを感じた木立は心の中で一人ガッツポーズをする。
「その話、本当なのか?」
やる気も覇気も感じられない力のない声が木立に問いかける。
(興味はさほどないが、これも命令だったな)
自分が転校してきた理由を思い出した乱世がやむを得ないと言わんばかりに小さくため息を吐いたが、突っ伏していた乱世が顔を上げて更には話に食いついてきた事実に喜び、内心で狂喜乱舞していた木立は気付かない。
「今夜それを確かめに行くんだよ」
あくまで噂だと前置きをしながら、嬉々として再び乱世を誘う。
今度は意外なほどすんなりと了承した乱世に木立は目に見えて喜びを表現する。
「他の奴らにも知らせてくるな!」
そう言って席を立った木立を乱世は軽く手を振って見送る。
木立がいなくなっても再び机に突っ伏すことはしない。
だが面倒だといった気持ちを全面に押し出した顔で窓の外を見ながら頬杖をついた。
放課後になり、二人はクラスメイト達に誘われるがまま街へと繰り出す。
切り裂き魔が出るのは夜とのことだったが、そこは遊びたい盛りの高校生達だ。
ゲームセンターやカラオケ、ファミレスなどを転々としながら有り余る時間を潰すのには困らない。
夜までの軽く見積もっても四時間はあった時間を遊びつくし、いよいよ夜の帳が下りた商店街へと繰り出す。
昔ながらといった商店街は近所の大型商業施設などに押されて、昼間でもシャッターが下りている店は少なくない。開いている店も夜になる前に閉めてしまう為、乱世達が辿り着いた時には全ての店が閉まっていた。
見る限り人通りはなく、事件を起こすにはうってつけといった雰囲気だ。
「よっし、じゃあ行こうぜ乱世!」
肩に腕を回してきた木立と緊張気味の他数名の男子生徒と共に、乱世は月の光すら差さない暗い商店街へと足を踏み入れた。
それなりに長い商店街の西口から東口へと路地を気にしながら探索する。
しかしそうそう上手く切り裂き魔に出くわす訳もなく、全員に徒労感だけが募っていく。
「何も起きないし、誰とも会わないなぁ。本当に今日も切り裂き魔が出るんだろうな?」
「この事件の犯人はほぼ毎日、人を切り刻んで回ってる。だとしたら今夜も出てくるはずなんだけど……」
最後尾を歩いていた乱世達の前を行く、数名の生徒達がぼやき交じりのそんな会話をしている。
もはや初めの緊張感はなく、諦めムードが漂い始めていた。
切り裂き魔が一人になった人間を狙うのならば、誰か一人がオトリになった方が早い事に気付いていないわけではないだろう。
要は彼らは自分の身の安全を守りながら、切り裂き魔の正体を見てみたいのだ。
退屈な時間と化しただけの探索作業に乱世はあくびを噛み殺す。
「いやぁああああああああああッ!!!!!」
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