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第58話 王族の異能が複雑すぎる
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「結局解らずか」
「ええ。王族の血と混ざったことで、異能も何らかの変異をしているのかもしれないわね。そして、何らかの発動条件があるのかも」
シモンの問いに答えつつ、解らないわとマリナは腕を組む。が、俺は地面に突っ伏したままだ。
どこかに秘密がないかとあちこち触るのは構わないが、せめて股間を触る前に一言欲しかった。
「ぐう」
俺は色んな意味を込めて唸ってしまう。そんな俺を、アンドレが面白がって棒で突き始めた。
「止めろ」
「いやいや。いいですねえ、王子様」
「良くねえよ。もうちょっと雰囲気があれば別だったけどな」
「あらやだ。あんなのが好み? 許嫁のクリスティーヌ姫が泣いちゃうよ」
「お前なあ」
俺がぎっと睨むと、そのアンドレの脳天に一発拳が落ちる。もちろん、やったのはマリナだ。
「廃嫡騒動を起こさせたってことは、レオがピンチになる必要があったのかもね」
で、それまでの会話をさらっと無視して、話題を変えてくれた。これほど怖いことはないので、俺は起き上がると
「命の危機になると発動するとか?」
真面目に訊ねる。
「そう。でも、発動したのは、すでにレオが日常的に使いこなしていたと思われる身体強化だけ。ううん。何か違う感じね」
マリナは、それでも俺に異能があることがポイントとされている今、何かあるはずだと悩んでいる。それは俺も同じで、このまま強靱な肉体を持っていますだけでは、世間を納得させられないと理解していた。
「廃嫡かあ」
そして改めて、その言葉の意味を考えていた。
普通に考えて、それはもう、お前には王位継承権はないと断言することのはずだ。それがどういうわけか、ねじ曲がって俺にはまだ王位継承権があることになっている。これだけでも不思議だ。
「あれ? ってことは、シャルルにはないのか。異能。同じ王族なのに」
「あっ」
「そうだ」
俺の呟きに、それが不思議だと、その場にいた全員がぽんと手を叩く。シャルルが王太子になれない理由は異能が無いからだ。これはどういうことだろう。
「つまり、王族総てが力を持っているわけじゃないってことだな」
「で、レオのように眠った状態の人と、本当にない人がいる」
「それは直系の兄弟間でも起こりえる、か」
「ますます解んねえ」
ややこしくなってないかと、俺は王族の異能問題で禿げそうだと本気で思っていた。
「国后様」
「お久しぶりですね、クリスティーヌ」
さて、話題に出て来た許嫁のクリスティーヌは、久々に王宮を訪れていた。というのも、再びレオナールを王太子にという動きが現われたからだ。
「もう、何が何だか解らず、こうしてやって来てしまいました」
そのクリスティーヌはまだ黒いドレスを身に纏ったままだ。状況が不確定であるからこそ、そう素直には喜べない証拠だろう。
「ええ。そうね。私も色々と驚くことの連続です。それに、このままだとシャルルがどうなるのか、というのも不安です」
「ああ」
ローラの呟きに、クリスティーヌは困惑の表情を浮かべることしか出来ない。クリスティーヌはレオナールのことだけを考えていればいいが、二人の母親であるローラは、この騒動で必ずどちらかを失ってしまうのだ。その心の中は色んな感情がせめぎ合っていることだろう。
「もちろん、廃嫡騒動という政変を起こしたのはシャルルです。それで自らが王座を得ようとしたのだから、それなりに罰が与えられるべきでしょう。しかし、あの子も、そしてレオナールも異能が関わっているなんて知らなかったのです。それを思うと」
理不尽ですねと、ローラは泣き顔のまま微笑むことしか出来ない。
「異能」
そしてクリスティーヌも、この事実に困惑してしまう。そして、自分の未来の夫が未知の力を持っているということに、僅かだが恐怖もあった。
「あなたは、別の誰かを選んでもいいのですよ」
クリスティーヌの怯えに気づき、ローラは優しく告げる。しかし、クリスティーヌはすぐに首を横に振った。
「いいえ。異能を恐れること、それが間違っていたのですね」
そして気丈にもそう問い返した。それにローラは頷くと
「ひょっとしたら、大戦後、異能を持った事実を隠し続けた罰なのかもしれませんね」
溜め息とともにそう呟いていた。
「ええ。王族の血と混ざったことで、異能も何らかの変異をしているのかもしれないわね。そして、何らかの発動条件があるのかも」
シモンの問いに答えつつ、解らないわとマリナは腕を組む。が、俺は地面に突っ伏したままだ。
どこかに秘密がないかとあちこち触るのは構わないが、せめて股間を触る前に一言欲しかった。
「ぐう」
俺は色んな意味を込めて唸ってしまう。そんな俺を、アンドレが面白がって棒で突き始めた。
「止めろ」
「いやいや。いいですねえ、王子様」
「良くねえよ。もうちょっと雰囲気があれば別だったけどな」
「あらやだ。あんなのが好み? 許嫁のクリスティーヌ姫が泣いちゃうよ」
「お前なあ」
俺がぎっと睨むと、そのアンドレの脳天に一発拳が落ちる。もちろん、やったのはマリナだ。
「廃嫡騒動を起こさせたってことは、レオがピンチになる必要があったのかもね」
で、それまでの会話をさらっと無視して、話題を変えてくれた。これほど怖いことはないので、俺は起き上がると
「命の危機になると発動するとか?」
真面目に訊ねる。
「そう。でも、発動したのは、すでにレオが日常的に使いこなしていたと思われる身体強化だけ。ううん。何か違う感じね」
マリナは、それでも俺に異能があることがポイントとされている今、何かあるはずだと悩んでいる。それは俺も同じで、このまま強靱な肉体を持っていますだけでは、世間を納得させられないと理解していた。
「廃嫡かあ」
そして改めて、その言葉の意味を考えていた。
普通に考えて、それはもう、お前には王位継承権はないと断言することのはずだ。それがどういうわけか、ねじ曲がって俺にはまだ王位継承権があることになっている。これだけでも不思議だ。
「あれ? ってことは、シャルルにはないのか。異能。同じ王族なのに」
「あっ」
「そうだ」
俺の呟きに、それが不思議だと、その場にいた全員がぽんと手を叩く。シャルルが王太子になれない理由は異能が無いからだ。これはどういうことだろう。
「つまり、王族総てが力を持っているわけじゃないってことだな」
「で、レオのように眠った状態の人と、本当にない人がいる」
「それは直系の兄弟間でも起こりえる、か」
「ますます解んねえ」
ややこしくなってないかと、俺は王族の異能問題で禿げそうだと本気で思っていた。
「国后様」
「お久しぶりですね、クリスティーヌ」
さて、話題に出て来た許嫁のクリスティーヌは、久々に王宮を訪れていた。というのも、再びレオナールを王太子にという動きが現われたからだ。
「もう、何が何だか解らず、こうしてやって来てしまいました」
そのクリスティーヌはまだ黒いドレスを身に纏ったままだ。状況が不確定であるからこそ、そう素直には喜べない証拠だろう。
「ええ。そうね。私も色々と驚くことの連続です。それに、このままだとシャルルがどうなるのか、というのも不安です」
「ああ」
ローラの呟きに、クリスティーヌは困惑の表情を浮かべることしか出来ない。クリスティーヌはレオナールのことだけを考えていればいいが、二人の母親であるローラは、この騒動で必ずどちらかを失ってしまうのだ。その心の中は色んな感情がせめぎ合っていることだろう。
「もちろん、廃嫡騒動という政変を起こしたのはシャルルです。それで自らが王座を得ようとしたのだから、それなりに罰が与えられるべきでしょう。しかし、あの子も、そしてレオナールも異能が関わっているなんて知らなかったのです。それを思うと」
理不尽ですねと、ローラは泣き顔のまま微笑むことしか出来ない。
「異能」
そしてクリスティーヌも、この事実に困惑してしまう。そして、自分の未来の夫が未知の力を持っているということに、僅かだが恐怖もあった。
「あなたは、別の誰かを選んでもいいのですよ」
クリスティーヌの怯えに気づき、ローラは優しく告げる。しかし、クリスティーヌはすぐに首を横に振った。
「いいえ。異能を恐れること、それが間違っていたのですね」
そして気丈にもそう問い返した。それにローラは頷くと
「ひょっとしたら、大戦後、異能を持った事実を隠し続けた罰なのかもしれませんね」
溜め息とともにそう呟いていた。
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