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第57話 無自覚な異能問題

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 結局のところ、俺には異能がある。そしてそのことを自覚しなかったことが、今回の廃嫡騒動の裏側にあるのではということだった。
「レオって本当に自分に異能があるって気づいていないわけ?」
 翌朝。タオルで顔を拭きながらピーターが確認してくる。
 昨日の情報交換は色々な衝撃を含んでいたが、やはり一番気になるのはこれというわけだ。
「全くないな。っていうか、ピーターは? どうして自分に異能があるって気づいたんだ?」
 しかし、俺からすると異能ってどう自覚するものなのと疑問である。寝袋を畳みながら、どうなんですかと率直に訊ねた。
「いや、自覚も何も、勝手に手から炎とか光りとか出たからなあ。小さい頃は自分でコントロール出来なかったね。で、危うく殺されそうになったところをマリナに救われた」
 ぷすっと頬を膨らませてピーターが過去を教えてくれる。それに、俺は悪かったと頭をがしがしと撫でた。十七歳という若者であるが、すでに異能で苦労しているわけだ。
「止めろよっ。まあ、異能が忌み嫌われるのは身に染みているってところだな。まさかこの国では王族がその異能を持っているなんて・・・・・・見えねえけど」
 ピーターは俺の手を払い除けると、今度はまじまじと見つめてくれる。
「だよなあ。俺も手から炎が出た経験ないし」
 俺は寝袋を畳み終え、ふんっと腕に力を込めてみる。が、もりっと力こぶが出来ただけだ。
「おおっ。筋肉が付いてる」
「いや、今それ重要じゃねえから。ってか、こんな生活してたら、普通につくから」
 ピーターの冷静なツッコミを受けつつ、俺はまずこの異能問題をどうにかしなきゃなあと溜め息を吐くのだった。



「封印されているっていうわけじゃなさそうね」
「へえ」
 昼。適度にキャンプ場所を移動した後、マリナが俺の身体に手を翳して、異能が封じられている痕跡があるかを探ってくれた。しかし、その結果はなし。異能は特に封印されているわけではないようだ。
「ううん。そうなると」
「そうなると?」
「気になるのは食事かしら。レオが不味いと言う王宮料理。その中に異能を抑える成分を含む薬草が混ぜられていたとか」
「え? そんなのあるの? あと、不味いとは言ってないからな」
 王宮料理人の名誉のために不味くはないと俺はツッコみつつ、薬草でどうにか出来るのかと訊ねる。
「もちろんあるわ。でも、一時的よ。ほら、魔女と疑われて逃げる時のために、異能を制御する薬があるのね。もちろん秘薬中の秘薬だけど、王族が過去に魔女と取り引きしているのならば、そういう薬も伝達されていておかしくないと思うの」
「へえ」
 異能、まだまだ奥深いな。俺は感心するしかない。
「でも、ここ最近は私たちが作る料理しか食べていないし、それに、身体強化はすでに発動されているみたいだし、ううん。難しいわ」
 一方、その薬草だけでは説明が付かないとマリナは首を捻っている。
「身体強化って、簡単に死なないってやつ?」
 が、俺は無自覚に異能を発動しているのかと、そっちに驚いた。
「ええ。あと、反射神経に関しても普通の人とは異なるから、それも身体強化のおかげね」
「ほほう」
 俺は自分の手をにぎにぎと握って、すでに発動している部分もあるんだと感心しっぱなしだ。
「でも、それだけじゃあ血の盟約の効果として薄すぎるわ。他にも出来るはずよ。いくら大戦が過去のものとはいえ、まだ百年足らずですもの。何かが隠れているはずだけど、解らないわねえ」
 マリナはどうなっているんだろうと、今度は俺の身体を容赦なく触りまくってくれるのだった。
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