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第55話 血の盟約
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三日後。見晴らしのよいカポフ丘で集合した俺たちは、集まった情報の共有とこれからの作戦を会議することになった。
といっても、焚き火を囲んで、いつも通りにキャンプをしながらだ。今日はあちこちの町を回ってきた三人のおかげで、豪華な晩ご飯となっていた。
「チーズフォンデュなんて久々だな」
そう言ってぱくぱく食べるピーターの真似をして、俺もフォークにパンを刺して鍋で溶けているチーズを絡める。
「危なっ」
「落としたら罰ゲームだぜ」
「マジ?」
「今日はそれどころじゃないわよ」
落としそうになった俺がびっくりしてピーターを見るが、マリナが会議中なのよとビシッと止めてくれる。
「でも、王宮は静かなもんなんだろ。あれだけ戦争だの王子様が悪いだのって言っていたのに」
ピーターはウインナーにチーズを絡めながら訊く。
「そう。びっくりするくらいに鎮圧された後って感じだね。その理由は国王が起き上がれるようになったこと、プラス近隣諸国の動きが大きいみたいだ」
アンドレは複雑骨折だったのに復活したんだねと俺を見てくる。
「昏睡は続いていたけど、死にそうにはなかったもんな」
それに対して、俺は死なないと思っていたと付け足す。どういうわけか、あの父はちょっとやそっとじゃ死にそうになかった。それだけ、生命力があったというべきか。だから、このタイミングで復活したとしても不思議には思わない。
「まあ、そういうわけで、一時は混乱した政権は一応安定している。それに合わせてドロイヤとは戦争から通商条約の話に代わり、ついで、ミッドランドとオーロランドがレオナール様の支持に回って、あれこれ落ち着いているってわけ」
「えっ?」
「ちょっと待て。俺を支持するだって!?」
さすがに想像しない展開にびっくりするシモンと俺だ。
一体全体、どういうことが起こればそうなるんだ。
「どうやらそれには、この国が過去の大戦を切り抜けたことと関係があるようなの。それと、この国が異能者に一応は寛大な措置を施している理由でもあるわ」
シュリがにこっと笑って俺を見てくる。しかし、俺はなぜかぞわっと鳥肌が立った。何か、聞いちゃいけないことがこれから待ち構えているかのようだ。
「過去の大戦っていうと、異能者や魔法使いを大量投入して行ったってやつだよね。おかげで俺はこうやって能力を隠さなきゃいけない」
まだ十七歳のピーターは不満げに唇を尖らせて言う。そんなことがなければ、自分は自由に生きられるのではないか。過去のせいで今の自分が理不尽な扱いを受けているのでは。そう考えているのが、ありありと解る表情だ。
「そう。それ。最終的にはこの国、ハッブルが最大限の軍事力を投入して他国を鎮圧、和平協定を結んだことで終わったんだけど」
そこでシュリはまた俺を見る。この先を聞く覚悟は出来ているか。そう確認されているのだ。
「な、何か裏があったんだな」
俺は僅かに声が上擦りながらも、先を頼むと促した。それにシュリは頷くと
「ええ。ハッブルが一気に他国を圧倒できたのは、当時の王様がある魔女と取り引きしたからなの」
衝撃的な内容をさらっと告げてくれる。
「ん? でも、他の国も異能者を大量投入していたんだろ。だったら珍しい話じゃないんじゃねえの?」
ピーターは言葉をそのまま受け取りそう訊ねるが、もちろんこの場合の取り引きは普通の取り引きではない。
「血の盟約だな。となると、その後、王族はほぼ異能者になったはずだ」
シモンが口にし難いことをさらっと言ってくれ、俺はびくっと肩を震わせる。
他の国では見つかっただけで殺されるかも知れない存在。それが、国のトップにいる。その危険性に、俺はぶるっと震えてしまう。
といっても、焚き火を囲んで、いつも通りにキャンプをしながらだ。今日はあちこちの町を回ってきた三人のおかげで、豪華な晩ご飯となっていた。
「チーズフォンデュなんて久々だな」
そう言ってぱくぱく食べるピーターの真似をして、俺もフォークにパンを刺して鍋で溶けているチーズを絡める。
「危なっ」
「落としたら罰ゲームだぜ」
「マジ?」
「今日はそれどころじゃないわよ」
落としそうになった俺がびっくりしてピーターを見るが、マリナが会議中なのよとビシッと止めてくれる。
「でも、王宮は静かなもんなんだろ。あれだけ戦争だの王子様が悪いだのって言っていたのに」
ピーターはウインナーにチーズを絡めながら訊く。
「そう。びっくりするくらいに鎮圧された後って感じだね。その理由は国王が起き上がれるようになったこと、プラス近隣諸国の動きが大きいみたいだ」
アンドレは複雑骨折だったのに復活したんだねと俺を見てくる。
「昏睡は続いていたけど、死にそうにはなかったもんな」
それに対して、俺は死なないと思っていたと付け足す。どういうわけか、あの父はちょっとやそっとじゃ死にそうになかった。それだけ、生命力があったというべきか。だから、このタイミングで復活したとしても不思議には思わない。
「まあ、そういうわけで、一時は混乱した政権は一応安定している。それに合わせてドロイヤとは戦争から通商条約の話に代わり、ついで、ミッドランドとオーロランドがレオナール様の支持に回って、あれこれ落ち着いているってわけ」
「えっ?」
「ちょっと待て。俺を支持するだって!?」
さすがに想像しない展開にびっくりするシモンと俺だ。
一体全体、どういうことが起こればそうなるんだ。
「どうやらそれには、この国が過去の大戦を切り抜けたことと関係があるようなの。それと、この国が異能者に一応は寛大な措置を施している理由でもあるわ」
シュリがにこっと笑って俺を見てくる。しかし、俺はなぜかぞわっと鳥肌が立った。何か、聞いちゃいけないことがこれから待ち構えているかのようだ。
「過去の大戦っていうと、異能者や魔法使いを大量投入して行ったってやつだよね。おかげで俺はこうやって能力を隠さなきゃいけない」
まだ十七歳のピーターは不満げに唇を尖らせて言う。そんなことがなければ、自分は自由に生きられるのではないか。過去のせいで今の自分が理不尽な扱いを受けているのでは。そう考えているのが、ありありと解る表情だ。
「そう。それ。最終的にはこの国、ハッブルが最大限の軍事力を投入して他国を鎮圧、和平協定を結んだことで終わったんだけど」
そこでシュリはまた俺を見る。この先を聞く覚悟は出来ているか。そう確認されているのだ。
「な、何か裏があったんだな」
俺は僅かに声が上擦りながらも、先を頼むと促した。それにシュリは頷くと
「ええ。ハッブルが一気に他国を圧倒できたのは、当時の王様がある魔女と取り引きしたからなの」
衝撃的な内容をさらっと告げてくれる。
「ん? でも、他の国も異能者を大量投入していたんだろ。だったら珍しい話じゃないんじゃねえの?」
ピーターは言葉をそのまま受け取りそう訊ねるが、もちろんこの場合の取り引きは普通の取り引きではない。
「血の盟約だな。となると、その後、王族はほぼ異能者になったはずだ」
シモンが口にし難いことをさらっと言ってくれ、俺はびくっと肩を震わせる。
他の国では見つかっただけで殺されるかも知れない存在。それが、国のトップにいる。その危険性に、俺はぶるっと震えてしまう。
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