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第54話 悩みながらも前へ
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王宮に戻り、ラオドールを倒す。この目標を掲げた俺たちは、首都を目指しながら情報収集に勤しむことになった。
とはいえ、情報収集はシュリとキキ、それにアンドレが担当してくれることになった。
「情報収集は私たちに任せてね。王子様はそこから色々と分析するのよ」
シュリににこっと微笑まれて、俺は自分で確認したかったけどと、そう思いつつも素直に頷くしかない。
情報収集は下手するとこちらの正体に気づかれる可能性のあるものだ。ここは異能使いであり、さらにそういうことに慣れているメンバーに頼るしかない。
「首都に着くまでは正体がばれるわけにはいかないから、帽子は脱がないでね。あくまで吟遊詩人で通してよ」
でもってアンドレからもそんな注意を受ける。
というわけで、ここから二つに分かれての動くことになる。情報収集組は先に進み、俺たちはゆっくりとキャンプをしながら追い掛けることになる。
「じゃあ、三日後、カポフ丘で」
合流地に選ばれた小高い丘を確認し、シュリたちは街道を目指してすぐに出発していった。
「さて」
結末によってはキャンプ生活を楽しめるのはあと僅かしかないかもしれない。俺はそう思い、三日間はキャンプを楽しむことにした。
「おっ、ピリ辛で美味しい」
「良かった。昨日の船宿で香辛料を扱っている商人がいてね。少し分けて貰ったのよ」
パンに挟まっている鶏肉が香辛料たっぷりのもので驚く俺に、マリナがにっこりと笑ってそう教えてくれる。
「へえ。って、いつの間に」
「そりゃあ、レオたちが酒場で飲んでいる間によ。修道女がいるっていうのは宿にいる人にバレバレでしょ。悩みを聞いてくれとか、体調不良だとか、色んな依頼が舞い込むものなの」
「凄えな」
修道女ってそんなに万能だったっけ。ついでに俺たちが酒を飲んでいる間に働いていたのか。マリナって勤勉なのかそうじゃないのか解らないんだよなあ。異能者じゃなかったら、真面目に修道女をやっていたんだろうか。
俺の中に色んな感情が一気に去来する。
まあ、そのおかげで美味しい鶏肉入りのサンドイッチが食べられているのだからいいか。胡椒たっぷりさらにチリパウダーもまぶされ、他にもローズマリーの利いた鶏は、甘ダレとは違って刺激的な味わいだ。
「マリナは特殊だよな。どんな状況でも有利になるようにもっていくっていうか」
シモンは薪を火にくべながら、普通はそんなに逞しく生きてねえよと苦笑している。
「ふふっ。利用できるものは何でも利用しなきゃ。大体、こっちが異能を少しでも持っていると知ると、利用するだけ利用してポイ捨てするのが世の中じゃない? だったら、搾り取れるだけ搾り取ってやるまでよ」
マリナはふふんと笑うが、それは俺の胸をちょっとだけ締め付ける。
もしも、もしも王太子の地位に戻れた場合、彼らのことをどうするのが、どうしてあげるのが一番なのだろうか。
今の意見を聞く限り、王宮に縛られるのはごめんなのだろう。俺は彼らから受けた恩を返すことが出来るだろうかと、しばし考えてしまう。
「レオ。どうした?」
そんな俺を不思議そうに見るピーターに、俺はシャルルを重ねてしまう。
そうだ。シャルルとはどういう決着を付ければいいのだろう。
「悩むことが多いだけだよ」
「ふうん」
さすがに俺が王太子だったことを意識することが多いせいか、ピーターはそれ以上は突っ込んでこず、それにも少し、距離感を覚えてしまって悲しいのだった。
とはいえ、情報収集はシュリとキキ、それにアンドレが担当してくれることになった。
「情報収集は私たちに任せてね。王子様はそこから色々と分析するのよ」
シュリににこっと微笑まれて、俺は自分で確認したかったけどと、そう思いつつも素直に頷くしかない。
情報収集は下手するとこちらの正体に気づかれる可能性のあるものだ。ここは異能使いであり、さらにそういうことに慣れているメンバーに頼るしかない。
「首都に着くまでは正体がばれるわけにはいかないから、帽子は脱がないでね。あくまで吟遊詩人で通してよ」
でもってアンドレからもそんな注意を受ける。
というわけで、ここから二つに分かれての動くことになる。情報収集組は先に進み、俺たちはゆっくりとキャンプをしながら追い掛けることになる。
「じゃあ、三日後、カポフ丘で」
合流地に選ばれた小高い丘を確認し、シュリたちは街道を目指してすぐに出発していった。
「さて」
結末によってはキャンプ生活を楽しめるのはあと僅かしかないかもしれない。俺はそう思い、三日間はキャンプを楽しむことにした。
「おっ、ピリ辛で美味しい」
「良かった。昨日の船宿で香辛料を扱っている商人がいてね。少し分けて貰ったのよ」
パンに挟まっている鶏肉が香辛料たっぷりのもので驚く俺に、マリナがにっこりと笑ってそう教えてくれる。
「へえ。って、いつの間に」
「そりゃあ、レオたちが酒場で飲んでいる間によ。修道女がいるっていうのは宿にいる人にバレバレでしょ。悩みを聞いてくれとか、体調不良だとか、色んな依頼が舞い込むものなの」
「凄えな」
修道女ってそんなに万能だったっけ。ついでに俺たちが酒を飲んでいる間に働いていたのか。マリナって勤勉なのかそうじゃないのか解らないんだよなあ。異能者じゃなかったら、真面目に修道女をやっていたんだろうか。
俺の中に色んな感情が一気に去来する。
まあ、そのおかげで美味しい鶏肉入りのサンドイッチが食べられているのだからいいか。胡椒たっぷりさらにチリパウダーもまぶされ、他にもローズマリーの利いた鶏は、甘ダレとは違って刺激的な味わいだ。
「マリナは特殊だよな。どんな状況でも有利になるようにもっていくっていうか」
シモンは薪を火にくべながら、普通はそんなに逞しく生きてねえよと苦笑している。
「ふふっ。利用できるものは何でも利用しなきゃ。大体、こっちが異能を少しでも持っていると知ると、利用するだけ利用してポイ捨てするのが世の中じゃない? だったら、搾り取れるだけ搾り取ってやるまでよ」
マリナはふふんと笑うが、それは俺の胸をちょっとだけ締め付ける。
もしも、もしも王太子の地位に戻れた場合、彼らのことをどうするのが、どうしてあげるのが一番なのだろうか。
今の意見を聞く限り、王宮に縛られるのはごめんなのだろう。俺は彼らから受けた恩を返すことが出来るだろうかと、しばし考えてしまう。
「レオ。どうした?」
そんな俺を不思議そうに見るピーターに、俺はシャルルを重ねてしまう。
そうだ。シャルルとはどういう決着を付ければいいのだろう。
「悩むことが多いだけだよ」
「ふうん」
さすがに俺が王太子だったことを意識することが多いせいか、ピーターはそれ以上は突っ込んでこず、それにも少し、距離感を覚えてしまって悲しいのだった。
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