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第53話 国王・ピエールの思い
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さて、俺が立ち向かう覚悟を決めた頃、王宮でも様々な動きが起こっていた。
「シャルル様が王太子になられるべきです」
そう訴える者たちがいる一方で
「あの廃嫡決定がそもそもの間違いでした。懺悔します。私はつい自らの身が可愛くなり、公明正大なレオナール様を疎ましく思ってしまったのです」
と訴える者がいる。
その訴えている相手は、ようやく車椅子に乗ることが出来た国王だ。とはいえ、落馬事故の影響は大きく、国王は下半身不随である。この先、王政を執っていくには困難であることは、誰の目にも明らかだ。だからこそ、次はどちらかという議論が活発になっている。
一方で、国王が出てきたことで、姑息な手段では無理だということははっきりした。よって、ここからは本当にどちらが次の国王に相応しいかということを証明する時間になっている。
「無理に起き上がった甲斐はあるが、まったく、パウロにはいつも困らされる」
やれやれと再びベッドに戻ったピエールに、あなたが黙認なさったからですとローラはしっかり苦情を言う。
「そう言うな」
「もちろん、政変が起こったのは、まだまだ陛下がしっかりと起き上がる事も出来ず、また傷を治すために眠っている時間が多い時でしたわ。でも、レオの能力が大きいからと、国中を巻き込むこんな大騒動を起こすなんて」
父のジョゼフに総てを打ち明ける際に色々と背後に複雑な動きがあったのだと聞いたローラだが、あれほど心配した最初の一か月は何だったのかと腹立たしくなる。
しかし、それは無事にピエールが目を覚まし、また、下半身不随で済んだから言える話だ。もしもピエールが皆の前に出ることも叶わないほどだったとしたら、シャルルとレオナールの間にあったことは、本当に戦争でも起こらない限りは収束をみなかっただろう。
「本来ならば、内戦でも起こさせるべきなのかもしれないがな」
それに対し、ピエールは不穏当なことを言ってくれる。
「何をおっしゃいますの」
「いや。レオは本当に優しすぎるのだ。それと同時に公平に物事を見る目を持っている。これは確かに王に必要な能力かも知れないが、それだけでは百戦錬磨の政治家どもを納得させることは出来ない。そういうことを学ぶ場が、あの子には必要なのだよ。その点に関して、次男としてどう生き残るかを考えていたシャルルの方が優秀なのは間違いない」
「まあ」
息子たちをそう評価しているという話を聞くのは初めてで、ローラは驚きの声を上げてしまう。
「そういう政治感覚を見抜いていたからこそ、ラオドールもシャルルを持ち上げることを考えたのだ。もしも国王に異能が必要だという条件がなければ、この騒動はほぼなかったようなものだ」
「で、でも」
それはレオナールが劣っているということなのかと、ローラは顔を顰める。あの子が王政を代行している間、大きなトラブルはなかったはずだ。
「まあまあ。お前が言いたいことは解る。だが、トップに立つというのは、様々なことを飲み込めなければならないということだ。レオにそれが出来るのか、奴が今どこで何をしているか知らんが、それを証明できない限りは、シャルルを支持した者たちを納得させることは出来まい」
単純にここに戻ってくるだけでは駄目なのだと、ピエールの目は鋭く光っていた。
「シャルル様が王太子になられるべきです」
そう訴える者たちがいる一方で
「あの廃嫡決定がそもそもの間違いでした。懺悔します。私はつい自らの身が可愛くなり、公明正大なレオナール様を疎ましく思ってしまったのです」
と訴える者がいる。
その訴えている相手は、ようやく車椅子に乗ることが出来た国王だ。とはいえ、落馬事故の影響は大きく、国王は下半身不随である。この先、王政を執っていくには困難であることは、誰の目にも明らかだ。だからこそ、次はどちらかという議論が活発になっている。
一方で、国王が出てきたことで、姑息な手段では無理だということははっきりした。よって、ここからは本当にどちらが次の国王に相応しいかということを証明する時間になっている。
「無理に起き上がった甲斐はあるが、まったく、パウロにはいつも困らされる」
やれやれと再びベッドに戻ったピエールに、あなたが黙認なさったからですとローラはしっかり苦情を言う。
「そう言うな」
「もちろん、政変が起こったのは、まだまだ陛下がしっかりと起き上がる事も出来ず、また傷を治すために眠っている時間が多い時でしたわ。でも、レオの能力が大きいからと、国中を巻き込むこんな大騒動を起こすなんて」
父のジョゼフに総てを打ち明ける際に色々と背後に複雑な動きがあったのだと聞いたローラだが、あれほど心配した最初の一か月は何だったのかと腹立たしくなる。
しかし、それは無事にピエールが目を覚まし、また、下半身不随で済んだから言える話だ。もしもピエールが皆の前に出ることも叶わないほどだったとしたら、シャルルとレオナールの間にあったことは、本当に戦争でも起こらない限りは収束をみなかっただろう。
「本来ならば、内戦でも起こさせるべきなのかもしれないがな」
それに対し、ピエールは不穏当なことを言ってくれる。
「何をおっしゃいますの」
「いや。レオは本当に優しすぎるのだ。それと同時に公平に物事を見る目を持っている。これは確かに王に必要な能力かも知れないが、それだけでは百戦錬磨の政治家どもを納得させることは出来ない。そういうことを学ぶ場が、あの子には必要なのだよ。その点に関して、次男としてどう生き残るかを考えていたシャルルの方が優秀なのは間違いない」
「まあ」
息子たちをそう評価しているという話を聞くのは初めてで、ローラは驚きの声を上げてしまう。
「そういう政治感覚を見抜いていたからこそ、ラオドールもシャルルを持ち上げることを考えたのだ。もしも国王に異能が必要だという条件がなければ、この騒動はほぼなかったようなものだ」
「で、でも」
それはレオナールが劣っているということなのかと、ローラは顔を顰める。あの子が王政を代行している間、大きなトラブルはなかったはずだ。
「まあまあ。お前が言いたいことは解る。だが、トップに立つというのは、様々なことを飲み込めなければならないということだ。レオにそれが出来るのか、奴が今どこで何をしているか知らんが、それを証明できない限りは、シャルルを支持した者たちを納得させることは出来まい」
単純にここに戻ってくるだけでは駄目なのだと、ピエールの目は鋭く光っていた。
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