33 / 66
第33話 ご飯は大事!
しおりを挟む
山道はその後も順調に進み、俺たちは一週間ぶりに斜面ではない真っ直ぐな道の上にいた。目的の湖までは雑木林の中を抜けて行くことになる。
「へえ、国の南側ってこんな感じだったんだな」
山ほどではないものの、適度に木々が生い茂る道に、俺はここもいいなあと思わず腕を伸す。
「この辺だと木樵や職人も出入りしているから、人の手も入っている。山の中とは違って少し秩序があるからな」
気持ちいいのには理由があるんだよと、シモンが得意顔で教えてくれた。本業が大工とあって、木樵たちと知り合いのようだ。
「その分、面白さは減るけどね」
マリナは山の中がいいわと、俺やシモンとは逆の意見だ。やはりこの修道女様はよく解らない。
「それよりも今日のキャンプ地を決めましょ。人通りがあるんだったら、今までとは違う見張り方をしないといけないし」
で、キキは兵士を警戒するべきだと主張する。おおっ、今日に限ってはキキが一番大人だ。
「そうだな。人通りがあるってことは、兵士たちも動きやすいってことだもん。ああ、でも、ハンモックで寝たいよね」
それに同意したアンドレだが、平地だとハンモックが張りやすくていいよねと、そんなことをぼやいている。緊張感があるのかないのか解らない奴だ。
「あれこれ考えるだけ無駄だって。それより晩飯だよ。この辺じゃあイノシシは無理だよなあ」
そして食べ盛りのピーターは飯の話だ。
うん、このメンバー、本当に自由気ままだよな。
「食材かあ。この辺だと小鳥が多いくらいかな」
で、俺もキャンプの飯に嵌まっているので、何が食べられるんだろうと周囲を見てしまう。
「小鳥も美味しいわよ。羽をむしるのが手間だけど、ぱりっと焼けてジューシーなんだから」
それに答えてくれたのはシュリだ。そして捕まえろとその目が訴えている。
「こ、小鳥かあ。あれ、どうやって捕まえるんだ」
弓矢では無理だろうと俺が思っていると
「手っ取り早いのは罠を張るものだな。あとは、キキ」
シモンがキキに声を掛けると
「オッケー」
キキが素早く木の上を動くのが見えた。と、すぐに地面にとんっと降りて来て
「はい」
と、両手に小鳥を捕まえていた。
「すげえ。その身体能力が異能なのか」
どんだけ早く動けるんだよと、俺はびっくりしてしまう。
「まあね。でも、この方法は疲れるのよね」
「だろうね」
キキは皆の分は無理だわと溜め息を吐くので、俺も無理しなくていいよと苦笑する。
「それに、小鳥が多いんだったら、鳩はいるでしょ。あとウサギもいるって」
俺は鳩かウサギを狙うからと、弓矢の準備をしておく。
「おうおう。みんな食欲旺盛だな。じゃあ、俺は鹿が出るのを待ち構えますかねえ」
シモンも本当に緊張感がねえなと、そう言って笑うのだった。
その夜は、最終的に小鳥と鳩の焼き鳥となった。前回好評だった甘ダレと、今回は塩胡椒での味付けの二種類を堪能する。
「ああっ、美味い。鳥サイコー」
俺は塩胡椒も間違いないよねと、小鳥の丸焼きに齧りつく。
王宮だったら観賞用の鳥も、この生活では貴重な食料。それに思うところはあるが、美味いものは美味い。
「すっかりワイルドになっちゃって」
そんな俺をアンドレがからかってくるが、無視だ。
「湖に到着したら、久しぶりに干し魚じゃない魚だな」
ピーターは鳩に齧り付きながら、魚も美味いのが食べたいぞと訴えてくる。
「あそこって美味しい魚いたっけ?」
それにシュリが頬に手を当てて首を傾げる。
「泥臭いやつが多いよね」
マリナは食べた経験があるのか、そんなに美味しくないと主張。
「飯を食いながら別の飯の話をするなよ」
シモンが呆れるが
「大事だよ」
「うんうん」
「他の味も知りたい」
マリナ、シュリ、俺に主張されて負けましたと手を挙げる。
「まあいいか。いいのか」
シモンはここから緊張感が増すはずなのになあと、ご飯に夢中な俺を見て呆れるのだった。
「へえ、国の南側ってこんな感じだったんだな」
山ほどではないものの、適度に木々が生い茂る道に、俺はここもいいなあと思わず腕を伸す。
「この辺だと木樵や職人も出入りしているから、人の手も入っている。山の中とは違って少し秩序があるからな」
気持ちいいのには理由があるんだよと、シモンが得意顔で教えてくれた。本業が大工とあって、木樵たちと知り合いのようだ。
「その分、面白さは減るけどね」
マリナは山の中がいいわと、俺やシモンとは逆の意見だ。やはりこの修道女様はよく解らない。
「それよりも今日のキャンプ地を決めましょ。人通りがあるんだったら、今までとは違う見張り方をしないといけないし」
で、キキは兵士を警戒するべきだと主張する。おおっ、今日に限ってはキキが一番大人だ。
「そうだな。人通りがあるってことは、兵士たちも動きやすいってことだもん。ああ、でも、ハンモックで寝たいよね」
それに同意したアンドレだが、平地だとハンモックが張りやすくていいよねと、そんなことをぼやいている。緊張感があるのかないのか解らない奴だ。
「あれこれ考えるだけ無駄だって。それより晩飯だよ。この辺じゃあイノシシは無理だよなあ」
そして食べ盛りのピーターは飯の話だ。
うん、このメンバー、本当に自由気ままだよな。
「食材かあ。この辺だと小鳥が多いくらいかな」
で、俺もキャンプの飯に嵌まっているので、何が食べられるんだろうと周囲を見てしまう。
「小鳥も美味しいわよ。羽をむしるのが手間だけど、ぱりっと焼けてジューシーなんだから」
それに答えてくれたのはシュリだ。そして捕まえろとその目が訴えている。
「こ、小鳥かあ。あれ、どうやって捕まえるんだ」
弓矢では無理だろうと俺が思っていると
「手っ取り早いのは罠を張るものだな。あとは、キキ」
シモンがキキに声を掛けると
「オッケー」
キキが素早く木の上を動くのが見えた。と、すぐに地面にとんっと降りて来て
「はい」
と、両手に小鳥を捕まえていた。
「すげえ。その身体能力が異能なのか」
どんだけ早く動けるんだよと、俺はびっくりしてしまう。
「まあね。でも、この方法は疲れるのよね」
「だろうね」
キキは皆の分は無理だわと溜め息を吐くので、俺も無理しなくていいよと苦笑する。
「それに、小鳥が多いんだったら、鳩はいるでしょ。あとウサギもいるって」
俺は鳩かウサギを狙うからと、弓矢の準備をしておく。
「おうおう。みんな食欲旺盛だな。じゃあ、俺は鹿が出るのを待ち構えますかねえ」
シモンも本当に緊張感がねえなと、そう言って笑うのだった。
その夜は、最終的に小鳥と鳩の焼き鳥となった。前回好評だった甘ダレと、今回は塩胡椒での味付けの二種類を堪能する。
「ああっ、美味い。鳥サイコー」
俺は塩胡椒も間違いないよねと、小鳥の丸焼きに齧りつく。
王宮だったら観賞用の鳥も、この生活では貴重な食料。それに思うところはあるが、美味いものは美味い。
「すっかりワイルドになっちゃって」
そんな俺をアンドレがからかってくるが、無視だ。
「湖に到着したら、久しぶりに干し魚じゃない魚だな」
ピーターは鳩に齧り付きながら、魚も美味いのが食べたいぞと訴えてくる。
「あそこって美味しい魚いたっけ?」
それにシュリが頬に手を当てて首を傾げる。
「泥臭いやつが多いよね」
マリナは食べた経験があるのか、そんなに美味しくないと主張。
「飯を食いながら別の飯の話をするなよ」
シモンが呆れるが
「大事だよ」
「うんうん」
「他の味も知りたい」
マリナ、シュリ、俺に主張されて負けましたと手を挙げる。
「まあいいか。いいのか」
シモンはここから緊張感が増すはずなのになあと、ご飯に夢中な俺を見て呆れるのだった。
10
お気に入りに追加
141
あなたにおすすめの小説
異世界の片隅で引き篭りたい少女。
月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!
見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに
初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、
さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。
生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。
世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。
なのに世界が私を放っておいてくれない。
自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。
それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ!
己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。
※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。
ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
この野菜は悪役令嬢がつくりました!
真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。
花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。
だけどレティシアの力には秘密があって……?
せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……!
レティシアの力を巡って動き出す陰謀……?
色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい!
毎日2〜3回更新予定
だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!
婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る
拓海のり
ファンタジー
階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。
頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。
破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。
ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。
タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。
完結しました。ありがとうございました。
追放された最弱ハンター、最強を目指して本気出す〜実は【伝説の魔獣王】と魔法で【融合】してるので無双はじめたら、元仲間が落ちぶれていきました〜
里海慧
ファンタジー
「カイト、お前さぁ、もういらないわ」
魔力がほぼない最低ランクの最弱ハンターと罵られ、パーティーから追放されてしまったカイト。
実は、唯一使えた魔法で伝説の魔獣王リュカオンと融合していた。カイトの実力はSSSランクだったが、魔獣王と融合してると言っても信じてもらえなくて、サポートに徹していたのだ。
追放の際のあまりにもひどい仕打ちに吹っ切れたカイトは、これからは誰にも何も奪われないように、最強のハンターになると決意する。
魔獣を討伐しまくり、様々な人たちから認められていくカイト。
途中で追放されたり、裏切られたり、そんな同じ境遇の者が仲間になって、ハンターライフをより満喫していた。
一方、カイトを追放したミリオンたちは、Sランクパーティーの座からあっという間に転げ落ちていき、最後には盛大に自滅してゆくのだった。
※ヒロインの登場は遅めです。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる