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第26話 王族の異能の秘密

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 さて、俺が久しぶりに屋根の下で穏やかな眠りに就いている頃――
「神官長様。お耳に入れたいことが」
 王宮の一角にある教会で、神官長のパウロは懐柔しておいた官僚の一人から報告を受けていた。
「なるほど。やはり裏であれこれと動いているのは宰相か」
 そしてその報告ににやりと笑ってしまう。国王の落馬事故からどうも怪しいと思っていたが、ここに来て本格的に化けの皮が剥がれてきたようだ。
「シャルル様を唆してレオナール様を廃嫡するように仕向けたのも宰相のようです。国王陛下の代わりに政務を執られていたレオナール様のやり方は、いわばクリーンすぎました。それを嫌った者たちが簡単に宰相に靡いたことで、政変が可能だったようですが」
 三週間の護送という、いわばその間に死ぬように仕向けることに失敗したところから、風向きがおかしくなっているという。
 そもそも城館に着く前に死亡したという報告を待っていたというのに、まだ息をしていたので村に捨ててきたというから、多くの大臣は吃驚仰天した。そして、前々から神官長がレオナールには神の加護があるという話を、にわかに信じる気になった。
 さらにはそこで生き残り、宰相が放ったレンジャー部隊をいとも簡単に倒したとあっては、これはもう、宰相の甘言なんて信じるんじゃなかったという気分になってきたらしい。
 しかし、宰相は都合のいい面しか見ていない。そうやって大臣たちの気が変わったのは、神官長があれこれ画策しているからだと思っている。さらに、シャルルの立太子の儀も神官長だけが反対しているのだと思っている。
「とんでもない馬鹿ですね」
「あの、その、結局のところ、どうなのですか?」
 官僚の目から見ると、どちらも決定打に欠けるように思うのだがと、パウロの内心を探る。それに、パウロはもう隠す必要はないでしょうとははっと笑うと
「レオナール様は国王陛下と同様、異能を持っておられるのですよ。別にトップシークレットというわけではありませんが、神官と王族の一部しかこの話は知りません。異能は色々と問題がありますからね。そして、王族が得られる異能は、この国の祖がとある精霊と交した約束によって得られたもの。異能を発揮できることこそ、この国の王として必要な素質です」
 あっさり種明かしをしてみせるのだった。


「ふわああ。よく寝た」
 さて、周囲の騒がしさと違い、自分の能力について俺自身は全く気づかないまま、今日ものんびりとしたものだった。朝日を見ながら伸びをし、今日も山登りだなとストレッチを始める。
「おはよう」
 そこにマリナがやって来て、筋肉痛はないかと確認してきた。
「何とか大丈夫っぽい」
「それはよかったわ。あっち側の山もかなりの斜面よ」
「らしいね。俺、この村に送られる時に馬車で通ったけど、すげえ揺れたのを覚えているよ。この山を越えるのに馬車だと一週間も掛かるんだからビックリだよな」
 俺はストレッチを続けながら、問題の山を見つめる。
 その山はハッブル王国からすれば天然の要塞であった。だからその手前に城館が築かれ、ここで敵兵を足止めし、殲滅することを目的としていたのだ。
「あの状態で揺れてるなって思えたわけ。しかも一週間掛かってるって解っていたわけ? 本当に凄いわね」
 しかし、マリナは死にかけていた時にそんなことを気にする余裕があったんだと驚いてしまう。
「ううん。何となくだよ」
 それに俺だって意識がはっきりしていたわけじゃないからと首を横に振る。
「だとしても凄いわ。うんうん」
「何を納得しているんだ?」
「別に」
 久しぶりに解らないリアクションをするマリナに首を傾げつつ、俺は入念にストレッチをした。
 何はともあれ、ここからは兵士たちとの本格的な鬼ごっこだ。海まで無事に辿り着けるのか。それが俺の中で最重要事項なのだった。
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