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第24話 急斜面の下りは怖いよね
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ドロイヤの襲撃があったことで、ドロイヤ側の山道を通って北に抜けることが出来なくなった。そこで俺たちは、一度村まで戻り、そこから村の反対側の山へと向うことになったのだが――
「いやあ、大変だ」
「この辺は坂が急だからな。気をつけろよ」
荷物を背負って急な坂を下るのがこれほど大変だとは。俺は木の枝を杖代わりに、慎重に進む。だが、他のメンバーは山道なんて慣れたもの。すたすたと普通の道のように歩いているから恐ろしい。
「そういう姿を見てると、王子様だって思うよね」
「ピーター、余計なことを言ってると、お前を巻き添えに転ぶからな」
「止めろよ」
茶々を入れたピーターは、俺の脅しに飛び退いてくれる。そんなに転けそうに見えるのか。
「夕方までにはなんとか村の場所まで戻りたい。頑張れよ」
そんな俺を唯一励ましてくれるのはシモンだ。
「ほうい」
俺は返事をしつつ、後ろで女子たちが交している会話が気になる。
「村はもうもぬけの殻だけど、やっぱり兵士が来てるのよねえ。まだ留まっているのかしら」
「そうね。まだいるんだったら、トラップは必要かも」
「シュリ、久々に異能を発揮するチャンスよ。兵士は基本男なんだから」
「まあ、キキ。あれを発動するのは、ふふっ。駄目よ、下っ端なんて」
こんな感じで、凄く不穏な会話をしている。
みんなが百戦錬磨の猛者であることは解っているが、そういう会話を聞くと、本当に異能者なんだなと実感する。
「そう言えば、シュリの異能ってどんなのなんだ?」
俺は悪いかなと思いつつ、訊ねてしまう。すると、シュリは頬に手を当て
「秘密よ。まあ、そのうち披露してあげるわ」
と蠱惑的に笑ってくれる。
怖い。秘密にされる方が何だか怖い。
「異能って言えばよ。キキ、先に村に向ってくれよ。お前の能力ならば、どこが安全で大丈夫か解るだろ」
「はいはい。いいわよ」
キキはそう言って駆け出そうとしたが
「あっ、俺も一緒に連れて行って」
なぜかアンドレが名乗りです。
「えっ、そりゃあ、私は戦闘が不向きだからいいけど」
大丈夫かとキキは不安そうだ。
一体どういう異能なのやら。俺はキキとアンドレを交互に見るが
「大丈夫。俺の体力舐めないでよ」
アンドレは詳しく聞くこともなく、そう言ってのける。
相変わらず何に対しても軽い男だ。
「そう? じゃあ、早駆けで行くわよ」
「了解」
そして、二人は納得すると風のように動き出す。キキは木の上に飛び乗ると、ぴょんぴょんと身軽に駆けて行ってしまった。そしてアンドレは勢いよく斜面を駆けて行く。
「凄え」
本当にアンドレがキキのスピードについて行けているのもびっくりするが、キキのあの身軽さは何だ? 異能って本当に色々と出来るんだな。
「にしても、あいつ。ただの騎士じゃなさそうだな」
「ははっ。あの男も色々と秘密がありそうだよな」
呆れている俺に、シモンがぐっと親指を立ててくれる。どうやらあの騎士、只者ではなかったらしい。
「なんで俺に従ったんだか」
「面白そうだからだろ」
「いや、そうなんだけど」
もう何が何だかと頭を抱えたくなる。しかし、斜面を下っている最中。気を抜けない。
「明日は変なところが筋肉痛になってそう」
俺は思わずそうぼやいてしまうが、ドロイヤの兵士が気になるので仕方がない。休んでいる場合ではないのだ。
「頑張れ。この急斜面は後もう少しだ」
そんな俺をシモンは変わらずに応援してくれる。
「マリナ、干し肉くれよ」
「駄目よ。これで我慢しなさい」
「ええっ。薬草団子じゃん」
そして外野は、やっぱりマイペースなのだった。
「いやあ、大変だ」
「この辺は坂が急だからな。気をつけろよ」
荷物を背負って急な坂を下るのがこれほど大変だとは。俺は木の枝を杖代わりに、慎重に進む。だが、他のメンバーは山道なんて慣れたもの。すたすたと普通の道のように歩いているから恐ろしい。
「そういう姿を見てると、王子様だって思うよね」
「ピーター、余計なことを言ってると、お前を巻き添えに転ぶからな」
「止めろよ」
茶々を入れたピーターは、俺の脅しに飛び退いてくれる。そんなに転けそうに見えるのか。
「夕方までにはなんとか村の場所まで戻りたい。頑張れよ」
そんな俺を唯一励ましてくれるのはシモンだ。
「ほうい」
俺は返事をしつつ、後ろで女子たちが交している会話が気になる。
「村はもうもぬけの殻だけど、やっぱり兵士が来てるのよねえ。まだ留まっているのかしら」
「そうね。まだいるんだったら、トラップは必要かも」
「シュリ、久々に異能を発揮するチャンスよ。兵士は基本男なんだから」
「まあ、キキ。あれを発動するのは、ふふっ。駄目よ、下っ端なんて」
こんな感じで、凄く不穏な会話をしている。
みんなが百戦錬磨の猛者であることは解っているが、そういう会話を聞くと、本当に異能者なんだなと実感する。
「そう言えば、シュリの異能ってどんなのなんだ?」
俺は悪いかなと思いつつ、訊ねてしまう。すると、シュリは頬に手を当て
「秘密よ。まあ、そのうち披露してあげるわ」
と蠱惑的に笑ってくれる。
怖い。秘密にされる方が何だか怖い。
「異能って言えばよ。キキ、先に村に向ってくれよ。お前の能力ならば、どこが安全で大丈夫か解るだろ」
「はいはい。いいわよ」
キキはそう言って駆け出そうとしたが
「あっ、俺も一緒に連れて行って」
なぜかアンドレが名乗りです。
「えっ、そりゃあ、私は戦闘が不向きだからいいけど」
大丈夫かとキキは不安そうだ。
一体どういう異能なのやら。俺はキキとアンドレを交互に見るが
「大丈夫。俺の体力舐めないでよ」
アンドレは詳しく聞くこともなく、そう言ってのける。
相変わらず何に対しても軽い男だ。
「そう? じゃあ、早駆けで行くわよ」
「了解」
そして、二人は納得すると風のように動き出す。キキは木の上に飛び乗ると、ぴょんぴょんと身軽に駆けて行ってしまった。そしてアンドレは勢いよく斜面を駆けて行く。
「凄え」
本当にアンドレがキキのスピードについて行けているのもびっくりするが、キキのあの身軽さは何だ? 異能って本当に色々と出来るんだな。
「にしても、あいつ。ただの騎士じゃなさそうだな」
「ははっ。あの男も色々と秘密がありそうだよな」
呆れている俺に、シモンがぐっと親指を立ててくれる。どうやらあの騎士、只者ではなかったらしい。
「なんで俺に従ったんだか」
「面白そうだからだろ」
「いや、そうなんだけど」
もう何が何だかと頭を抱えたくなる。しかし、斜面を下っている最中。気を抜けない。
「明日は変なところが筋肉痛になってそう」
俺は思わずそうぼやいてしまうが、ドロイヤの兵士が気になるので仕方がない。休んでいる場合ではないのだ。
「頑張れ。この急斜面は後もう少しだ」
そんな俺をシモンは変わらずに応援してくれる。
「マリナ、干し肉くれよ」
「駄目よ。これで我慢しなさい」
「ええっ。薬草団子じゃん」
そして外野は、やっぱりマイペースなのだった。
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