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第22話 逃げるしかない
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廃嫡に関して、多くの大臣は納得したのではなかったのか。
どうして未だにシャルルが王太子になっていないんだ?
俺は頭の中がぐちゃぐちゃで、久々に眠れない夜を過ごした。そして、周囲が明るくなると、ごそごそとテントを出る。
昨日は襲撃があった後、少し場所を変えるべきだとなって、山を百メートルほど下った。おかげで起きた時に見た場所は、まったく見覚えのない場所だった。
「はあ。不思議な感じだよなあ」
王宮を追われ、あれよあれよと流浪生活。それを今、実感していた。
この世界に、自分の居場所はないのだろうか。
いや、なければ他国から追われることもないのか。
難しい問題だ。
「おはよう」
俺が腕を組んで悩んでいると、アンドレが起きてきて挨拶してくる。
「おはよう」
俺はそれに返事をしつつ、こいつもよく解らんよなあと、もう何度目になるか解らない疑問が頭を過ぎる。
「王子様、あんまり悩むと禿げるよ」
「はっ」
「悩んだって仕方ないよ。起こってしまったことは取り返しがつかないんだよ。後はどう落とし前を付けるか、じゃん」
睨んだ俺に向けて、アンドレは優しく笑う。そして頭をぽんぽんと撫でてきた。
こ、子ども扱いしやがって。
俺はムカついたものの、アンドレの言葉には素直に同意出来た。
確かに、どう落とし前をつけるか。これが重要だ。
「でも、王宮には戻らない」
しかし、宰相とシャルルが手を組んで謀反を起こしたことで、俺は疑心暗鬼に陥っている。もう、王宮で暮らしていけるとは思えなかった。
あそこは、二度と近づくべき場所じゃない。
「ふうん。やっぱり、遠くの国に逃げるの?」
「うん。生死不明となってしまうのが一番だよ。みんな、まだ俺が生きていると思うから追い掛けてくる。俺は、せっかく生き延びたんだし、この世界を色々と知りたいと思っている。幸い、仲間には恵まれているからさ。それじゃあ、駄目なのかな」
俺の本音に、アンドレは驚いたようだった。しかし
「よく言った」
「うわっ」
後ろからマリナが抱きついてきて、俺はびっくりしてよろける。
「生きるって決意をしただけでも大きいわよ」
マリナはそう言って俺の頭をぐりぐりと撫でてくる。
「まあ、そうだね」
アンドレも頷くと
「朝から騒がしいなあ」
シモンが起きてきて、俺の顔を見る。そして親指を立てるのだから、今までの話はばっちり盗み聞きしていたようだ。
「ともかく、海まで逃げよう。途中、どういう状況かだけは確認したいけど、どういう状況でも、俺は立ち入らない。逃げるのに集中する」
落とし前というのならば、罠に嵌まった俺が悪いのだ。だったら、とことん王太子の地位から逃げてやる。
「レオのそういう性格、いいと思うわ」
そこにのっそりとシュリがやって来て、蠱惑的な笑みを浮かべてくれる。
「ははっ。なんか、色々とありすぎて変に前向きになったみたいだ」
俺は誤魔化すようにそう言って笑う。
本当は、王宮から逃げていいのかと思っている。
シャルルの正当性が認められていない理由は何なのか、それが気になっている。
すぐに立太子すればよかったのに、何を手間取っているのかと気になる。
でも、他国が利用しようと動き出したのならば、ますますあそこに近づくのは得策じゃない。
戻れば間違いなく、シャルルは俺の首を刎ねることで、正当性を手に入れようとするはずだ。
「逃げるしかないんだよ」
俺は昇りつつある朝日を見つめながら、生きる場所は大きく変わったんだからと、そう言い聞かせていた。
どうして未だにシャルルが王太子になっていないんだ?
俺は頭の中がぐちゃぐちゃで、久々に眠れない夜を過ごした。そして、周囲が明るくなると、ごそごそとテントを出る。
昨日は襲撃があった後、少し場所を変えるべきだとなって、山を百メートルほど下った。おかげで起きた時に見た場所は、まったく見覚えのない場所だった。
「はあ。不思議な感じだよなあ」
王宮を追われ、あれよあれよと流浪生活。それを今、実感していた。
この世界に、自分の居場所はないのだろうか。
いや、なければ他国から追われることもないのか。
難しい問題だ。
「おはよう」
俺が腕を組んで悩んでいると、アンドレが起きてきて挨拶してくる。
「おはよう」
俺はそれに返事をしつつ、こいつもよく解らんよなあと、もう何度目になるか解らない疑問が頭を過ぎる。
「王子様、あんまり悩むと禿げるよ」
「はっ」
「悩んだって仕方ないよ。起こってしまったことは取り返しがつかないんだよ。後はどう落とし前を付けるか、じゃん」
睨んだ俺に向けて、アンドレは優しく笑う。そして頭をぽんぽんと撫でてきた。
こ、子ども扱いしやがって。
俺はムカついたものの、アンドレの言葉には素直に同意出来た。
確かに、どう落とし前をつけるか。これが重要だ。
「でも、王宮には戻らない」
しかし、宰相とシャルルが手を組んで謀反を起こしたことで、俺は疑心暗鬼に陥っている。もう、王宮で暮らしていけるとは思えなかった。
あそこは、二度と近づくべき場所じゃない。
「ふうん。やっぱり、遠くの国に逃げるの?」
「うん。生死不明となってしまうのが一番だよ。みんな、まだ俺が生きていると思うから追い掛けてくる。俺は、せっかく生き延びたんだし、この世界を色々と知りたいと思っている。幸い、仲間には恵まれているからさ。それじゃあ、駄目なのかな」
俺の本音に、アンドレは驚いたようだった。しかし
「よく言った」
「うわっ」
後ろからマリナが抱きついてきて、俺はびっくりしてよろける。
「生きるって決意をしただけでも大きいわよ」
マリナはそう言って俺の頭をぐりぐりと撫でてくる。
「まあ、そうだね」
アンドレも頷くと
「朝から騒がしいなあ」
シモンが起きてきて、俺の顔を見る。そして親指を立てるのだから、今までの話はばっちり盗み聞きしていたようだ。
「ともかく、海まで逃げよう。途中、どういう状況かだけは確認したいけど、どういう状況でも、俺は立ち入らない。逃げるのに集中する」
落とし前というのならば、罠に嵌まった俺が悪いのだ。だったら、とことん王太子の地位から逃げてやる。
「レオのそういう性格、いいと思うわ」
そこにのっそりとシュリがやって来て、蠱惑的な笑みを浮かべてくれる。
「ははっ。なんか、色々とありすぎて変に前向きになったみたいだ」
俺は誤魔化すようにそう言って笑う。
本当は、王宮から逃げていいのかと思っている。
シャルルの正当性が認められていない理由は何なのか、それが気になっている。
すぐに立太子すればよかったのに、何を手間取っているのかと気になる。
でも、他国が利用しようと動き出したのならば、ますますあそこに近づくのは得策じゃない。
戻れば間違いなく、シャルルは俺の首を刎ねることで、正当性を手に入れようとするはずだ。
「逃げるしかないんだよ」
俺は昇りつつある朝日を見つめながら、生きる場所は大きく変わったんだからと、そう言い聞かせていた。
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