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第21話 意外な敵の襲撃
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鳩の甘ダレ焼き鳥に満足した夜。
「ん?」
俺は気配を察知して目が覚めた。
レンジャー部隊に襲撃された日を境に、一応は寝る時も気をつけていたから、今回はすぐに察知出来た。
何だかテントを探っているような気配がある。
俺はあの時レンジャーから奪っておいた刀を引き寄せた。そして、見知らぬ顔がぬっと入ってきたのを確認すると
「とうっ」
一撃でその男の心臓を突き刺す。
「ぐっ」
男は悲鳴を上げる間もなく倒れた。俺はそれを受け止めると、そっと地面に置く。そして他にも仲間がいるのかと気配を探った。
と、そこに
「ぐはっ」
他のテントから呻き声が聞こえた。
俺は注意しながらテントを出ると、アンドレが敵を斬り伏せているところだった。他にもシモンが一人倒している。
「他は?」
俺が女子たちは大丈夫かと視線を巡らせると
「うおっ」
かっと辺りが明るくなった。と、同時にどさどさっという音がする。
「ちょっと、敵はまだ山狩りしないんじゃなかったの?」
そしてシュリの不快そうな声がした。それに続いてキキとマリナが出てくる。
「後は」
「とりゃあ」
ピーターはどこだと思ったら、頭上から声がした。そして、どさっと男が一人降ってくる。敵が木の上にもいたようだ。
「これで全部だと思うぞ」
最後にピーターが男の上に着地して全員が集合した。
「おかしいなあ。山に行く装備をしていなかったのに」
シモンがあそこから山狩りしたとしても、まだ追いつかないはずなのにと顎を擦る。となると、これはシモンが目撃したのとは別働隊か。
気になった俺は、倒れている敵が息をしていないのを確認してから近づいた。
「嘘だろ」
そして、俺は倒れた男の衣服を改めて驚いた。目立たないところに、ドロイヤ王国の紋章があったのだ。
「これ、ドロイヤの兵だ」
「なんだって」
「まだ国境は越えていないわよ」
俺の指摘に、シモンもマリナも驚いた声を上げる。しかし、紋章を見間違えるはずがない。
「まさか、俺が追放されたのに気づいて」
「まあ。誤魔化し続けるのは無理だよねえ。政変があったことは、すでに周辺諸国に伝わっているでしょう。で、どうやらシャルル王子様は上手く王位継承権を手に入れられなかったようだね」
アンドレが俺の問いに答えるだけでなく、さらに恐ろしいことを言ってくれる。
「それって」
「不当に奪ったと、他国にもバレちゃっているんだよ。たぶん、王子様の処遇の発表も、立太子の儀もまだ出来ていないんじゃないかな」
アンドレの答えは、俺にとっては最悪としか思えないものだった。もしもそうだとすると、他の国にハッブルが攻め込まれかねない。
「いや、情報を確認しないと」
「どっちにしろ、ドロイヤはお前に目を付けて、殺そうとしたか確保しようとしたかのどっちかってことだな。早めにこの山を抜けないとヤバいぞ」
戸惑う俺に、シモンはゆっくりとは進めなくなったなと舌打ちする。
「ここって村の近くでもあるわよね。夜の間に村を通過して、その奥の山に逃げるっていうのは?」
シュリがここから離れるのならば、村の反対側にあった山がいいのではと提案する。
「そうだな。とはいえ、今からじゃあ村に着く頃には日が昇っちまうだろう。明日の夜だな」
それに対し、シモンはここの正確な位置が解るようで、そう計画する。
「ハッブル側の山に入れば、情報も手に入るかもしれないしね」
そしてマリナが、俺を落ち着けるように、そう言って肩を叩いてくれた。
「う、うん」
だが、正確な情報を得たとしても、俺はどうすればいいんだ。
廃嫡の正当性が揺らぐかもしれないという状況に、俺の戸惑いは大きくなるばかりだった。
「ん?」
俺は気配を察知して目が覚めた。
レンジャー部隊に襲撃された日を境に、一応は寝る時も気をつけていたから、今回はすぐに察知出来た。
何だかテントを探っているような気配がある。
俺はあの時レンジャーから奪っておいた刀を引き寄せた。そして、見知らぬ顔がぬっと入ってきたのを確認すると
「とうっ」
一撃でその男の心臓を突き刺す。
「ぐっ」
男は悲鳴を上げる間もなく倒れた。俺はそれを受け止めると、そっと地面に置く。そして他にも仲間がいるのかと気配を探った。
と、そこに
「ぐはっ」
他のテントから呻き声が聞こえた。
俺は注意しながらテントを出ると、アンドレが敵を斬り伏せているところだった。他にもシモンが一人倒している。
「他は?」
俺が女子たちは大丈夫かと視線を巡らせると
「うおっ」
かっと辺りが明るくなった。と、同時にどさどさっという音がする。
「ちょっと、敵はまだ山狩りしないんじゃなかったの?」
そしてシュリの不快そうな声がした。それに続いてキキとマリナが出てくる。
「後は」
「とりゃあ」
ピーターはどこだと思ったら、頭上から声がした。そして、どさっと男が一人降ってくる。敵が木の上にもいたようだ。
「これで全部だと思うぞ」
最後にピーターが男の上に着地して全員が集合した。
「おかしいなあ。山に行く装備をしていなかったのに」
シモンがあそこから山狩りしたとしても、まだ追いつかないはずなのにと顎を擦る。となると、これはシモンが目撃したのとは別働隊か。
気になった俺は、倒れている敵が息をしていないのを確認してから近づいた。
「嘘だろ」
そして、俺は倒れた男の衣服を改めて驚いた。目立たないところに、ドロイヤ王国の紋章があったのだ。
「これ、ドロイヤの兵だ」
「なんだって」
「まだ国境は越えていないわよ」
俺の指摘に、シモンもマリナも驚いた声を上げる。しかし、紋章を見間違えるはずがない。
「まさか、俺が追放されたのに気づいて」
「まあ。誤魔化し続けるのは無理だよねえ。政変があったことは、すでに周辺諸国に伝わっているでしょう。で、どうやらシャルル王子様は上手く王位継承権を手に入れられなかったようだね」
アンドレが俺の問いに答えるだけでなく、さらに恐ろしいことを言ってくれる。
「それって」
「不当に奪ったと、他国にもバレちゃっているんだよ。たぶん、王子様の処遇の発表も、立太子の儀もまだ出来ていないんじゃないかな」
アンドレの答えは、俺にとっては最悪としか思えないものだった。もしもそうだとすると、他の国にハッブルが攻め込まれかねない。
「いや、情報を確認しないと」
「どっちにしろ、ドロイヤはお前に目を付けて、殺そうとしたか確保しようとしたかのどっちかってことだな。早めにこの山を抜けないとヤバいぞ」
戸惑う俺に、シモンはゆっくりとは進めなくなったなと舌打ちする。
「ここって村の近くでもあるわよね。夜の間に村を通過して、その奥の山に逃げるっていうのは?」
シュリがここから離れるのならば、村の反対側にあった山がいいのではと提案する。
「そうだな。とはいえ、今からじゃあ村に着く頃には日が昇っちまうだろう。明日の夜だな」
それに対し、シモンはここの正確な位置が解るようで、そう計画する。
「ハッブル側の山に入れば、情報も手に入るかもしれないしね」
そしてマリナが、俺を落ち着けるように、そう言って肩を叩いてくれた。
「う、うん」
だが、正確な情報を得たとしても、俺はどうすればいいんだ。
廃嫡の正当性が揺らぐかもしれないという状況に、俺の戸惑いは大きくなるばかりだった。
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