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第20話 鳩の甘ダレ焼き鳥
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さて、山の中で政治とは無縁の生活を送る俺は
「おおっ」
罠に野ウサギが掛かっているのを発見して大喜びしていた。
「ウサギが捕れてるぞ」
「そいつは良かった。こっちも鳩が掛かっている」
俺の報告に対し、シモンが鳩を抱えてやって来た。五羽も捕れている。これは今日もご馳走の予感だ。
「鳩か。香草焼きって、ここでも出来るのかな」
「どうだろうな。それよりもぱりっと焼いて、特性の甘ダレを掛けて食うのも美味いぞ」
「何それ?」
俺がそんなの食ったことないぞと目を輝かせると
「この俺に任せなさい」
シモンが今日の料理はそれに決定なと笑うのだった。
「美味っ。世の中、こんなに美味いものに溢れていたなんて。王宮での食い物が霞んで見える」
「おいおい、それは言い過ぎだろ」
串に刺さった鳩をもぐもぐと食べる俺の絶賛に、まんざらでもない様子で窘めるシモンだ。しかし、他のメンバーもこれは美味しいと大絶賛で、鳩の甘ダレ焼き鳥は大成功といえる。
「王宮の食いもんって何でも格式張っているっていうか、まあ、不味くはないんだけど、感動はないよねえ」
俺は美味すぎると、しみじみと呟いていた。すると
「それは自分で捕ったっていうのも加算されているからよ」
シュリが笑ってそう説明してくれる。
ああ、なるほど。確かに王宮だとシェフに丸投げだもんなあ。
しかも出てくるまでに時間が掛かるから、こんなにも出来たて熱々じゃないし。
「お前、本当に王宮に帰りたくないんだな。未練とかないの?」
そんな俺に、ピーターが呆れたように訊いてくる。が、俺は意外なほど戻りたいとか未練というものがない。
「ううん。あれこれ心配なことはあるけど、別に。ってか、この生活が楽しすぎて」
日々の生活に追われるだけだが、自分のことと身近な仲間のことだけを考えていればいい。それがどれほど気楽なことか。
「王宮って楽しくねえの? めっちゃ華やかじゃん?」
ピーターは興味津々に訊ねてくるが、
「見かけだけだよ。中はどろどろ人間関係ばかりだし、王太子ともなれば、朝から晩まで勉強だの訓練だのあるし。常に誰かが傍にいるから気が抜けないんだよね」
この生活がどれだけ自由で楽か解るかと、俺は力説してしまう。
「そういうものだよねえ。これが王様になったら、ベッドの中まで監視されるわけだよ」
で、アンドレもそんなことを言って茶化してくる。
「ベッドの中?」
しかし、ピーターはそれってどういう意味と首を傾げている。それにアンドレはにやっと笑うと
「子作りも監視されているってこと」
とストレートに言った。
「うわっ。マジかよ。出るもん出なくなるじゃん」
「こらこら男子ども」
盛り上がるアンドレとピーターに、マリナから容赦ないげんこつが飛ぶ。
「いてっ。まあ、そうか。じゃあ、ここってレオにとってはいい場所なんだな」
「うん。みんなと会えて本当に良かったよ」
にこっと笑って言う俺に、その場にいた仲間たちは俺たちもだと笑い返してくれる。
これもまた、王宮では味わえない一体感だ。
「ああ、最高に幸せ。何とか無事に遠くの国に逃げたいもんだ」
「だな。そうそう、海を渡って向こうにはでかい大陸が広がっているって話だぜ」
シモンが凄い場所があるらしいぞと言い
「それよりも、ミッドランド連邦国よりもずっと向こう側には、変わった国があるっていう話よ。そっちが気になるわね」
とキキが楽しそうに言う。
「こりゃあ、世界中を旅することになるな」
でもって俺は、呑気に世界旅行か。いいな~なんて思っているのだった。
「おおっ」
罠に野ウサギが掛かっているのを発見して大喜びしていた。
「ウサギが捕れてるぞ」
「そいつは良かった。こっちも鳩が掛かっている」
俺の報告に対し、シモンが鳩を抱えてやって来た。五羽も捕れている。これは今日もご馳走の予感だ。
「鳩か。香草焼きって、ここでも出来るのかな」
「どうだろうな。それよりもぱりっと焼いて、特性の甘ダレを掛けて食うのも美味いぞ」
「何それ?」
俺がそんなの食ったことないぞと目を輝かせると
「この俺に任せなさい」
シモンが今日の料理はそれに決定なと笑うのだった。
「美味っ。世の中、こんなに美味いものに溢れていたなんて。王宮での食い物が霞んで見える」
「おいおい、それは言い過ぎだろ」
串に刺さった鳩をもぐもぐと食べる俺の絶賛に、まんざらでもない様子で窘めるシモンだ。しかし、他のメンバーもこれは美味しいと大絶賛で、鳩の甘ダレ焼き鳥は大成功といえる。
「王宮の食いもんって何でも格式張っているっていうか、まあ、不味くはないんだけど、感動はないよねえ」
俺は美味すぎると、しみじみと呟いていた。すると
「それは自分で捕ったっていうのも加算されているからよ」
シュリが笑ってそう説明してくれる。
ああ、なるほど。確かに王宮だとシェフに丸投げだもんなあ。
しかも出てくるまでに時間が掛かるから、こんなにも出来たて熱々じゃないし。
「お前、本当に王宮に帰りたくないんだな。未練とかないの?」
そんな俺に、ピーターが呆れたように訊いてくる。が、俺は意外なほど戻りたいとか未練というものがない。
「ううん。あれこれ心配なことはあるけど、別に。ってか、この生活が楽しすぎて」
日々の生活に追われるだけだが、自分のことと身近な仲間のことだけを考えていればいい。それがどれほど気楽なことか。
「王宮って楽しくねえの? めっちゃ華やかじゃん?」
ピーターは興味津々に訊ねてくるが、
「見かけだけだよ。中はどろどろ人間関係ばかりだし、王太子ともなれば、朝から晩まで勉強だの訓練だのあるし。常に誰かが傍にいるから気が抜けないんだよね」
この生活がどれだけ自由で楽か解るかと、俺は力説してしまう。
「そういうものだよねえ。これが王様になったら、ベッドの中まで監視されるわけだよ」
で、アンドレもそんなことを言って茶化してくる。
「ベッドの中?」
しかし、ピーターはそれってどういう意味と首を傾げている。それにアンドレはにやっと笑うと
「子作りも監視されているってこと」
とストレートに言った。
「うわっ。マジかよ。出るもん出なくなるじゃん」
「こらこら男子ども」
盛り上がるアンドレとピーターに、マリナから容赦ないげんこつが飛ぶ。
「いてっ。まあ、そうか。じゃあ、ここってレオにとってはいい場所なんだな」
「うん。みんなと会えて本当に良かったよ」
にこっと笑って言う俺に、その場にいた仲間たちは俺たちもだと笑い返してくれる。
これもまた、王宮では味わえない一体感だ。
「ああ、最高に幸せ。何とか無事に遠くの国に逃げたいもんだ」
「だな。そうそう、海を渡って向こうにはでかい大陸が広がっているって話だぜ」
シモンが凄い場所があるらしいぞと言い
「それよりも、ミッドランド連邦国よりもずっと向こう側には、変わった国があるっていう話よ。そっちが気になるわね」
とキキが楽しそうに言う。
「こりゃあ、世界中を旅することになるな」
でもって俺は、呑気に世界旅行か。いいな~なんて思っているのだった。
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