廃嫡王子のスローライフ下剋上

渋川宙

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第17話 進路を北に取れ

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「だが、このままでは捕まっちまうぜ」
 どこにも逃げないなんて言っていられないぞと、シモンは俺を強く睨む。
「そ、そうだけど」
「それに捕まった場合、その場で即刻首を刎ねられるだろうねえ」
 困る俺に、さらに追い打ちを掛けてくるのはアンドレだ。
「ぐぐっ」
 俺はどうすればいいんだと頭を抱えた。そしてちらっとマリナたちの方へと目を向ける。
 そのマリナたちは黙って会話の成り行きを見守っているが不安そうだった。
 それはそうだ。俺に協力したことがバレれば、彼女たちだって無事では済まない。
 一体どうすることが最善なのか。八方塞がりの状況に俺は頭を抱えてしまう。
「あのさ」
 と、そこに遠慮がちに手を挙げたのはキキだ。
「どうした?」
 それにシモンは何か気になるのかと訊く。今、俺が大混乱しているので代わりに答えてくれるらしい。
「他の国に行くのは私たちにもリスクがあるわよ。ここならば山の中にいれば大体見逃してくれるけど、他の国だとそうはいかないもの」
 キキはそこは考えているのかとシモンを睨む。
 俺ばかりに負担を掛けるな。そう訴えてくれているのだ。
「確かにそれは考えなきゃいけないことだな。とはいえ、俺たちは何とか逃げる術がある。今、追い詰められているのはレオだ。だから、レオの意見を優先しなきゃいけない」
 しかし、これは俺のために必要なことだとシモンは主張する。
 確かにそのとおり。
 生き残ってしまったからには、この先をしっかり考えなきゃいけないのだ。
「あいつらは、山狩りをする気はないのかな」
 ということで、俺は一先ず現状を整理しようと提案する。
 もしも山狩りを考えているのならば、山の中から一刻も早く立ち去らなければいけない。しかし、そうでない場合はもう少し考えようがあるのではないか。
「山狩りねえ。どうだろう。むしろ待ち構えるって感じだったな。いずれやるとしても、手掛かりゼロの状況でやるのは効率が悪いと考えているだろう」
 シモンはのんびりとは出来ないものの、まだまだ時間はあるだろうとの見方を示す。
「今、ミッドランド連邦国側にいるんだよな」
 俺はさらに確認。
「ああ、そうだな」
 何か思いついたのかと、シモンは俺を見る。ということで、俺は木の枝で地面に地図を描いた。
「ミッドランド側の山ってことは、俺たちがいるのは多分だけどここだ」
 俺は地図の下、南側を指す。
「まあ、そうだな」
「ここから進路を北にとって、ドロイヤの国境付近を通り、ハッブルの北側に抜けることって出来ないかな」
「えっ」
「あっ、海に出るってこと?」
 真っ先にピーターが何を言いたいか理解した。それに俺は大きく頷く。
「領土を接している国に亡命するのは、やはり政治が大きく絡みかねない。海まで出て、そこから大きく回って遠くの国に助けを求めるのが、逃げ道としては一番だ」
「ふむ」
 それにシモンも言い分としては正しいと頷いた。問題は上手く山を利用しながら北まで抜けられるか、だ。
「あてもなく彷徨うよりはいいんじゃない」
 それに対し、生き残るための策を考えただけマシでしょとアンドレは俺の案に賛成してくれた。
「そうね。まだ山の下にばかり気が向いている兵士たちを出し抜くためにも、早めに進路を北に取るのがいいかも」
 それまで黙っていたシュリも、戦争に巻き込まれるのはごめんだからと頷く。
「ったく、しゃあねえ王子様だな」
 ピーターもそう言いつつ笑顔だ。どうやらピーターは海に行くということに期待しているようだが、それでも味方になってくれるのはありがたい。
「まあ、その策で行くか」
 そして議題を振ったシモンも、その策に賭けるしかないかと頷いたのだった。
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