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第13話 ドワーフの末裔と千里眼の男
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この変な騎士が王子様の傍に残ったのは気まぐれじゃない。
そう確信しているシモンは、じろりとアンドレを睨む。
「まあ、確かに色々と気づくことがあったから、こっちに残ったんだよね」
アンドレは明らかにこっちの方が面白いんだよとにやりと笑う。
「どういうことだ?」
「まず、廃嫡に関して動いていたのは宰相だ。シャルルは乗っただけだね。まあ、シャルルにすれば自分に王位が転がり込んでくるわけだから、兄を追放することにはあっさり同意するよね」
「とんでもねえ話だけどな」
権力が絡むと、人間はとんでもない発想をするよなとシモンは苦笑いだ。
「まあね。ドワーフの末裔の貴方には理解でいないでしょうよ」
「貴様っ」
その秘密をなぜ知っていると、シモンは目を剥いた。
「まあまあ。ここで睨み合いはなしですよ」
「いや、そもそもお前は何者だ。レオの護衛として来たのは、その隠している本性のせいか」
「シモンは気づいていると思ってたんだけどなあ」
自分の正体はばれていなかったのかと、アンドレはくくっと笑う。
「異能者だろうってことは解ってたが、何者だ?」
そんなアンドレに、あの村に人がいると確信していた時点で、こいつは同じ側の人間だと思っていたが、予想よりもややこしそうだ。
「そんなに睨まないでよ。王宮に潜り込める時点で、俺の能力はたかが知れているって解るだろ。ただ、人よりよく見えるってだけ」
「千里眼か」
「そう。だから、俺に隠し事は不可能ってこと。と、互いの正体が解ったところで続けるよ。今回の件の主導者はあくまで宰相だ。奴は王様の落馬事故にも絡んでいる」
「ははあ。急にレオが政務を執るようになったっていうきっかけね」
シモンは腕を組み、いきなり自分が国王として生きなければならなくなるって、どういう感じなのだろうと悩む。が、まったく想像出来なかった。
「普通ならば、わたわたして宰相に泣きつくだろうさ。なんせ、いくら教育を受けているとはいえ、政治は素人なんだから。でも、王子様は完璧にこなしてしまった。そこで宰相は次の手を打った」
「なるほど。構造としては簡単なんだな。宰相が全権を手に入れたい。そのためにあれこれやってる」
「そういうこと」
アンドレはにこっと笑い、でも、ここからがポイントと指を立てる。
「レオナールが完璧に政治を出来たことも不思議だけど、ここまで生き残れたのも不思議だ。そして反射神経は単に訓練していただけとは思えない速さ。狩猟能力も完璧。ここまでくるとはっきりするのは」
「レオも異能者だってことか」
「そう。だからレオナールには異能者の扱いが隠されていたんだと思う。異能の存在を知ることで覚醒しちゃう人、いるからね」
「ははあ」
それで宰相の企みは悉く頓挫しているのかとシモンは頷いた。しかし、王族が異能者だと。これは納得出来ないことだ。
「いや、この国は他の国に比べて異能者に寛大だろ。それって、たぶん、どこかで異能者の血が混じったからじゃないかな。他の国から怪しまれないように、異能者の身分を一段下にしているけど、殺されることはまずないだろ。どうしてそんな措置なのかといえば、どこかの時点で王族と異能者が交わり、王族の中にも異能を発揮する人がいるからじゃないかな」
「なっ」
それはとんでもない秘密じゃないかとシモンは驚く。だが、そう考えると、王子様の意外なタフさも納得できる。
「レオナールは色んな秘密を抱えているんだよ。本人が知らないうちにね」
アンドレはだからこっちに残ったんだよと、楽しそうに笑うのだった。
そう確信しているシモンは、じろりとアンドレを睨む。
「まあ、確かに色々と気づくことがあったから、こっちに残ったんだよね」
アンドレは明らかにこっちの方が面白いんだよとにやりと笑う。
「どういうことだ?」
「まず、廃嫡に関して動いていたのは宰相だ。シャルルは乗っただけだね。まあ、シャルルにすれば自分に王位が転がり込んでくるわけだから、兄を追放することにはあっさり同意するよね」
「とんでもねえ話だけどな」
権力が絡むと、人間はとんでもない発想をするよなとシモンは苦笑いだ。
「まあね。ドワーフの末裔の貴方には理解でいないでしょうよ」
「貴様っ」
その秘密をなぜ知っていると、シモンは目を剥いた。
「まあまあ。ここで睨み合いはなしですよ」
「いや、そもそもお前は何者だ。レオの護衛として来たのは、その隠している本性のせいか」
「シモンは気づいていると思ってたんだけどなあ」
自分の正体はばれていなかったのかと、アンドレはくくっと笑う。
「異能者だろうってことは解ってたが、何者だ?」
そんなアンドレに、あの村に人がいると確信していた時点で、こいつは同じ側の人間だと思っていたが、予想よりもややこしそうだ。
「そんなに睨まないでよ。王宮に潜り込める時点で、俺の能力はたかが知れているって解るだろ。ただ、人よりよく見えるってだけ」
「千里眼か」
「そう。だから、俺に隠し事は不可能ってこと。と、互いの正体が解ったところで続けるよ。今回の件の主導者はあくまで宰相だ。奴は王様の落馬事故にも絡んでいる」
「ははあ。急にレオが政務を執るようになったっていうきっかけね」
シモンは腕を組み、いきなり自分が国王として生きなければならなくなるって、どういう感じなのだろうと悩む。が、まったく想像出来なかった。
「普通ならば、わたわたして宰相に泣きつくだろうさ。なんせ、いくら教育を受けているとはいえ、政治は素人なんだから。でも、王子様は完璧にこなしてしまった。そこで宰相は次の手を打った」
「なるほど。構造としては簡単なんだな。宰相が全権を手に入れたい。そのためにあれこれやってる」
「そういうこと」
アンドレはにこっと笑い、でも、ここからがポイントと指を立てる。
「レオナールが完璧に政治を出来たことも不思議だけど、ここまで生き残れたのも不思議だ。そして反射神経は単に訓練していただけとは思えない速さ。狩猟能力も完璧。ここまでくるとはっきりするのは」
「レオも異能者だってことか」
「そう。だからレオナールには異能者の扱いが隠されていたんだと思う。異能の存在を知ることで覚醒しちゃう人、いるからね」
「ははあ」
それで宰相の企みは悉く頓挫しているのかとシモンは頷いた。しかし、王族が異能者だと。これは納得出来ないことだ。
「いや、この国は他の国に比べて異能者に寛大だろ。それって、たぶん、どこかで異能者の血が混じったからじゃないかな。他の国から怪しまれないように、異能者の身分を一段下にしているけど、殺されることはまずないだろ。どうしてそんな措置なのかといえば、どこかの時点で王族と異能者が交わり、王族の中にも異能を発揮する人がいるからじゃないかな」
「なっ」
それはとんでもない秘密じゃないかとシモンは驚く。だが、そう考えると、王子様の意外なタフさも納得できる。
「レオナールは色んな秘密を抱えているんだよ。本人が知らないうちにね」
アンドレはだからこっちに残ったんだよと、楽しそうに笑うのだった。
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