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第7話 異能力者の扱い

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 シモンは今年で三十五歳だというが、十九歳の時に自分が人と違う力を持っていると知り、それ以来、山で生活しているという。
 山に逃げた理由はもちろん、化け物扱いされたからだという。そこから逃れ逃れ、今の村に辿り着いたのは五年前のことだった。これは城館を直している時にシモンが語ったことだ。
「一先ずここに仕掛けを一つ作っておこう。他にもいくつか仕掛けないと獲物は捕れないからな」
 シモンは慣れた手つきで仕掛けを作りつつ、そう俺に説明する。
「なあ、ここって弓矢はないのか?」
 しかし、仕掛けを仕掛けて待つだけというのは心許ない気がして、俺は弓矢があればなと腕を組む。
「なんだよ、レオ。生意気にも弓矢が使えるのか?」
 ピーターがすぐに突っかかってくる。
 こいつ、俺のことを同い年だと思っていないか。童顔だとは思うが、十七に間違えられるのは心外だ。
「そうか。王太子だったんなら、狩猟は嗜みとしてやっていたってわけか」
 俺がむっとするのに苦笑しつつ、シモンは弓矢の扱いに慣れているんだなと確認してくる。
「そう。最近では猟銃も精度が上がってよく使われるけど、俺は弓矢の方が好きなんだよね」
 銃だと手応えがないからなあと、俺は肩を竦める。
「一丁前に。じゃあ、やってみろよ」
 ピーターはどこまでも舐めた口を利いてくれる。
 俺は弓矢があればねと言うと
「作ってやるよ」
 ピータはその辺にあった枝を掴むと
「弓矢に変われ!」
 そう命じた。すると、ぱっと光って弓矢が現われる。
「すげえ」
 なるほど、これが魔法使いの技か。俺は感心してしまったが、シモンはすかさずピーターの頭上にげんこつを落とした。
「痛っ」
「そうやってすぐに魔法を使うなって、マリナに言われてるだろ。火炙りにされたいのか」
 シモンの注意に、ピーターは口を尖らせる。
「火炙り?」
 だが、俺はよく解らなくて、どういうことだと訊き返す。
「ああ。ハッブル王国ではやってないけど、この山の向こう、ミッドランド連邦国では魔女は火炙りの刑に処すってのが刑法で決まってるんだよ」
 シモンはあっちと山を指差しながら教えてくれた。
 ミッドランド連邦国とハッブル王国は戦争になったことはないが、互いに領土が接するドロイヤ王国との戦争の時に不可侵条約を結んだことがある。そんな場所が、魔女や魔法使いを火炙りにしているというのは驚きだった。
「珍しくねえぜ。ハッブル王国が一番、俺たちのような異能力者には優しいところだよ。とはいえ、刑罰を加えられないってだけで、弾圧はされるけどな。流浪の民になることは運命づけられているんだよ」
 邪魔なんだよなと、シモンは肩を竦める。
「そんな」
 俺はショックを受けてしまうが、シモンはぽんぽんっと頭を撫でてくるだけだ。
「それが普通なんだよ。さあ、問題はあるが弓矢が手に入ったんだ。しっかり狩りに励んでくれ」
 シモンが何も説明しなかったことで、俺が思っている以上に差別されていることを知ってしまった。しかし、俺だって居場所を奪われたのだ。この世界はいつどこで理不尽が起こるか解らない。
「俺も隠れて生きていくしかないもんな」
 レオナール=ハッブルと名乗りを上げれば殺されるだろう。その点、シモンやピーターと自分は変わらないのだ。
「しんみりしてんじゃねえよ。野ウサギとキジ、よろしく」
 ピーターは責任を感じたのか、そんなことを言いながら俺の背中を思い切り叩いてくれた。
「いてっ」
「深刻な顔、似合わねえよな。へらへら笑ってれば」
「んだと」
 ぎゃあぎゃあ言いながらも、俺は少し、この村の人たちとの仲間意識が強くなったのだった。
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